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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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インタビューとケンちゃん

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

池袋ダンジョン――1層。


前回の配信で視聴者から「モンスターが普段何を考えているのかインタビューしてほしい」というリクエストを受け、俺たちは今日、上の階層まで戻ってきていた。


これは一つ一つの対話に時間がかかるし、相手の反応も読めない。


だから生配信ではなく、後でじっくり編集して公開するための動画配信として撮影することにしたんだ。


さて、今回の撮影にはもう一つの大きな目的があった。


それは、目標としていた仲間の「進化」のお披露目だ。


■名前:ゴウキ 種族:鬼将 レベル:60

HP:540/540

MP:221/221

筋力:S(341+34)

耐久:A(288+28)

敏捷:D(143+14)

器用:D(159+15)

魔力:D(163+16)

運 :E(108+10)

スキル:豪打、踏み込み、気合い、連撃、闘気纏い、見切り、鬼砕き、戦鬼解放、烈震脚、武の極み、鬼気解放


「鬼将」へと進化したゴウキは、身体の大きさこそ以前とさほど変わらないが、その肉体の逞しさは格段に増していた。


左右に突き出した二本の角はより立派に、鋭く天を突き、その身には重厚な黒鉄の鎧と巨大な大太刀が備わっている。


何より、立ち止まっているだけで周囲の空気が重く沈み込むような、凄まじい威圧感を放っていた。


そして、最も劇的な変化を遂げたのがグリムだ。


■名前:グリム 種族:シャドウネクロマンサー レベル:60

HP:489/489

MP:352/354

筋力:D(172+17)

耐久:C(227+22)

敏捷:D(156+15)

器用:B(243+24)

魔力:S(342+34)

運 :D(149+14)

スキル:ダークボルト、死霊召喚、骨槍、マナドレイン、グレイブコール、死霊強化、ダークランス、ネクロフィールド、シャドウサモン、ソウルストック、アビスゲート


魔力値がついに「S」まで成長し、新スキル『アビスゲート』を習得した。


これはアンデッドモンスターを一度に大量に召喚し、使役するという強力なものだ。


個々の個体はそれほど強くはないが、戦場を埋め尽くすほどの「数の暴力」は凄まじい脅威になるだろう。


さらに、グリム自身の進化に呼応するように、彼が従える三英傑とカースドリッチたちもまた、新たな姿へと変貌を遂げた。


デュラハンのノブナガは『影武将』。


デスナイトのイエヤスは『怨鎧武者』。


スケルトンジェネラルのヒデヨシは『軍略骸将』。


特異個体モンスター……。


以前、グリムが「三英傑についてもっと詳しく知りたい」と言い出したので、俺がデバイスを貸して日本の歴史を教えていたんだ。


彼はその知識に深く感銘を受け、かなりの時間を費やして読み込んでいた。


その強い思いと知識が、進化の瞬間に姿形として現れたのかもしれない。


カースドリッチたちも『ボーンキャスター』へと進化し、遠距離魔法部隊としての火力が大幅に強化された。


そして何より、グリム本人の姿だ。


かつての禍々しい骸骨の姿はどこかへ消え去り、そこには青白い肌をした細身の青年が立っていた。


長い黒髪に、妖しく紫色の光を帯びた鋭い眼光。


黒いローブを纏い、杖を携えた魔導師スタイルは変わらないが、その立ち姿はどこか貫禄がある。


ゴウキの角さえ目に入らなければ、俺たちはもう、どこからどう見ても「人間の冒険者パーティ」にしか見えないだろう。


ちなみに、俺自身のレベルは現在65となっている。


俺はグリムにデバイスを持たせて録画を開始させ、その後ろからゴウキに賑やかしとしてついてきてもらう形で、1層の探索を進めた。


「あ、いたいた。第一モンスターを発見しました!みなさん、ゴブリンです。少し近づいてみましょう」


俺はそう言って歩み寄るが、ゴブリンは俺たちの姿を認めた瞬間、全身を強張らせて石のように固まってしまった。


俺は構わずに目の前まで行き、持っていた2リットルの空のペットボトルをマイクに見立てて、そっと突き出した。


「ゴブリンくん、ちょっと質問してもいいかな?」


ゴブリンは、俺たちの放つ隠しきれないプレッシャーに当てられ、小刻みにブルブルと震え始める。


「ねえ、聞こえてるでしょ?ん?おい、返事は?」


「は、は、は、はい……!!!」


やっと喋ってくれた。


恐怖のあまり、ゴブリンの目には涙が溢れている。


「ゴブリンくん、君はニンゲンが来たらどう思う?やってやるとか、あるいは怖いとか、何か感情はある?」


「え、あ、あの……獲物がきた、と思っています……!」


「なるほどね、あくまで獲物か。じゃあ君は、もしニンゲンと仲良くできる機会があるとしたら、そうしたいと思う?ニンゲンの作る餌は、めちゃくちゃ美味いんだぞぉ?」


「思ったことは……ありませんっ!でも、餌には、興味があります……!!」


なるほど、実に正直でよろしい。


「みなさん、聞きましたか?このゴブリンくんは、ニンゲンのことをあくまで『獲物』だと思っているんだね。仲良くしたいなんて考えたこともなかったみたいだけど、ニンゲンのご飯には強い興味があるそうだよ。……あ、だからと言って、皆さんは絶対に勝手に餌をあげたりしちゃいけませんよ!」


