記念配信 2
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
「では、盛り付けが完了したよ!」
俺、グリム、ゴウキの3体で、ホカホカの湯気が立ち昇る一皿ずつを画面いっぱいに映し出す。
「今日食べるのは、えーと、クマガイフーズさんのレトルトハンバーグとカレー、あとは親子丼の具だよ!それにナスの味噌汁もね!」
:うちにもあるわ!あれマジで美味いんだよな
:今すぐNexmartでポチってくるわw
:これ、クマガイフーズの命運がかかってるぞ
:現在既に60万人が観てるし、どんどん増えるぞ。100万人いっちゃえ!
「なんだ、これで食うのか?」
ゴウキが大きな手で、少し窮屈そうにスプーンを持つ。
「そうそう、これで掬って食べるんだよ。一口食べたらお互いに交換して、3種類全部食べたらどれが一番お気に入りか言い合おうか。あ、食べてる間も質問や希望を受け付けるから、どんどん書き込んでね!」
:やばい、深夜なのに腹減ってきた……
:グリムさんの食ったものはどこに消えるんだ?
:そのまま通過して下に落ちたら笑うんだけどw
「……安心しろ。取り込んだ物質はちゃんと消化できるのだ。骨の間から零れ落ちるような無様な真似はしない」
グリムが骸骨なりのドヤ顔で、流れるようなコメントをしっかり拾って答える。
:知らなかったわw
:また1つモンスター学の勉強になったわ
:え、じゃあデュラハンとかはどうやって食べるの?
「あ、忘れてた!ノブナガたちもあげるからこっちに来て!」
俺は後ろに待機していたグリムの配下たちを呼ぶ。
「俺らが一口ずつ食べたら、みんなにも回すからね!」
:ノブナガw
:誰だよwww
:デュラハンにノブナガとは……
:頭蓋骨を盃にした男の名を首無しに名付けるセンス、嫌いじゃないw
「デュラハンのノブナガ、デスナイトのイエヤス、スケルトンジェネラルのヒデヨシだよ。カースドリッチたちはまだ名前はないけどね!」
:ネーミングセンス……
:草しか生えない
:太閤骸骨やんけ……
:イエヤスがまだマシに思えてきたw
「なんだよお前ら!戦国三英傑、カッコいいだろ!!……まあいいや。じゃあ、二人とも手を合わせて。俺のあとに続いて同じことを言ってね」
グリムとゴウキが、巨大な手や骨の手を神妙に合わせる。
「いただきます!」
「「いただきます」」
:日本人やんけw
:めしあがれ!
:いっぱいお食べ……
クマガイフーズ:何卒、よろしくお願いいたします!
:クマガイフーズの公式アカウントきたあああ!!
:そりゃ100万人に宣伝されたら来るわなw
俺は肉厚なハンバーグを、グリムは黄金色の親子丼を、ゴウキはスパイシーな香りのカレーを一口ずつ口に運んだ。
「美味い……美味すぎる……。レトルトなのに、この肉汁の溢れ方は何?それがコクの深いデミグラスソースと混ざるともう……ああ、白米が止まらない……」
:やめろ、やめてくれ……飯テロすぎる……
:くっそ上手い食リポだな
:即ポチったわ。届くの楽しみ
「……ふむ。この黄色いのは卵というやつか?フワフワとした不思議な食感と、この肉の歯応えが絶妙だ。私は味覚の機微までは解さぬが、これは純粋に美味いと思うぞ。また食べたい」
:骸骨も大絶賛の親子丼w
:味覚がよくわからないのに「美味い」と言わせるクマガイフーズの魔力
:親子丼食いてぇぇえええ!
「おお、これはいいな!この黒い汁は少し刺激があって、俺もよくはわからんが色々な味が複雑に絡み合っているのが伝わる。もう一口いいか、大将。これ、俺は好きだぞ」
:カレー嫌いなやつはなかなかおらんからな
:鬼をも虜にするジャパニーズカレー
:そりゃ美味いもんなぁ
クマガイフーズ:ありがとうございます。画面の前で涙が止まりません。
:俺たちもクマガイフーズさんの商品食うぞ!
