拡散の影響
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
@微少女剣士
今日池袋ダンジョンで優しい魔王ことサクさんに会いました。
その名の通り優しくてカッコよくて、本当にモンスター?って思ってしまうくらい。
皆さんもぜひぜひ声をかけてみてください!
#優しい魔王 #サナサクちゃんねる #池袋ダンジョン
@じゃがいもの放ったらかし
話題の配信モンスターってさ、アレほっといていいの?
人類に協力するとか言ってるけど、結局はモンスターなわけで、危険な存在には変わらないじゃん。
協会もおかしいだろ。
@モンスター全〇すマン
サナサクとかいうチャンネルのあのモンスターってレベルどれくらい?
上級冒険者ならいけるだろ。
バチバチにしちゃってもいいかな?ん??
@モンスター愛好会東京支部
私どものような者にとって、サクちゃんは夢のような存在。
世界を変える存在なのだから、協会だけとは言わず国で考えるべき。
@ショコラちゃん
池袋ダンジョンで撮影したものです。
魔王さんが、冒険者に殴られていました。
それでも映像の通り反撃せず、こちらの協会に連絡しましょうかという問いかけに、笑顔で「こちらで対処するから大丈夫だよ」と言ってくれました。
それに、心配してくれてありがとうとも言ってくれました。
こんな優しい魔王さんに攻撃するなんてあり得ないです……。
【動画】
@アルミ缶戦士
動画見たけど殴った方が痛がってて草。
というか涼しい顔して殴られてんのな。
これは拡散だわ。
@ぴょころん
動画のその後が気になる。
あの冒険者たちはどうなっちゃったんだろう。
てか、協会は動かないの?
@佐藤の田中
装備的に初心者だろ?
喧嘩売る相手間違えすぎ。
@きっき
配信見てるサクラーとしては、あの配信の発言があってこの動画だから、殴ったやつの命があるのかないのかわからん。
でも、サクちゃんのことだからなんだかんだ許してそうではある。
@水瀬舞香
拡散されている動画を観たんだけど、注意喚起の為にキャスト。
サクに関しては配信でも言っていたけど、サクに攻撃した場合、人間対モンスターになる。
それは攻撃=戦闘ということを頭に入れてからやりなさい。
おふざけや喧嘩じゃないんだから。
#サナサクちゃんねる
@ハイペースマイペース
『氷の女王』も反応してる通り、やるやつは相応の覚悟を持ってやれよ。
俺はサクラーだから、絶対にそんなことしないし、勝てっこない。
◇
紗奈と別れた翌日。
ネットを見ていると、昨日の件が凄まじい勢いで拡散され、話題になっていた。
だから今日、池袋ダンジョンにこれほど冒険者が多いのか。
配信で「声をかけて!」と言った手前、俺はレベル上げを切り上げ、グリム達を残して上層で散歩している。
「魔王さん、大丈夫ですか?」
「応援してます!」
声をかけてくれる冒険者が増え、心配されることも多くなった。
だが、そんな善意の者ばかりではない。
その中でも数人に戦闘を挑まれたが、大体は俺の見た目がニンゲンと遜色ないことから、一言二言会話しただけで「あ、やっぱ無理だわ」と、戦う前にやる気を失う者もいた。
対人戦闘の忌避感や本能的に、何らかの「差」を感じ取ったのだろう。
残りの――言葉の通じない者たちとは、ちゃんと戦闘した。
結果は……出力をある程度抑えて、生かして帰した。
まあ、まだ上級冒険者がいなくてラッキーだったと言うべきか。
それに、Qtuberと見られる者もいたが、再生数稼ぎのおふざけだったのか、軽くじゃれる程度の攻撃しかしてこなかった。
うーん、すごく迷惑だ。
もしアレが上級や国家戦略級の冒険者なら、こっちも手加減して抑えるわけにはいかない。
そうなれば間違いなく、互いに命懸けの殺し合いになるだろう。
綾香のお姉さん――水瀬舞香さんも、厳しい口調で注意喚起をしてくれている。
いつかお会いすることがあれば、高額の投げ銭と、この注意喚起の件への感謝を直接伝えられればいいな。
