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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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本拠と買い物

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

池袋ダンジョン――24層、ボスフロア。


明日は、クマガイフーズさんのプロモーション用動画の撮影と、生配信を予定している。


そして明後日には、冒険者協会会長をはじめとするニンゲンとの、極秘会談が控えている。


俺たちはこの激動のスケジュールを前に、戦力の底上げを急いでいた。


獲得した魔石を惜しみなく注ぎ込んだ結果、現在、俺、グリム、ゴウキ、そしてノア子のメインメンバー全員がレベル74に到達している。


「さて、こいつをサクッとぶっ飛ばして、景気よく『魔石パーティー』といこうか」


俺は目の前に広がる、円形に囲まれた巨大なドーム型のフロアを見渡した。


そこには、この24層の主である地殻竜グランドバルガスが鎮座していた。


体長は約20メートル。


もはや生物というよりは、一つの小さな山がそこに転がっているようにしか見えない。


そんな巨躯を持つ龍が、今は無防備に、地響きのような寝息を立てながらスヤスヤと眠っている。


さて、相手が寝ているうちに、こちらも全力の布陣を展開させてもらおう。


俺はテキパキと指示を飛ばし、配下たちを配置につかせた。


グリムがスキルを発動し、配下のアンデッドたちを強化する。


最前線には、三英傑であるノブナガ、イエヤス、ヒデヨシ。


そしてスキル『アビスゲート』によって深淵から呼び出されたグレイブウォーカー15体。


その後ろに要としてゴウキがどっしりと陣取る。


ゴウキの背後、全体の指揮を執る位置に俺。


後衛には、グリムと、遠距離火力を担うボーンキャスター5体、さらに正確性はないが、威力と数による強力な射撃を行うボーンスリンガー15体を扇状に配置。


そして最後方に、癒しの要であるノア子と、彼女を守るブラッドメイデンの三少女。


合計45体による、対ボス用完全包囲網が完了した。


グリムのアビスゲートから召喚される兵士たちは数は多いが、一体一体の耐久力はさほど高くない。


それでも、これだけの数がいれば手数としては十分すぎるし、何より、地殻竜の注意を逸らすための優秀なデコイとしての役割も果たしてくれる。


正直なところ、この巨大な龍を前にしても、今の俺のステータスは相手を上回っている。


だが、今回は今後の大規模戦闘を見据え、俺自身が前線で無双するのではなく、全体の連携を強化するための司令塔兼デバフ要員として参加するつもりだ。


……まあ、この戦力差なら、おそらく一瞬で終わってしまうだろうけど。


「よし、準備はいいな。……行くよ。遠距離隊、攻撃およびデバフ用意!近接隊、着弾と同時に一気に詰めろ……放て!!」


俺の鋭い掛け声と共に、背後から無数の攻撃が放たれた。


グリムによって強化された闇属性の魔弾が空を切り、同時に速度低下と耐久低下を引き起こす呪いのデバフが龍へと殺到する。


ノア子隊からも、逃走を封じる『ブラッドバインド』と、鋭利な『ダークスピア』が勢いよく撃ち出された。


ドォォォオンッ!!ドォォォオンッ!!!


凄まじい衝撃波と共に、すべての攻撃が地殻竜の巨躯へと着弾する。


「グオォォォオオッ!!!」


あまりの激痛に、龍が大地を揺らしながら跳ね上がろうとした。


だが、その四肢にはノア子の放った血の鎖が幾重にも巻き付いており、地面へと強引に縫い留められる。


「前衛ッ!かかれッ!!」


ゴウキを筆頭に、三英傑が大太刀や槍を振るい、無防備な龍の腹部を容赦なく斬りつける。


「俺もいくよ。……『幻惑』、そして『ナイトメア』」


俺がスキルを発動させると、巨大な龍の全身が、まるで黒い絵具をぶちまけたかのようにドロリとした闇の靄に包まれた。


よし、付与された状態異常は『恐慌』か。


さらに『ナイトメア』の効果が重なり、対象には精神への直接ダメージと、底知れない恐怖が刻み込まれる。


あれほど暴れていた龍が、今はただガタガタと巨体を震わせ、拘束から逃れようと暴れていた動きを完全に止めていた。


この、ステータス画面には数値として現れない『精神ダメージ』。


これまでの実戦検証で分かってきたことだが、このスキルを食らった相手は、時間の経過と共に思考が恐怖により停止し、最終的には戦意を喪失して「ただ死を待つだけの置物」へと変わってしまう。


