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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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14/17

狩っては食べ、狩っては食べ

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

コボルトリーダーとの激闘を終えた俺は、熱を持った身体を落ち着かせながら、トテトテと森の奥へと歩を進めていた。


今の俺が最優先で探しているもの。


それは、この2層における「住処」だ。


1層の岩場も悪くはないが、この2層は環境が違う。


鼻の利くコボルトやウルフが徘徊するこの森で、地上に身を隠すのはあまりにリスクが高い。


(……やっぱり、狙い目は木の上だよな)


俺はキョロキョロと首を回し、周囲にそびえ立つ巨木たちを見上げながら歩く。


手元のデバイスでマップを確認すれば、探索済みのエリアはかなりの範囲が埋まってきた。


だが、歩けば歩くほど、モンスターからの襲撃は止まない。


もちろん、今の俺にとっては、向こうから勝手に運ばれてくる「自動配送の餌」のような感覚ではあるのだが、一瞬たりとも気が抜けない状況が続くのは、精神的にどうしても疲労が溜まる。


マップの北西。


2層のエントランスから2時間と少し歩いた辺りで、俺の視界に飛び込んできたのは、周囲の木々とは一線を画すほど太く、天を突くような巨木だった。


(うわぁ……こいつはでかいなぁ)


その根元まで辿り着き、真上を見上げる。


すると、遥か高い位置の幹に、ポッカリと空いた大きな穴が見えた。


いわゆる「樹洞」というやつだ。


俺は短剣を、木の幹にサクサクと突き立てながら、器用に上へと登っていく。


穴の中に顔を突っ込み、中を覗き込んだ。


(よし……ここなら安全だ。冒険者からもモンスターからも視認されないし、なによりマップで見るとボスフロアからも近い)


1層にいる紗奈に会いに行くときは少し移動が面倒だが、2層の拠点としては申し分ない。


俺は新たな住処の決定を祝して、シャドウインベントリから取り出した魔石を勢いよく頬張った。


口の中に広がるブドウのような甘みと、身体を駆け抜ける魔素の感熱。


『レベルが上がりました』


(あ……上がった)


お祝いの一口でレベルアップとは、幸先が良い。


俺は満足げに、暗い樹洞の奥で尻尾を揺らした。





樹洞の隙間からは、絶えずモンスターの咆哮や、冒険者たちが武器を打ち合わせる金属音が響いてくる。


俺は魔石をポリポリと噛み砕きながら、高みの見物と洒落込んでいた。


(それにしても、1層に比べてモンスターの数も多いけど、冒険者の数もかなり多いな)


この数日の間に、インベントリに貯め込んでいた極小魔石はすべて食べ尽くし、今は小魔石にも手を出している。


身体を休めるのは大事なことだ。


まぁ、今の俺のHPやMPは、連戦をこなしても然程消耗していないのだが、精神的な「ゆとり」が欲しかった。


このフロアに生息するフォレストウルフやコボルトリーダーからは、『小魔石(赤)』が手に入る。


味も良く、何より極小魔石と比べ、何倍もの経験値が入る……ような気がする。


それから俺は、この樹洞を拠点にして、何日もの時間を過ごした。


腹が減れば狩りに出る。


倒したモンスターから魔石を剥ぎ取り、それを食う。


安全な樹洞に戻り、デバイスでネットや情報をチェックする。


そんなルーティンを繰り返す日々。


紗奈からはデバイスを通じて連絡があり、週末にはこちらに顔を出せるということだった。


彼女と合流するまでは、無理に1層へ戻る必要もない。


俺はこの2層での生活を満喫することにした。


動画配信も、まずは一度紗奈に会って、今の状況を相談してからの方が良いだろう。


そして、紗奈がやってくる前日。


食べては狩り、狩っては食べるという、野生剥き出しの生活を続けた結果、俺のステータスは進化を遂げていた。


名前:サク 種族:シーフインプ レベル:18

HP:97/97

MP:80/80

筋力:G(49)

耐久:G(46)

敏捷:D(188)

器用:F(83)

魔力:E(118)

運: E(101)

■スキル

透明化、盗む、気配遮断、ファイヤーボール、強奪、アナライズ、バックスタブ、エクスプロードボール


(……しっかり成長したなぁ)


相変わらず筋力と耐久は「G」ランクのままではあるが、数値的にはもうすぐFだ。

その他のステータスは、3層以降でも十分にやれるほどの数値に達している。


特に新スキルの『バックスタブ』。


背後からの攻撃時にダメージを大幅に増加させるこの能力は、俺の「暗殺スタイル」をさらに凶悪なものへと強化してくれた。


そして『エクスプロードボール』。


ファイヤーボールの強化版として試しに放ってみたが、その威力は凄まじかった。


着弾と同時に激しい爆炎を撒き散らし、周囲の木々を巻き込みながら、密集していたモンスター複数体を一瞬で霧散させたのだ。


魔力値が「E」に到達したことで、スキルの基礎威力が底上げされた結果だろう。


(紗奈と話したら、いよいよ3層、4層、そして5層へと配信をしながら攻略を進めていこうかな。……よし、とりあえず今日は2層のボスに挨拶でもしてくるか。余裕があれば3層の様子も覗いてみよう)


俺は二本の短剣を腰に差し直し、樹洞から飛び出した。





2層の最奥。


この層には、1層のような人工的なボスフロアの扉は存在しない。


ただ、鬱蒼と生い茂る木々を抜けた先に、ぽっかりと開けた巨大な広場のようなエリアがあるだけだ。


そこに鎮座していたのは、体長2メートルを優に超える、圧倒的な威圧感を放つ熊型のモンスターだった。


俺は即座に『アナライズ』を発動させる。


種族:フォレストベア レベル:7

HP:65/65

MP:20/20

筋力:E(120)