:元々うちの常備品だけど、さらに買い足すわw
「クマガイフーズさん、本当にいい商品作ってるね!でも、本当の勝負はこれからだよ。ここから俺たちのナンバーワンを決めるんだから」
そう言って俺たちは、一口食べては皿を交換し、夢中でスプーンを動かした。
そして、最後の仕上げ。
「さて、まずは俺らのナンバーワンを決め……あ、味噌汁を飲むのを忘れてた。グリム、ゴウキ、これも飲んでみて」
俺たちはカップを持ち上げ、フリーズドライのナスの味噌汁を一口啜った。
「「「うまぁ……」」」
:3体ともめちゃくちゃ良い顔してやがってw
:最高のスクショいただきました!
:これそのままCMに使えるだろ
:かわいいかよw
:グリムさんの目の炎も満足そうにメラメラしてるw
:現在100万人視聴中!!
:どんなCMよりも宣伝効果あるだろこれ
:今来たんだけど、誰かCurrentにスクショ貼って!
「ごめん、ナンバーワンを決めるんだったね。グリム、ゴウキ、準備はいい?」
そして、出された結果は――俺とグリムがハンバーグ、ゴウキはカレーを支持した。
「もちろん全部めちゃくちゃ美味いんだけど、俺たちの暫定優勝はハンバーグでした!!」
「いや……実を言うと、味噌汁が一番衝撃的だったのだがな」
「俺も同じくだ。あのホッとする味は反則だ」
:結局味噌汁かよw
:フリーズドライ味噌汁、速攻でポチりまくったわ
:日本人……じゃなくてモンスターも味噌汁の良さがわかるんだなw
:クマガイフーズのHP落ちてるぞwww
:見れないわ。鯖落ちかよwww
:ホームページも攻略しちゃうモンスターたちw
「あっ、ごめんなさい……。ノブナガたちも食べて!どれが一番好きか、みんなで決めて!」
俺は3つの皿を三英傑たちに手渡す。
一口ずつ、代わる代わる味を確かめる8体のモンスターたち。
:え、デュラハン、鎧に直でスプーン入れたwww
:予想外すぎる食い方でワロタw
:カースドリッチたちが小躍りするほど美味いのかよw
全員が真剣な面持ちで完食した。
「さて、君たち。どれが一番美味しかったか、手を挙げてください。ハンバーグ、カレー、親子丼……」
告げられた名前に合わせ、モンスターたちが次々と手を挙げていく。
そして、一番多く手が挙がったのは――親子丼だった。
:おお!!まさかの!!
:親子丼が後半で捲ったああああ!
:すげぇぇえええ!
「……ということでみなさん。総合結果は親子丼でした!結論としては、全部美味いってことだね!みんなも是非食べてみてね!」
「主、ニンゲンの世界にはまだ色々な『餌』があるのだろう?紗奈にもっと持ってくるように伝えてくれ」
「これっぽっちじゃあ、全然足りねえからな。紗奈の嬢ちゃんにもっと頼むしかねえわ」
:サナちゃんの仕事がまた増えたw
:サクラーのみんなが各自でレトルト食品を持っていってあげたらいいんじゃね?
:それだ!プレゼント企画とかできないかな
「いいよいいよ、気を使わないで!手ぶらでいいから、池袋に来た時は気軽に会いに来てね!」
クマガイフーズ:今後ともクマガイフーズをよろしくお願いいたします!御社……ではなく、御パーティへの支援も検討させてください!
:お、これはスポンサー契約か?