悪夢を見ている間、相手は無限の恐怖に晒され、精神を極限まで削り取られるのだ。


もちろん、個体によっては耐性が高く、時間がかかったり効果が解けたりすることもある。


だが、そこに『幻惑』による恐慌状態を重ねることで、精神崩壊の速度を劇的に跳ね上げることができるのだ。


ちなみに、『幻惑』によって付与される状態異常は、魅了、洗脳、混乱、恐慌の中からランダムで選ばれる。


混乱についてはまだ検証不足だが、今回は最も欲しかった恐慌を引き当てることができた。


ノア子の拘束、ゴウキたちの猛攻、グリムたちの遠距離攻撃、そして俺の精神破壊。


謂わば、完璧な「ハメ技」の完成だ。


これ、もし俺が同じ目に遭ったらと思うと、流石にゾッとするな。


「今のうちだよ。一気に終わらせよう!」


俺の号令に、仲間たちの攻撃速度がさらに加速する。


岩盤のように硬かったはずの鱗がボロボロと剥がれ落ち、誇り高き地殻竜は見るも無惨な姿へと成り果てていく。


それでも流石にボスクラス、異常な耐久力でしぶとく生命の灯を繋いでいるが、それも時間の問題だ。


「アナライズ」

HP:120/820


「よし、もうほとんど体力は残ってない。動き出す前に決めちゃおう!!」


自分で手を出したくてウズウズしているが、ここは我慢だ。


部下たちに経験をさせ、連携を深めさせることこそが、今の俺の役割なのだから。


それから程なくして、地殻竜グランドバルガスは、満足な叫び声一つ上げることすら許されず、静かに地に伏した。


巨大な死体が光の粒子となって霧散していく。


その後に残されたのは、眩い光を放つ大魔石(赤)、そして地殻龍の鱗、地殻龍の骨といったレア素材の数々。


「ふぅ……。よし、無傷で完勝だね」


俺が攻撃に加わっていればもっと早かっただろうが、それでも十分すぎる成果だ。


これなら、俺が不在だったとしても、今のメンバーならこのレベルのボス相手に余裕で勝利を収められるだろう。


俺と眷属の間には、経験値の取得率に30%もの開きがあるけど、魔石を食わせてその差を埋めるようにする。


効率を考えるなら、ここで周回がベストかもしれない。


ただ、一つだけ懸念事項がある。


ノア子を新たに眷属に加えたことで、俺のMP最大値が制限され、現在は120も減少しているのだ。


本来ならば409あるはずのMPが、今は289。


もちろん、ノア子という強力なヒーラーを得たことや、俺のステータス上昇というメリットの方が遥かに大きいのは分かっているけれど、最大値が削られるのは戦術的な幅を狭めることにも繋がる。


MP回復ポーションのストックは潤沢にあるけれど、これからは今まで以上にリソース管理をシビアに考えながら戦わないといけないな。





19層――隠しフロア。


現在、俺たちはこのフロアで、信じられないほどリラックスしていた。


そう、文字通り「めちゃくちゃに」くつろいでいたのだ。


約20年もの間、この場所に一人で縛り付けられていたノア子には少し申し訳ない気もするけれど、それだけの年月、誰にも発見されなかったということは、ここが「絶対に安全な場所」であることの裏返しでもある。


