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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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綾香とのデート 2

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

そこから俺たちは、色々な話をしながら目的地へ向かって並んで歩いた。


立てていたプランは今のところ順順だ。


ここから赤レンガ倉庫を通っていけば、目指す目的地へと辿り着ける。


道すがら、俺は綾香と最後に会った原宿から今までの間に、俺の身に一体何があったのかを順番に説明して聞かせた。


日本国内の主要なダンジョンの攻略や、ノア子たちとテレビCM撮影。


さらには、イギリスの大天使クレアや、アメリカの終わりの王アストラといった世界の厄災たちとの、交流の裏話まで。


そのあまりにもスケールの大きい話の数々に、綾香はぽかんと口を大きく空けたまま、ただただ圧倒された様子で俺の話を聞いていた。


「……それでな、実はイギリスのクレアから直接聞いたんだけどさ。あの日あの時、俺たちの前にあのルミナスドラゴンが唐突に現れた、本当の理由がようやく分かったんだよ」


「……何が理由だったの?」


綾香の問いに、俺は少しだけ言葉を濁しそうになった。


彼女にとっては、嫌な話になってしまうかもしれないからな。


「……ターゲットは綾香だよ。あのトカゲは『聖属性』、しかも将来的に『聖女』の器になり得る人間に目をつけて好んで喰らっているらしいんだ。あの日俺が綾香たちを避難させたから、あいつは獲物を奪われて邪魔をされた腹いせに、仕方なく代わりに俺を喰ったんだろうね。ざまぁみろって感じだよ」


俺としては、あえて少しおどけたトーンで伝えたつもりだったのだけれど、まさかあの大事故の原因が自分自身にあったとは夢にも思わなかったのか、綾香はショックを受けたように急に言葉を失って黙り込んでしまった。


「なんだよ、綾香。そんな暗い顔をするなよ、別にこれで本当に良かったんだからさ。俺なんてクレアからその真実の話を聞いたとき、むしろスカッとしたもんね。それにさ、ただ現れた厄災に一方的に蹂躙されて終わるより、大切な仲間を自分の命と引き換えに助けられて喰われたほうが、男としてはまだ何倍もマシだったよ」


それから俺は、アストラと交わしたこの世界の秩序と均衡を守るためのルールの話を聞かせる。


「俺はもしこの先、世界に6体目の新しい厄災が現れてバランスに余裕ができたら、その瞬間にでもあのトカゲをこの世から完全に消し去りに行ってくる。だから、あいつへの復讐は俺に任せて、もう少しだけ待っていてほしい」


「……朔、本当に、本当に大丈夫だよね?」


綾香の瞳には、隠しきれない強い心配の色が浮かんでいた。


それも当然だ。


一度は自分たちのパーティを完全に崩壊させ、サクの命を奪った張本人であり、何よりニンゲンの常識からしてみれば絶対に太刀打ちできるはずのない個体なのだから。


「大丈夫に決まっているでしょ? これでも俺、神様なんだからさ!」


「ふふ、そうだよね! うん、分かった、お願い。……あいつを、絶対にやっつけてね!」


「任されました」


俺が胸を叩いて見せると、彼女の顔にようやくいつもの明るい笑顔が戻ってくれた。


あ、そうだ。笑顔になってくれたところで、ついでに紗奈のことも今のうちにちゃんと話しておかないとな……。


せっかくのデートの最中に余計な報告かとも思ったけれど、どうせそのうち隠していても確実にバレるはずのことだしね。


「あ、それとさ……。もう1つ話しておきたいことがあって」


「……松田さんのことでしょ?」


うわ、怖っ。


女性の直感って本当に恐ろしいな。


これ絶対、何かのスキルか何かだろ……。


「う、うん、その通り。……実は、明日から紗奈が俺の家へと引っ越してきて、一緒に暮らすことになったんだ。もちろん、俺の配下たちもあそこの家に同居しているんだけどね」


「……まぁ、一緒にいたほうが朔の今後の仕事や私生活のサポートが色々とやりやすいしね」


あれ? 想像していたよりも全然怒っていない……?


「なによ、そんな私の顔色ばかり窺って。……そりゃあ、確かに本音を言えばめちゃくちゃ嫌だよ? でも、松田さんの朔を想う気持ちはよく分かるからさ。……まあ、本当を言えば私も朔と一緒にいたいな、とは思うけれども」