:仕事の依頼きたあああ
:CM出演決定だなこれw
「こちらこそだよ!美味しい物を作ってくれて本当にありがとう!クマガイフーズ最高!ってことで、以上『モンスターがニンゲンの食べ物を食べてみた』でした!」
◇
「えーと、次の質問。『サクちゃんに彼氏になってほしい?どんな人がタイプですか?』か……。うーん、彼氏は流石に難しいんじゃないかな。俺、モンスターだし。ご両親が許してくれないよ」
:そりゃそうよw
:許す許さない以前に種族の壁が厚すぎるわw
:俺が父親なら、こんな強い婿なら大歓迎だけどなw
:魔王の義父って、近所に自慢できるなw
「タイプは……うーん、そうだね。優しくて、笑顔が素敵な人かな!やっぱり笑顔が素敵な人って、それだけで魅力的だよね。みんなには、いつも笑っててほしいな」
「主には紗奈と、あの聖女がいるからな。あの二人は本当によく笑う」
「怒ったり笑ったり喧しい連中だがな。……大将は、将来的にあの二人と番いになるんだろ?」
:番いwww
:これは特大ニュースきたああああ!
:やばw
水瀬舞香:は!?!?!?
:サクちゃん、顔真っ赤になってて可愛いw
:まてまて、チャット欄に女王様が紛れ込んでるぞ
:どういうことやねんw
:草しか生えないwww
:いや、あのクールな御方がこんなところに……?
:前の配信でスパチャ投げてたぞ
:聖女さんは妹だし、一緒に観てたんかなw
:そういうことね、納得w
水瀬舞香:サクちゃん。会いに行くから、待ってて
:やばいwww
:サクちゃん、今すぐ逃げて!!
:トップ冒険者が本気で来ちゃうぞ!やばい!!
「え、マジ……?俺、倒されちゃうの……?」
綾香からはお姉さんの話は聞いているけど、その真意がさっぱりわからない。
いきなり「会いに行く」なんて言われても、どう対応すればいいんだ。
:魔王vs氷の女王!?
:これも大ニュースだぞ。トレンド1位確定だな
:既にCurrentにスクショ載ってるぞw
:マジでヤバいって、サクちゃん全力で逃げろ!!
「み、みんな。ごめんね……。ちょっと命の危険を感じるから、逃げる準備するために今日はここらへんで終わるね……。ばいばーい!!」
◇
「ちょっと、姉さん!!一体何してんのよ!!!」
配信を観ていた私は、混乱の絶頂で急いで姉に連絡を入れた。
「何って……何よ。まさか、朔とそんなことになってるなんて知らなかったのよ。朔は私の物でしょ?ちょっとあの子とは、じっくりお話し合いが必要だわ」
電話の向こうから聞こえるのは、普段の冷静沈着な姿からは想像もつかない、殺気と執着が混ざり合った声だった。
この女王様、本当に……!
「だからって配信の邪魔しちゃダメじゃない!朔の迷惑になっちゃったでしょ!?怯えてたじゃない!!」
「あっ……どうしよう。私、朔に嫌われちゃったかしら……」
急に弱気になる姉。
なんでこの人は、普段はあんなにしっかりしているのに、朔のことになると途端にIQが下がったような状態になってしまうんだろう。
「あぁもう!!わかったから!!私から朔に連絡しておくよ。姉さんが謝ってたのと、ただ話したいだけだって言ってたって、ちゃんと伝えておくから!」
「綾ちゃん……ありがとう。……明日、朔のところに行くから、彼が今どこにいるかだけ正確に教えて。すぐに連絡して」
はぁ……。もう、頭が痛い。
「わかったよ。でも、会った時にも絶対に迷惑かけちゃダメだよ?というか、姉さんは有名人なんだから、もっと自分の立場を自覚してよね!」
そう吐き捨てて通話を切った。
何事も起きなければいいんだけれど。
……というか、朔が姉さんの「所有物」にでもなったら、たまったもんじゃない。
はぁ……。私の心労は、いつになったら報われるんだろう。
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