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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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インタビュー 2

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

「……協会から緊急の要請を受けた時、サクさんは一体どう思われましたか? 世間一般からすれば、モンスターであるあなたという存在が公の場に出ることについて、人々が恐怖を抱くとは思わなかったのですか?」


向けられたマイク。


光るレンズ。


その質問の裏側に透けて見えるのは、俺という個人の意志よりも、俺を動かした協会や政府の判断を糾弾し、責任の所在を追及しようとする薄汚い思惑だった。


なるほどな。俺を『危険な猛獣』として定義し、それを解き放った者を叩きたいというわけだ。


「ええと……。そもそも、俺が自分から協会に事態を報告しているんです。だから、要請を受けて救助に向かうのは当然の判断だと思いましたよ。何より、ニンゲンの脆い身体では、あの厄災には逆立ちしたって敵いませんからね。……外で安全圏から事態を眺めているニンゲンの顔色を伺うより、ダンジョンの中で今まさに死の淵に立たされている冒険者の命を優先するのは、俺にとっては当たり前の選択でした。だから、世間がどう思うかなんて、一ミリも気にしていませんでしたよ」


俺の淡々とした、けれど拒絶を含んだ回答に、記者は僅かに顔を顰めた。


だが、追及の手を緩める様子はない。


「ですが、SNSの『Current』などでは、モンスターを街に出すなという強い拒絶反応や、もしも暴れ回ったら国や協会はどう責任を取ってくれるんだという、切実な不安の声も多数上がっています。これについては、当事者としていかがお考えですか?」


「……。なら、放置しておけばよかったですかね」


わざとらしく溜息をつき、皮肉たっぷりに言葉を重ねる。


「自分のチャンネルでも何度も話していますが、俺はこれでも元ニンゲンなんです。だから情に流されて、少しばかり出過ぎた真似をしてしまいました。……安心してください。次からは何が起きても助けませんよ。たとえ誰に、どんなに泣きつかれて頼まれたとしてもね」


「そ、そういうことを申し上げているのではなくて……! 国や協会の、組織としての判断についてどう思うかと……」


「何が言いたいんですか? 俺という存在を使ってでも、一人でも多くの人命を救おうとしたのは、組織として極めて立派で、勇気ある判断だったと思いますけど。……これに文句を垂れているニンゲンは、助けられた冒険者たちに向かって、そのままダンジョンで死んでおけと言いたいんですかね。……いいですか。そもそも、もし今回のスタンピードや厄災が、上層まで突き抜けて地上に溢れ出していたら、今頃この大阪は血の海に変わっていましたよ。この連休初日の賑わいは、一瞬で地獄の風景に書き換えられていたはずだ」


俺の放つ僅かな威圧に、周囲の空気が急速に冷え込んでいく。


「厄災に対抗できるニンゲンなんて、この世界には一人もいない。日本全体が、あの『怪物』一匹に蹂絶されて終わっていたかもしれない。……それすらも、モンスターの助けを借りるくらいなら放置しろと言うんですか。……そうですか。……分かりました」


俺はわざとらしく、力なく視線を落として見せた。


「……貴重なご意見、本当にありがとうございました。今後の活動の、大変良い参考になりましたよ」


最後は、これ以上ないほどにこやかな、けれど一切の温度を感じさせない笑みをその記者に刻みつけた。


これで、この記者が所属するメディアには、凄まじいバッシングが飛ぶことになるだろう。


救われた冒険者やその家族、そして「もし自分が被害者だったら」と想像できる良識ある視聴者たちが、黙っているはずがない。


「…………。……以上です」


記者は真っ青な顔をして、逃げるように後方へと下がっていった。





そこからは、俺の公式チャンネルの内容や、具体的な救助の経緯についてなど、多種多様な質問が飛び交った。


予測していた時間より長引いている。


俺は周囲を見渡し、静かに告げた。


「……もう、そろそろいいですか。次の方を、最後の一人にさせてください」


一斉に挙がる手。その中から、一人の女性記者を指名した。


彼女は居住まいを正し、張り詰めた空気の中で核心に触れる問いを発した。


「……はい。……救助された冒険者の方々から、実際に『蘇生』をしてもらったという証言を複数得ております。……これに、間違いはありませんか?」


その瞬間、空気が張り詰めた。


メディアの連中が、そしてこの放送を見ている世界中の人々が、最も喉から手が出るほど欲しがっていた『神の奇跡』の真偽。


「……はい。間違いありません」


おおお、と、どよめきが地鳴りのように広がっていく。


「それは、サクさんのお仲間であるノアさんが使われるスキルだと伺っております。……その、まさに神の御業とも思えるような蘇生スキルですが、今後もこうした人道的救助活動において、積極的に使用されるおつもりはありますか?」