「そ、それは……ほら、色々と追々考えていこうね……あはは……」


苦笑いで話を濁す俺に対し、綾香はフッと悪戯っぽく微笑んで、人差し指を立てて見せた。


「あ、でも、このことは絶対に姉さんにはバレたら駄目だからね。もし知られたら、間違いなくあの人は荷物をまとめて朔の家に勝手に住み着くから」


そうだ、俺にはまだ舞ちゃんがいたわ。


綾香ならまだいいんだけど、あの嵐のような大天使クレアに加えて、女王様の舞ちゃんまでが我が家に居座る生活空間なんて想像しただけで、俺の精神的ダメージが……。


「まあ、姉さんに関しては、こちら側で上手くやっておくから。姉さんも『朔に会いたい!!』とか言って騒いでるけど、朔が忙しいのはニュースを見てよく分かっているしね」


「あはは、本当に助かるよ。舞ちゃんにはよろしく伝えておいて」


「言えるわけないでしょ? 今日こうして2人きりで会ったことなんて、姉さんにバレたら本当にそれこそ大変なことになるんだから」


間違いない、と確信して、俺は思わず声を上げて笑ってしまった。


そうして賑やかに歩いているうちに、俺たちの足はようやく目的のエリアへと辿り着いた。


きらびやかな赤い門が出迎えてくれる、横浜中華街。


「綾香はここ、今までに来たことある?」


「子供の頃に、一度だけ家族で来たことがあるけれど、それだけなの。だから、久しぶりでなんだか凄くワクワクしちゃうね!」


今回は予約して決めていなかったので、2人で並んで歩きながら現地の賑やかな雰囲気を見て回り、綾香の直感で入るお店を選んでもらうことにした。


そうして入った中華料理店で、俺たちは数々の美味しい料理を、心ゆくまで楽しく堪能したのだった。





食事の後も、横浜の街を楽しんだ俺たちは最後に山下公園に来ていた。


周りはカップルが多くいて、なんだかソワソワする。


隣の綾香はそんなカップル達を見ながら「いいなぁ……」と呟く始末。


俺はなんて言えばいいかわからず「ほら、周りから見たら俺たちだってカップルに見えるから!」と言ったが、「そういうことじゃない!」と怒られてしまった。


最後の最後でやらかしてしまった……。


よし、プラン変更だ。


ここは俺にしか出来ないことをしてやろう。


「綾香、周りに見られても恥ずかしくない?」


「え、何する気なの!?」


「これがプランの最後。俺にしかできないことをしたい。ちょっと恥ずかしいと思うけどごめんね」


俺はそう言って、綾香に着ていたジャケットを着させてお姫様抱っこする。


「ちょっ、えっ、なに!?」


綾香の慌てる声に、周りのニンゲンたちが「イチャついてるカップルがいるな」といった表情で見てくる。


「じゃあ、行くからしっかり捕まってね」


外野の視線を置き去りにして、俺はそのまま宙へ浮き上がる。


「わっ、朔、待って! みんな見てるから!」


「いいじゃん! 俺たちの仲の良さを見せつけてやれば!」


地上では口を開けて驚くニンゲンたちや、超常現象とも言える光景に動画を撮っているニンゲンもいる。


「ここからは空中散歩しながら、家まで送るから」


「もう、ありがとう! 大好き!!」


そう言って、俺の頬へ綾香の唇が触れる。


「なっ……ありがとう。じゃあしばらくの間、この空を楽しんでね」


そう言って俺たちは横浜の綺麗な夜景を楽しんで会話を交わしながら帰った。


移動スピードは、綾香が怖がるだろうからゆっくり。


あそこに何がある、今度はあそこにいきたいなんて話をしながら楽しんでいると、綾香のデバイスが鳴る。


「出なくていいの?」


「いいの。今を楽しまなきゃもったいないもん」


満面の笑顔でそう言ってくれる綾香の姿に、俺はホッと安堵した。


そして、夜空を横切って綾香の自宅前に到着する。


「朔、今日はありがとう。一生の思い出になったよ」


「こちらこそだよ。楽しんでもらえたみたいで安心したよ」


「またいつかデートしてくれる?」


「色々片付いたらね。また待たせちゃうけど……」


「もう待つのは慣れたし、朔がこうして生きてくれてるんだからずっと待てるよ」


そのあまりにも健気な言葉に、胸がズキッと痛くなった。


綾香は俺が生きているか死んでいるかもわからずに、ずっと待っていたんだ。


俺がモンスターに生まれ変わった後も、こうして俺のことを待ってるなんて言わせてしまっている。


それに甘えていいのか?と。


「ずっとは待たせるつもりはないから。いつか……そう遠くない未来にまたちゃんと話させてもらうよ」


「それって……」


「だからもう少しだけ甘えさせて。今日はゆっくり休んでね」


「うん……ありがとう。じゃあまたね」


そう言って綾香は嬉しそうに手を振って自宅へと入っていった。


グダグダしてたし、綾香も紗奈も中途半端にしてしまっていた。


あのルミナスドラゴンを倒したら、ちゃんとしないと。


俺はニンゲンじゃないからとか言い訳をしていたが、ちゃんと男として腹をくくらなきゃならないなと思った。


「大人に相談するかぁ……」


とりあえず明日は紗奈の引っ越しだ。


それを無事に終えたら、一度アイツと話してみようと思った。

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