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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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授与式と記者会見 1

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

総理官邸――4階、特別応接室。


「こちらに目線をください! お願いします!」


「総理、もう少しサクさんに寄ってください!」


室内を埋め尽くす報道陣から、絶え間なくフラッシュの光が放たれる。


パシャパシャという乾いたシャッター音が、静かな応接室に鳴り響いていた。


俺は今、1枚の重みのある証明書を手に、絹川総理の隣でカメラの放列の前に立っている。


正直に言って、こういう風に注目を浴びて撮られるというのは、いつまで経っても苦手だ。


大阪でのあのインタビューは、戦闘後で気合が入りすぎていたせいか周りの目なんて全く気にならなかったけれど、今日は違う。


戦闘もなければ、殺気もない。


ただただ祝われ、レンズを向けられるだけの1日だ。


その静かな圧力が、逆に俺の肩を強張らせていた。


手渡されたのは、額装されたA4サイズの立派な証明書と、常に携帯できるよう配慮されたカードサイズの証明書。


『特別重要協力者及び特殊技能保持者』。


そして配下たちの『公認眷属個体』。


その重々しい肩書きが記されたそれは、俺だけでなく、グリムやノア子の配下たちに対しても、公認の証明書として発行されたものだ。


これで名実ともに、俺たちはこの国において『公認の存在』となったわけだ。


「サクくん、もっと笑ったほうがいいぞ! せっかくの晴れ舞台なんだからな」


正面を見据えたまま、絹川総理が楽しげに話しかけてきた。


「……あはは、わかっているんですけど、どうしても顔が引き攣っちゃうんですよね」


「おかしいな。大阪の会見のときは、もっと逞しく、堂々とした顔をしていたぞ?」


総理の冗談めかした言葉に、俺は苦笑いを返した。


「あのときは、ちょっとムカつくやつがいたんで、感情が表に出ちゃったんですかね。……これでも、元ニンゲンなもんで」


その答えに、総理がこちらを見ながら、「ガハハ!」と声を上げて笑い、俺もつられて吹き出した。


後日、各メディアで使われた写真の多くは、この瞬間のものだった。


気取ったポーズよりも、総理と向き合って大笑いしている俺の顔の方が、ずっと自然で、いい笑顔をしていたからだ。





官邸1階――記者会見室。


式の後、俺は総理にある『わがまま』をお願いしていた。


これから始まる公式会見には、絹川総理、冒険者協会会長である師匠、そして俺の3名が出席することになっている。


会見室の重厚な扉が開く。


先頭を歩くのは絹川総理、その後ろに師匠。そして俺。


さらにその背後に、漆黒のローブを纏い、威厳を放つグリム、巨躯を揺らすゴウキ、そして幻想的な美しさを湛えたノア子が続いた。


事前の打ち合わせになかった眷属たちの登場に、記者席からは「おお……」という地鳴りのような驚きの声が上がり、それに比例するようにフラッシュの嵐が一段と激しさを増した。


会見の冒頭では、総理が俺たち『フロントライン』に対する今後の期待や、国としての展望を語った。


師匠に対しては、俺との師弟関係が既に周知の事実となっていたこともあり、過去の修行時代のエピソードや、協会としての今後の対策、特に大阪のスタンピード事件を受けた新しい制度についての質問が集中していた。


スタンピードそのものを完全に防ぐ手立てなんて、今のニンゲンの技術では存在しない。


それでも師匠は、通報時の連係強化や、実力のある冒険者に緊急案件を優先的に依頼する『特別冒険者制度』の検討を発表し、冷静に記者たちを納得させていた。


さすがは百戦錬磨の会長だ。


そして、ついに俺たちの番が回ってくる。


「サクさん、本日はおめでとうございます。こうして皆様を間近で拝見しておりますが、言葉では言い表せないほどの神々しさと、威光のようなものが肌に伝わってきます。皆様、本当に逞しく、そして美しい。……差し支えなければ、皆様のレベルは現在、どのくらいに達しているのでしょうか」