耐久:E(110)

敏捷:F(58)

器用:G(22)

魔力:G(37)

運: G(38)

■スキル

怪力、咆哮、突進

■取得可能アイテム

小魔石(青)、フォレストベアの爪、フォレストベアの牙


(……わかりやすいステータスだ)


脳筋、という言葉がこれほど似合う奴もいない。


だが、今の俺のようなスタイルにとっては、一撃が重く、かつ耐久値が高い敵は本来苦手な部類だ。


ただの近接特化型であれば、長期戦を強いられただろう。


だが、俺には強力な遠距離魔法がある。


計算上、ファイヤーボールなら16発、エクスプロードボールなら10発は撃ち込める余裕がある。


2層のボス程度なら、3発から4発もあれば沈むはずだ。


「はじめまして、よろしくな」


軽く片手を上げて挨拶をする。


「ガァァァァァッ!!!」


フォレストベアが激しい咆哮を上げた。


「……挨拶くらい返せよな」


スキル『咆哮』の影響か、一瞬だけ身体が強張る感覚があった。


その隙を逃さず、巨体に見合わぬ速度で突進してくるフォレストベア。


だが、俺の敏捷値は奴の約3倍だ。見切れないはずがない。


俺は紙一重で突進を回避すると、宙で身を翻しながら『エクスプロードボール』を2発連続で叩き込んだ。


掌から放たれたのは、ファイヤーボールよりも遥かに大きく、熱り立つ小さな太陽のような火球だ。


それが空気を切り裂く音を立てて、ベアの胴体へと吸い込まれていく。


――ドォォォォォンッ!!ドォォォォォンッ!!!


爆発、という言葉が相応しい。


単なる火属性の熱ダメージというより、衝撃そのものが対象を粉砕する威力が勝っていた。


激しい光と爆炎が収まったとき、そこには跡形もなく消え去った森の主の残滓だけが漂っていた。


「……2発もいらなかったかな?」


俺は少しだけ後悔しつつも、地面に転がっていた『小魔石(青)』を拾い上げ、奥へと続く石造りの階段を下っていった。





階段を下りた先。


そこは、これまでの緑豊かな森とは一変した、古びた遺跡のような空間だった。


エントランスに設置された転移石が、青白い光をボーッと放ち、静寂に包まれた広間を青く染めている。


通路の壁に並ぶ松明は風に揺れ、その光だけでは奥の深い闇を見通すことはできない。


「……これは、不気味だね」


トラップの有無に気を配りながら、俺は慎重に一歩を踏み出す。


さて、この場所には一体どんなモンスターが潜んでいるのか。


カタッ……カタッ……カタカタカタカタ……。


闇の奥から、乾いた硬質な音が響いてくる。


姿を現したのは、肉を失い、白骨化した人型の魔物。


スケルトンだった。


俺は『アナライズ』を飛ばす。


種族:スケルトン レベル:5

HP:28/28

MP:20/20

筋力:G(32)

耐久:G(38)

敏捷:G(25)

器用:G(20)

魔力:G(24)

運 :G(5)

■スキル

スラッシュ

■ドロップ

骨の破片、極小魔石


(お、レベル5か。この階層のゴブリン枠かな?)


そう思った俺だったが、すぐに違和感に気づいた。


この池袋ダンジョン3層の推奨レベルは、7から9のはずだ。


それなのに、目の前の雑魚がレベル5?


嫌な予感が脳裏を掠める。


そしてその予感は、すぐに的中することとなった。


奥へ進むにつれ、現れるスケルトンの種類が増えていく。


通常のスケルトン、盾を持つスケルトンナイト、杖を掲げるスケルトンメイジ、そして弓を構えるスケルトンアーチャー。


スケルトン以外の三種は、すべてレベル8。


なぜ、推奨レベルを下回る個体が混ざっているのか。


その答えは、すぐに分かった。


答えは、圧倒的な「量」だ。


通路のいたるところに骨の兵士たちが蠢いている。


これはソロで挑むには、あまりにも効率が悪い……。


本来、ダンジョン攻略はパーティを組むことが前提だ。


ソロでも不可能ではないが、背後を取られるリスクや物量で押される危険度は段違いに跳ね上がる。


遺跡のあちこちから、先に入った冒険者たちが上げる戦闘の音が響いてくる。


(……どんだけリポップしてるんだよ)


今の俺のステータスなら、正面からの戦闘で負けることはまずない。


だが、これだけの数に囲まれ続けると、精神的なげんなり感が半端ではないのだ。


スケルトンがわらわらと押し寄せてくる中、ナイトが壁になり、後方からアーチャーやメイジが精密な攻撃を仕掛けてくる。


集中して対処していても、背後から骨の指先が触れそうになる瞬間があり、ヒヤッとする場面が何度かあった。


だが、悪いことばかりではない。


それは収穫、つまりドロップアイテムと経験値だ。


ドロップする素材は『骨のかけら』や、『古びたシリーズ』のボロボロの武器ばかりだが、魔石は別だ。


雑魚のスケルトンは極小魔石だが、ナイト、メイジ、アーチャーの三種が落とすのは、価値の高い『小魔石(赤)』なのだ。


(……あまり奥に進みすぎても、戻るのが面倒だな。ここらで一度引き上げるか)


気づけばかなりの時間が経過していた。


明日の紗奈との約束までに1層の合流地点へ戻らなければならないことを考えれば、そろそろ時間切れだ。


(次に来るときは、いよいよ配信をしながらの本格攻略かな。3層の住処も探さないといけないし、その先の4層、5層も見に行きたい。……ふぅ、やることがいっぱいだな)


俺は骨の群れを屠りながら通り過ぎ、青白い光が揺れるエントランスへと引き返した。

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