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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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ルミナスドラゴン

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

ロシア連邦――セルギエフ・ポサードダンジョン、33層。


あらかじめ定めた座標へと空間転移で到着したその瞬間に、俺は自身の足元の影から配下たちを一斉に呼び出した。


グリム、ゴウキ、ノア子。


そして、俺のすぐ傍らには大天使クレアが並び立つ。


「ここのボスの討伐は俺が完全に1人でやるからさ。……グリム、事前にこれを渡しておくから、撮影の操作をお願いできるかな?」


「……わかった。主の姿を、ニンゲンたちに存分に魅せてやれ」


グリムへと手渡したのは、俺のデバイスだ。


あの日に地獄を共に味わい、今でもあのトカゲを仇に思っている玲司や綾香にも、俺がケジメをつけるこの瞬間をリアルタイムでどうしても観せたかったから、俺はここから配信をすることに決めたのだ。


世界で初めての、厄災対厄災による、前代未聞のタイマンの決戦。


あいつをこの手でどうやってじわじわと嬲り殺しにしてやろうかは、すでに頭の中で完璧に決めている。


「ねえ、姉ちゃん。そういえばさ、対象の相手が見ている夢の中身とかも視えたりするの?」


「ええ、もちろん視えますよ」


「ならさ、解説をしてくれる? あいつがどんな絶望の苦しみを味わっているかっていうことをさ」


「分かりましたわ、愛しい弟。存分に恐怖を味あわせてあげてくださいな」


「ありがとう。……ゴウキもノア子も、そっち側にまでは戦闘の被害は飛ばないとは思うけれど、念のために防御だけはしておいてね。ゴウキ、ノア子の護衛を頼んだよ」


「おう、大将。俺に任せておけ。バッチリ守ってやるからよ」


「よし……。じゃあグリム、ライブ配信を開始して」


俺の指示を受け、撮影係を任されたグリムは自身の指で静かにカウントダウンのアクションを始める。


3……2……1……。


「――はいどうも! 始まりました、サナサクちゃんねる! さてさて、今日の配信は一体どこからお届けしているかと言うと……そこはまだ秘密!」


「愛しの弟よ。一体これは何をしているのかしら?」


あ、よく考えたら、事前にクレアに配信について説明しておくのをすっかり忘れていたな。


「これはね、世界中の多くのニンゲンたちに俺らのリアルタイムの姿を観せているんだよ。あれ?クレアもわかるんじゃない?」


「あぁ、なるほど。とても面白いことをしているのですね」


納得した様子のクレアは、カメラのレンズの目の前へと自ら大胆に映り込んできた。


「え、ちょっと待って、姉ちゃん。配信にそんなに堂々と映っちゃっていいの?」


「ふふ、私が映ってはダメな理由がどこかにありますかしら? 私は自由な存在なのです。……画面の向こうのみなさん、ごきげんよう。私はクレア・レミエル。厄災の1体ですわ」


「……主、配信のチャットコメントが全く止まらないぞ。もの凄い勢いの閲覧数になっている」


カメラを持ったグリムが驚いたように呟く。


まぁ、そりゃあ当然だろうな……。


今までニンゲンたちの間では正体も生息地もすべてが不明とされていた厄災が、今まさに配信チャンネルのカメラの前に自ら笑顔で出てきて、気楽に自己紹介を始めたのだ。


前代未聞過ぎる展開だろ、これ。


「はい! 視聴者のみんな、チャットコメントは今ちょっとじっくり見る余裕がないので、討伐が終わった後でゆっくり読ませてもらうね! で、今日このダンジョンでこれから何をするかと言うと……」


「――題して『俺の仇を、自分の手で討ち取ってみた!』です!!」


パチパチパチパチ。


ソファー代わりの岩に座っていたノア子が、一応おざなりに両手で拍手をして盛り上げてくれる。


「ありがとう、ノア子。俺の仇と言えば、あの日に新宿ダンジョンに現れて俺たちのすべてを破壊した、あのルミナスドラゴン。あいつをこの世界から完全に消し去るために、俺はわざわざここまで来ました!」


「あいつは今、まさにこの目の前にある巨大な扉の向こう側に潜んでいるよ。今ここに集まっているのは、厄災級の格を持つ者が合計で5体。俺、グリム、ゴウキ、ノア子、そしてクレアだけど、今回の戦いに関してはすべて俺1人で相手をさせてもらうから、画面の向こうのみんなも、画面から目を離さずにバッチリと見ていてね」