スペースも驚くほど広々としている。


配下の全召喚体を出したとしても、まだ余裕で走り回れるほどの広さがあるのだ。


ということで、俺たちはここをただの「住処」ではなく、俺たちのパーティの正式な「本拠地」――ホームと定めることにした。


だが、そんな夢の我が家にも、二つだけ不満点がある。


一つは、ここが19層という、冒険者から見ればかなりの下層に位置していることだ。


今後、配信コラボや、知り合いをここに招こうと思っても、俺が上の階層まで迎えに行くか、相手に自力でここまで来てもらうしかない。


迎えに行くにしても、階層を跨ぐ移動はMPの消費が激しい。


片道で半分、帰りで残りの半分をごっそり持っていかれる。


MP回復ポーションを飲めば解決する問題ではあるが、一本飲んだ程度で全快するわけではない。


それなりにコストもかかるし、緊急時の備えを考えると、そう頻繁には客を招けないのが現状だ。


ポーションの補充は現状ネット注文に頼り切りだし、届くまでに1〜2日はかかるしね。


そして二つ目。


これが地味に効いている。


そのネット注文した品物を運んでくれる配達ドローンが、この「隠しフロア」まで直接届かないということだ。


……まあ、文字通り『隠し』場所なんだから、仕方がないと言えば仕方がない。


けれど、いくら立派に成長したつもりでも、俺の根本にあるのは「駄インプ根性」の塊なのだ。


天井の巨大な鍾乳石の裏にある隠しフロアから、わざわざ通路まで降りていき、ドローンが到着するのを待たなければならない。


ぶっちゃけて言おう。


……面倒くさい。


一歩も動きたくないのだ。


…………。


とは言っても、そそくさと取りに行くことになるんだけどね。





時は少し遡って、二日前のこと。


俺たちは本拠地にて、一台のデバイスを眺めていた。


先日、1層でニンゲンの女性冒険者からノア子がお菓子を貰った時、「今度、みんなで欲しいものを探そう」と約束していた、ネット注文タイムだ。


ノア子はまだ配達ドローンという存在を実際に見たことがなく、「見たい、見たい」と珍しく興味を示していた。


子供のしたいことを叶えてやるのが、親としての務めというものだ。


モンスター年齢は向こうの方が上なんだけどね。


いつもは、俺が適当に見繕うか、グリムやゴウキに欲しいものを聞いてから注文していたけれど、今日は画面をみんなに見せて、それがどういう物なのかを説明しながらカートに入れていくことにした。


グリムが希望したのは、戦国時代を題材にした歴史書数冊と、本格的な将棋セットと将棋の本だった。


どうやら配下たちに三英傑の名前を付けた辺りから、本格的に日本の戦国文化にハマってしまったらしい。


将棋については、「これは何だ?」と聞かれたので、「この国に古くから伝わる知略のゲームだよ」と簡単にルールを説明したところ、挑戦することに決めたようだ。


対局相手は俺か、三英傑、あるいは三少女にやらせるつもりらしい。


ゴウキのリクエストは、ポータブルブルーレイプレイヤーと、お笑い番組のブルーレイ、それと魔石対応のバッテリーだった。


先日、ケンちゃんとのやり取りの中で「ツッコミ」の概念を知ってしまった彼は、本物の芸人のツッコミというものを見たいと言い出したのだ。


デバイスは俺が管理しているから、勝手にQtubeを見せるわけにもいかないし、これは名案かもしれない。


魔石対応バッテリーというのは、ダンジョン資源である魔石をセットするだけで電力を取り出せる、超小型発電機だ。


これさえあれば、コンセントのないダンジョンの奥深くでも、電子機器の電力問題はすべて解消される。


魔石や素材が現代社会のあらゆるインフラに活用されているのを目の当たりにすると、この世界のニンゲンたちがどれほどダンジョン資源に依存しているかがよく分かるよね。


ノア子の希望は、特大のビーズソファー4つと、大きなクマのぬいぐるみ、そして大量のお菓子だった。


なぜビーズソファーを4つも?と思ったら、ノア子たちはちゃんと「睡眠」を必要とするからだ。


それ程睡眠をとるわけではなく、1〜2日起きて、少し休むという感じだ。


眷属になってからは、寝る時は俺の影の中で休んでもらっている。


起きたい時は何らかのサインを出してもらい、俺が影から出すという形だった。


モンスターなのでそこまで長時間の睡眠は必要ないが、ビーズソファーの「人をダメにする」という説明を聞いた途端、「これで寝てみたい」と目を輝かせていた。三少女の分も合わせて、みんなで並んで寝るつもりらしい。


クマのぬいぐるみについては、何も言わなかったけれど、たぶん抱っこして寝るんだろうな。


……可愛いおこちゃまめ。


お菓子の説明については、もはや不要だろう。


最後に、三英傑も含めた全員の希望として、ニンゲンの食べ物と飲み物を大量に追加した。


さらには本拠地を彩るためのちょっとしたインテリアグッズと、これからの探索に欠かせない消耗品をリストに加え、俺は一気に「購入」ボタンをポチッと押し込んだ。


数日後、この静かな隠しフロアに、新しい荷物と、賑やかな笑い声が溢れることになるのを想像して、俺はウキウキとした気持ちになった。


ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
その気になればデバイスの位置情報から現在地たどれるだろうけど、良心的なのね
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