俺はここで、先ほどの記者とのやり取りを逆手に取り、チクチクと嫌味を混ぜ込むことにした。


神になったとはいえ、中身はまだ、少しばかり執念深い元ニンゲンなのだ。


「……先ほどの記者さんから、俺のような存在が表に出ることへの強い苦言をいただいたばかりですからね。……今後については、正直なところ、全くの白紙です」


メディアの視線が、一斉に先ほどの青ざめた記者へと突き刺さる。


……いや、お前らも内心では似たようなことを考えていただろうが。


もちろん、中には純粋に、熱心に話を聞いてくれる良いニンゲンの姿もあった。


「……それでも、サクさんが掲げている『人類に寄り添い、笑顔にしたい』という行動目標、そのお気持ちは、今も変わりませんか? ……実は私も、サクラーの一人なんです」


女性記者が、真っ直ぐな瞳でそう問いかけてきた。


ありがたいことだ。


その一言だけで、少しだけ尖っていた心が少し解けるのを感じる。


「ご視聴、ありがとうございます。……ええ、その気持ちに嘘はありません。元ニンゲンとして、この身体になってしまったからこそ、できる限りのことはしていきたい。モンスターとニンゲンが共存し、笑い合える未来が来ることを、俺は今でも信じています」


「ありがとうござい……」


「――その巨大な力を、もっと病気で苦しんでいる方や、大切な人を亡くして悲しみに暮れている方のために使おうとは、思わないのですか!?」


温かい空気を切り裂くように、後方から無遠慮な怒号が飛んできた。


他の記者がまだ発言している最中に割り込むという、礼儀も節操もない、あまりに失礼な振る舞い。


「あなた。お話を、今度じっくりとしたいので、今度池袋まで来てください。……『Current』のダイレクトメッセージを送ってもらえれば、個別に対応しますよ。……申し訳ありませんが、もう一度、社名とお名前を教えていただけますか?」


「……『トゥルーライン通信』の北川と申しますっ!」


「分かりました。北川さんですね。……しっかりと伝えておきます。……では俺は、あのあまりにも失礼な記者さんを最後の相手にするので。また後日、ゆっくりとお話ししましょう」


俺はそう告げると、横入りした記者を正面へと呼び寄せた。


最後の一人だと言ったが、予定変更だ。


この男の質問を、この会見の終着点にしてやる。


「……最後と言いましたが、いいですよ。あなたの質問に、責任を持ってお答えしましょう」


今までの丁寧な物腰を捨て、俺は冷えた眼差しで彼を射抜いた。


「さ、先ほどの質問に、答えていただけませんか……?」


「答えは、明確に『ノー』だ」


「……っ、それは何故ですか!? 今この瞬間も、困っている人は世界中に沢山いるんですよ! それを一瞬で解決できる力があるのに、何故、それを使おうとしないんですか!?」


早口でまくし立てる男。


……舐められたものだ。


俺たちが、都合の良い奇跡の切り売り屋だとでも思っているのか。


「……これは以前、ある人にも話したことですが。……あなたは神社や寺、あるいは教会に行って、亡くなった大切な人を生き返らせてくださいと願えば、その願いが叶い、死者が帰ってくるとでも思っているんですか?」


「そ、そういう話ではありません! 現実に、あなたはそれをやってのけたじゃないですか! あなたは『神』なんでしょう!?」


「……俺ではなく、仲間であるノア子が、だ。……いいか。回復ならまだしも、『蘇生』という行為には、スキル使用者に凄まじい負担がかかるんだ。……ただ一人を呼び戻すだけでも命懸けだというのに、ノア子は今日、一気に9名もの命を救った。……その意味が、あなたに分かるか?」


語気を強めた俺の圧力に、記者は言葉を失い、一歩後退りした。


「今、ノア子は俺の影の中で深く眠っているよ。……自分では指一本動かせないほどの、壮絶な負担と苦痛を背負ってまで、彼女は赤の他人である冒険者の命を取り戻したんだ。……あなたは、そんな過酷で残酷な代償を、俺の仲間に、見ず知らずのニンゲンのために払い続けろと言いたいのか?」


「……俺の仲間を、一体何だと思っている。……お前たちの都合で使い潰していい、便利な道具じゃないんだよ。……それとな。俺たちの力が戦争の道具になるだの、人を殺すためのものだのと言っている連中もいるようだが、俺が何のために、誰のために、こんなことをしているのか、一度その貧相な頭で考えてから物を言え」


「も、申し……訳……ありません……」


「俺がもしニンゲンを殺すつもりなら、誰にも告げずにダンジョンを出て、今頃この国を更地にしているさ。……要請を受けなければ外には出ない。……何のために協会に協力し、何のために見ず知らずの命を助け、何のために俺が配信をして、交流を続けているのか。……まずは、それをよく考えてから、もう一度俺の前に立て。神に逆らう覚悟でな。……以上だ」


俺は言い終えると同時に、全身の魔力を一瞬だけ解放した。


直後、『影移動シャドウステップ』を発動し、目も眩むような無数のフラッシュを浴びせ続けていたメディアの前から、音もなく姿を消した。


残されたのは、圧倒的な神の威厳に気圧され、一瞬だけ解放された魔力に声も出せずに呆然とした記者たち。


俺へのインタビュー映像は、リアルタイムで世界中に同時生中継され、メディア各社は「英雄」「神の怒り」や「奇跡の代償」について、速報体制で報じ始めた。

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よろしくお願いいたします。

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