「……まぁ、愛しい弟の相手には全くならないでしょうけれどね」


「あはは、ではサクラーのみんな、この後の戦闘ではおそらく画面越しでも目が眩むようなもの凄く強い『光』があると思うから、部屋の明かりを明るくして、なるべく画面から離れて観てね。……じゃあ、いくよ」


俺はそう言って微笑むと、目の前の巨大な扉を両手で力強く押し開けた。






押し開けた扉の先、広い部屋の真ん中に、あいつは確かにいた。


今でも脳裏に鮮明に焼き付いている、あの日の絶望の光景。


突如として俺たちの前に現れたあの強烈な光と、五感を破壊するほどの轟音の衝撃。


目を開けたあとに視界へ飛び込んできた、あの憎たらしいほどに神々しい姿と圧倒的な絶望。


そのすべてが、俺の記憶していたままの姿でそこに存在していた。


部屋の中は結晶が至る所から鋭く生え出た、どこか幻想的な光景が広がるエリアだ。


その中心に鎮座する、およそ10メートル程の巨躯。


水晶のような美しい鱗の隙間から、周囲を不快に照らし出すあの憎たらしい黄金の光が漏れ出している。


――絶対に、生かしてはおかない。


今ここで、徹底的にぶっ潰す。


「さて、画面の向こうの視聴者のみんな。あれが、俺たちのすべてを壊したルミナスドラゴンだよ。ここから先の戦闘は、少しだけ内容が酷くなるかもしれないからさ。そういうのが苦手な人は、今のうちにブラウザを閉じて観ないでね。俺は自分が持てるすべての力を使って、あいつを徹底的に潰すから。……じゃあ、いくよ」


カメラに向かってそう冷静に告げると、俺は武器も構えずにルミナスドラゴンに向かってまっすぐに歩き出した。


「――『神の悪戯ロキ・パラドックス』」


俺自身の固有スキルを、まずは事前の保険として発動させておく。


こちらの姿を視界に捉えたルミナスドラゴンは、本能的な警戒からなのか、巨躯をグッと低く沈めて力を溜めると、空間そのものが弾き飛ばされそうになるほどの凄まじい轟音を上げながら、部屋全体に咆哮を響かせた。


目の前が、あの日のように真っ白な光で埋め尽くされる。


この理不尽な光と衝撃の前に、リーダーはやられたんだ。


玲司も綾香も成すすべなく吹き飛ばされ、俺も壁に叩きつけられてた。


だが。


「……そんなの全く効かないんだよねぇ」


スキルによって因果律を書き換えているため、俺の肉体は衝撃もダメージも受けていない。


光の嵐が去った後も、俺はただ平然とそこに立ち尽くしていた。


「ほら、どうした? かかってこいよ、クソトカゲ。いくらでも攻撃してきていいぞ?」


ギャァァァアアア!!!!


俺の挑発に激昂したルミナスドラゴンは、地を割る勢いでこちらへ弾き出されるように巨躯を飛ばして突撃してくると、太い右腕を高く振り上げ、俺の頭上に向けて押しつぶすように力任せに振り下ろしてきた。


ドガァァァアアアンッ!!!


あまりの威力にフロアの硬固な床が派手に弾け飛び、砂ぼこりが辺り一面へと激しく舞い上がる。


だが。


「ほらほら、どうした? 言っただろ、お前の攻撃は最初から掠りもしてねえんだよ」


舞い上がった砂ぼこりがスッと晴れると、その破壊のクレーターの中心で、傷ひとつなく無傷で佇む俺の姿がカメラの向こうにもはっきりと見えているだろう。


「……トカゲであっても、流石にここまでの常識外れな事態には動揺するんだな」


ルミナスドラゴンは何故自分の全力の一撃が目の前の者に当たらないんだ?と、困惑しているようで、大きな巨躯を震わせながら一歩後ろへと後退した。


「――『トリックスター』、――『ジョーカートラップ』」


俺が静かに2つのスキル名を呟くと、俺の身体の周囲が、紫色の魔力のオーラによって包み込まれた。


俺はそのまま、さらに歩みを進めてルミナスドラゴンとの距離を詰めていく。


今の俺の心には、あいつに対する恐怖なんていう感情は、一欠片も存在しない。


逆に、俺の体中から溢れ出る絶対的な圧に完全に怯えているのか、大きな巨躯をさらに後ろへと情けなく後退させていくルミナスドラゴン。


その時だった。


ギャァァァッ!!!!


まだ俺が直接何も攻撃の手を加えていないというのに、ルミナスドラゴンが、突如として耳を劈くような凄まじい悲鳴を部屋中に響かせたのだった。


ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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