俺はカメラに向かって注意を促してから、ゴブリンに向き直った。


「よし、ゴブリンくん。これからも精進したまえ」


「あ、ありがとうございます……っ!」


腰を抜かさんばかりに逃げていくゴブリンを見送り、俺たちは次のポイントへと向かった。





1層――ボスフロア。



「失礼するよ!お、見えたよ。サクラーのみんな、あそこにいるのがフロアボスのゴブリンリーダーだね。俺が初めて配信したとき、すごい煽られたっていう苦い記憶があるよ」


俺たちは玉座に座るゴブリンリーダーへと真っ直ぐに進む。


中央にはリーダーが鎮座し、その周りをゴブリンたちが厳重に守っている……はずなのだが。


「…………」


誰も、一言も発さない。


あまりの静寂に、俺は思わず声を上げた。


「喋らんのかいっ!!!」


「……主よ、あの小鬼どもが可哀想だとは思わんのか。見てみろ、産まれたての小鹿のように震えているぞ」


「いや、グリム。喋ってもらわないとインタビューにならないんだよ。……おい、お前。喋ることを許可する。答えろ」


「あ、あの……い、インタビューとは……一体何でありましょうか……?」


やっと口を開いたゴブリンリーダー。


その目は、恐怖でバタフライのようにバシャバシャと泳ぎまくっている。


「質問だよ。ニンゲンが、モンスターが普段どんなことを考えているのかに興味があるんだってさ。少し時間をくれないかな?」


「は、は、はい!喜んで!」


俺はゴブリンリーダーに対し、先程のゴブリンと同じ質問をぶつけてみた。


ニンゲンをどう思っているのか、仲良くしたいか、そしてニンゲンの食文化に興味はあるか。


「我……いえ、私は、ニンゲンを倒すためにここに存在しております。どう思っているかと言われれば、目の前の敵を討つ、ということしか頭にありません」


「ふむ。これは理解できるな。存在の根源がそうなっているのだから、仕方のないことだ」


ゴウキもグリムも、納得したように深く頷く。


「仲良く、と言われましても、そのような概念を持ち合わせておりません。……ただ、先程仰っていた『餌』については、非常に興味があります」


まあ、そうなるよね。生物としての欲求には勝てないか。


俺はそこでカメラの方を向いた。


「皆さん、どうやら意思の疎通はできても、相互理解というのはなかなか難しいようだよ。モンスターには『ニンゲンは獲物である』という本能が深く植え付けられていると思っていい。でも、もしかしたら世界のどこかに、俺みたいな変わり種がいるかもしれないから、これからも根気強く探していくよ!」


俺はゴブリンリーダーに向き直った。


「インタビューへの協力、ありがとう。……ところで、ここ通っていい?それとも、一戦やっていく?」


「め、めっ、滅相もない……!どうぞ、どうぞそのままお通りくださいませ!」


「だってさ!みんな、通っていいって!じゃあ、次の層に進んでいくよ!」


俺たちは、深々と頭を下げ続けているゴブリンリーダーたちの横を悠然と通り抜け、階下へと繋がる階段を下りていった。





池袋ダンジョン――4層。


ここまで、インタビューに成功したのはコボルトリーダーと3層フロアボスのリッチのみだった。


ウルフやベアといった獣系は全く話にならなかったし、スケルトンも虚ろな顎をカタカタさせるだけで何も答えなかった。


「4層もスライムだらけだし、流石に無理だよなぁ……。あっ」


そこで俺は、フロアの奥に懐かしい人影を見つけた。


「4層到着!ということで、ここは様々な属性のスライムがいるんですよねぇ!果たして、今日は噂の『優しい魔王』さんに会えるのでしょうか!」


……ケンちゃんだ。


ケンちゃんだ!!