1人の記者が、畏敬の念を込めた表情で問いかけてきた。


威光、か。


正直なところ、今は魔力を1%たりとも外に漏らしていない。


神としての存在感が、意図せずとも周囲に影響を与えてしまっているのだろうか。


まあいい、今日は最高の気分だ。正直に答えてあげよう。


「ありがとうございます。自慢の仲間たちが褒められるのは、自分のこと以上に嬉しいですよ。……でも、これでも今は魔力を1%も込めていない状態なんです。それで神々しさなんて、出ているんでしょうか。……あ、レベルですね。俺が102、ここにいる配下たちは全員が100に到達しています」


レベル100越えという、人類が到達不可能な数字に、会場がしんと静まり返った。


「……ありがとうございます。いつかまた別の機会に、魔力を解放された真の姿を拝見できることを願っております。以上です」


記者は満足げに頷いた。俺はサービス精神を出して、つい軽口を叩いてしまう。


「え、今ここで出しましょうか? 少しだけならいいですよ?」


「――バカ弟子! ここをどこだと思っているんだ。総理もいらっしゃるんだぞ!」


即座に師匠から鋭いツッコミが飛んできた。


「……あいたっ、怒られちゃいました! 見ての通り、神になっても師匠には頭が上がらないんですよ!」


俺がおどけて頭を掻くと、それまで緊張感に包まれていたメディア席から、ドッと温かい笑いが沸き起こった。


その和やかな空気の中、次の記者が立ち上がる。


「おめでとうございます。サクさん、正式に活動が認められた今、外に出られたらまず最初に何がしたいですか?」


「そうですね……。これまでずっと暗いダンジョンの中にこもっていましたから。まずは陽の光をたっぷり浴びながら、近所の公園でぼうっとしたいですね」


「……公園、ですか? 意外と庶民的なのですね」


「いいじゃないですか、公園。見てくださいよ、ずっと地下にいたせいか、日焼けもしていないこの真っ白い肌を! ……まあ、これは種族的な問題なんですけどね!!」


ドヤ顔で言い放った渾身の『神様ジョーク』。


ククク……。


ガハハハッ!!


だが、そのジョークに声を上げて笑っているのは、壇上の総理と師匠の2人だけだった。


記者たちは困惑したように顔を見合わせている。


……おたおたするなよ、ここは笑うところだろう。


このセンスがわからないなんて、これだからニンゲンは。


「あ……ありがとうございます。……以上です」


記者が微妙な表情で席に着く。


完全に滑っているじゃないか。


悔しい。


そんな俺の内心の動揺を余所に、次の女性リポーターが意地悪そうな笑みを浮かべてマイクを握った。


「サクさん、皆様、本当におめでとうございます。……さて、サクさんには現在、紗奈さんという公私ともに支え合っているパートナーがいらっしゃいます。さらに、元メンバーの水瀬綾香さん、そしてそのお姉様でありレガリア所属の水瀬舞香さんとも、非常に親しくされていると伺っております」


おいおい、なんだその導入は。


嫌な予感しかしない。


「神様に対して適切かどうかはわかりませんが、こうして人権に準ずる地位を授与された今……将来的に、ご結婚などはお考えなのでしょうか?」


ニコニコと、けれど好奇心の牙を隠さない質問。


隣を見ると、師匠がニヤニヤと意地の悪い顔で俺を見ている。


後ろのグリムとゴウキに至っては、肩を震わせて必死に笑いを堪えていやがる。


この野郎ども。


「……どうなんでしょうね。結婚となると、それはまた別の法律や制度の話になってくると思いますから。俺の一存では決められません。そこは、総理に確認させていただかないと」


俺は困り果てて、隣の総理に助けを求めた。


リポーターが逃さず食いつく。


「総理、いかがでしょうか! 神様の結婚は認められるのですか?」


「できますよ。大いに結構! むしろめでたい話じゃないか。……まあ、今の法律では重婚はできないけれどね、ガハハ!」


総理の豪快すぎる太鼓判に、会見場はパシャパシャと今日1番の盛り上がりを見せた。


「…………ということですので。いずれ、そういうこともあるかもしれませんね」


俺は感情を一切排除した完璧な棒読みで答え、手元の資料に目を落とした。


俺のそんな様子が、世界中にリアルタイムで生中継されているとも知らずに。


会見は続き、更に質問は続いた。


ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
借りにも神なのに法律に縛られて重婚出来ないのはちょっとあれな気がする、いくら元人間っていってもいま神じゃん?
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