昨日の配信から今日確認した段階で、サナサクちゃんねるの登録者数は100万人を超えた。
アーカイブも驚異的な速度で回っている。
もう少しすれば、紗奈が丁寧に編集したバージョンもアップされるだろう。
そのうち登録者数100万人記念配信をしないとな。
でも、その前に。
本当に厄介な訪問者が来る前に、もっとレベルを上げておかないといけない。
今のままでは、本当の「強者」が現れた時、俺が消えてなくなってしまう可能性だってあるんだから……。
◇
配信翌日――探索管理課。
「配信と報告を観たよ。本当にお疲れ様」
笑顔の関口課長が、上機嫌で話しかけてくる。
「娘たちが大喜びでさ。上の子なんて反抗期だったのに、うちの課の水瀬が出てるもんだから『お父さん凄い!』ってはしゃいでたよ。ありがとうな」
お子さんの喜びがよほど嬉しいのか、今日の課長はいつにも増して元気だ。
「いえ、与えられた仕事をしたまでです。お子さんに喜んでもらえて何よりです」
「おっ、有名人。お疲れ様」
そこに、ひらひらと手を振りながら唐沢も入ってきた。
「おはようございます。ありがとうございます」
「課長、これならサクにはしっかり協力してもらえそうですね。こちらも次のコラボ企画を詰めないと」
唐沢が前向きな提案を口にしたが、関口課長の表情がわずかに曇った。
「あ、それなんだがな……」
課長は少し声を潜める。
「配信後に、俺の方に直接連絡があってな。“上”がサクちゃんに会いたいんだってさ」
「サクちゃんって……。……まさか、サクを外に出すんですか?」
あり得ない。
特例中の特例、いや、前代未聞だ。
個人的には彼を自由にしてあげたい気持ちはあるけれど、事務手続きや安全性の面でハードルが高すぎる。
「そのお方を池袋ダンジョン内にご招待……というわけにはいかんからな。超法規的措置を適用して、あちらをダンジョンの地上フロアにある会議室にご招待する、という形になる」
いや、それも十分におかしい。
朔は朔だけど、ほぼモンスターなんだよ。
「待ってください。彼の意志は尊重したいですが、もし他の冒険者に見つかったらマズイことになりますよ。どうするんですか?」
「そこは、一瞬の隙を作る。名目は何でもいい。30分の緊急点検やメンテナンス……とかな」
そもそも、サクに会いたいと言い出した“上”とは一体誰なのか。
超法規的措置なんていう強引な手段を使える人間は、この組織内でも限られている。
「誰がそんなこと言い出したんです?」
「……会長だ」
その名を聞いて、納得した。
冒険者協会会長、鷹栖直継。
ダンジョンが発生した黎明期からトップを走り続けてきた伝説的な元冒険者だ。
5年前に「衰えた」という理由で引退したが、その圧倒的な実績とカリスマ性から会長職を引き継いだ人物。
鷹栖さんは、朔の学生冒険者時代をよく知る方だ。
フロントラインとして活動していた頃、彼に会うたびに「おう、坊主。またケガしてねえか?」と豪快に笑いながら朔に声をかけてくれていたことを思い出す。
あの方なら、サクを見た瞬間にその正体に気づくだろう。
「ちなみに、ダンジョンから対象を連れてくるメンバーは、担当の水瀬、それに『レガリア』だ。既に承諾も得ている」
姉さん、それに玲司。
なるほど、それなら話は早い。
玲司はフロントライン解散後、姉の所属しているレガリアに所属していた。
現在も国内トップクラスのパーティとして最前線で活躍している彼らなら、護衛としてもこれ以上ない布陣だ。
「承知しました。日程はどうしますか?」
「会長もお忙しいからな。まだもう少し先になるだろうが、話が降りてきたら交渉にあたってくれ。頼むぞ」
「わかりました。サクには伝えておきます」
トップシークレットの極秘任務。
気心の知れたメンバーが揃っているとはいえ、今から肩の荷が重い。
私は小さくため息をつき、資料をまとめた。
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