間違いない、あの独特の喋り方とマイク捌き。


インプだったあの頃、彼の『唐揚げ弁当』をこっそり失敬し、その後も隠れて彼の動画を観ながら配信のイロハを学んだ日々を思い出す。


「ケンちゃん!!」


「んえっ!?誰!?え……ええっ!?」


俺は喜びのあまり、ケンちゃんに向かって駆け寄っていった。


「ケンちゃんだよね!やっぱりそうだ!」


「ま、ま、まさか、魔王さん!?皆さん、見ましたか!本物ですよ!今、目の前に『優しい魔王』さんがいます!あ、あ、ごめんなさい!今、生配信中でして……!」


「いいんだ、いいんだ。ケンちゃんはそのまま自由にやってて。邪魔はしないから!」


「こ、こんな100万人超えの大手さんに、俺みたいな弱小配信者が認知されているなんて……ううっ、感激です……」


ケンちゃんが思わず涙ぐむのを見て、俺は胸が熱くなった。


「実は俺、まだレベルが凄く低かった頃にケンちゃんを見かけたことがあるんだよ。というか、謝りたいことがあって、ずっと君を探してたんだ」


俺はついに再会できた恩人(?)に、ずっと隠していた真実を白状することにした。


「ケンちゃん。昔、この池袋ダンジョンで、大事な唐揚げ弁当が忽然と姿を消したことがなかった?」


「……え、ええ。ありました。死ぬほど楽しみにしてて、絶対に鞄にしまったのに、消えてたんです。あの日は本気で泣きそうになりましたよ。それを、どうして魔王さんが……?」


「それ、盗んだの俺なんだ。ごめん」


「えぇぇぇえええ!!!マジですか!?それは悪いモンスターですよ!俺、あのお弁当を楽しみにして探索してたんですからね!」


ケンちゃんは信じられないといった様子で叫び、ふざけて俺の肩をペシッと叩いてツッコもうとした。


その瞬間。


後ろに控えていたゴウキが、それを「主への攻撃」だと瞬時に判断し、凄まじい鬼気と共に一歩前に踏み出した。


「ひ、ひぎぃっ!?」


あまりの威圧感に、ケンちゃんは腰を抜かしてその場に尻もちをついた。


「待って待って、ゴウキ!ケンちゃん、ごめんね。うちのゴウキが俺を守ろうとして、勘違いしちゃったんだ。全然、今の感じでツッコんでいいから!」


俺は平謝りしながら、ゴウキに「ツッコミ」というニンゲンの文化について速攻でレクチャーした。


「……ふん。そのような文化があるのか。ニンゲンの世界は奥が深いな。……なんでやねん。どないやねん。……これでいいか?」


ゴウキはブツブツと呪文のように呟きながら、隣にいたグリムの肩をペシペシと練習がてら叩き始めた。


グリムは「やめろ、喧しい」と嫌そうな顔をしている。


「あはは……。本気で死ぬかと思いましたよ……。で、まさかあの犯人が魔王さんだったなんて、視聴者もみんな驚いてますよ!」


「そう。それでね、いつかあのお弁当の代わりにお返しをしたいと思ってたんだ。これ、受け取って」


俺は下層階でコツコツと集めていた、ドロップ素材のストックの四分の一ほどを、シャドウインベントリから一気に取り出して床に並べた。


残りは紗奈に渡す分だけど、それでも一般の冒険者からすれば驚く量と価値だ。


「わわわっ!こんなに大量の素材、いいんですか!?これ、売ったらえらいことになりますよ!?」


「もちろんだよ!あの日のお弁当は、その後すぐにゴブリンに横取りされちゃったんだけど、それでも盗んだ事実は変わらないからね。俺の気が済まないんだ」


「では、お言葉に甘えて、遠慮なくいただきます!ありがとう、魔王さん!みなさん、見ましたか!お弁当のお返しに、こんなに豪華な素材をいただいちゃいました!」


「ケンちゃん、よかったら今度コラボしようよ!うちの『サナサクちゃんねる』と!」


ケンちゃんと一緒なら、きっと最高に楽しい配信になる。俺は確信を持ってそう提案した。


「えっ、いいんですか!?今や日本中……いや、世界が注目する大手のチャンネルさんと……うおおお、やったぁぁぁああ!!母ちゃん、俺やったよ!」


「……このニンゲンも、随分と喧しいな。ニンゲンという種族は、皆このように騒がしいものなのか?」


「ゴウキ、お前もさっきからペシペシと喧しいぞ」


これは、今から気合を入れて企画を考えないといけないな。


「あの唐揚げ、本当に美味しかったって作った人に伝えてね。準備ができたらCurrentのアカウントにDMを飛ばして。紗奈が対応してくれると思うから!」


「俺の母ちゃん、それを聞いたら喜ぶと思います……!わかりました、必ず連絡します!」


俺は配信の邪魔になってはいけないと思い、ここでケンちゃんに別れを告げることにした。


「では、本日の特別緊急ゲスト、優しい魔王ことサクさんと、お仲間の皆さんでした!本当にありがとうございました!」


ケンちゃんが完璧なタイミングで締めてくれた。


俺たちは視聴者に向けて大きく手を振り、フロアの奥へと歩き出す。


今日は、わざわざ上まで戻ってきて、本当によかった。


晴れやかな気分で、俺たちは次の目的地へと足を速めた。

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