神の悪戯
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
「た、大変不遜で無礼な真似をいたしました。深く失礼をいたしました……っ!」
完全に戦意を喪失し、真っ青な顔で必死に頭を下げてくる現地のニンゲンたちに対し、俺は忍装束の奥で親しみやすい笑顔を浮かべたまま応じる。
「この今回の一連の出来事については、日本に戻ったらすぐに絹川総理にも詳細を報告として伝えるつもりだけど、別に構わないかな? そちらの皆さんも、今すぐホワイトハウスの大統領に直接伝えたほうが良いとは思うけれど。……このまま何も説明がないままだと、俺から総理へ『もしかしたら今のアメリカは、我が日本に対して裏で敵対の意思を隠し持っているかもしれない』なんて、余計な懸念を口にしてしまうかもしれないしね」
「そ、……そのような事実は断じてありません!! 我がアメリカ合衆国は、日本国との極めて良好な友好関係をこれからも強く望んでおります!!」
国家安全保障担当のジェームズ補佐官が、必死の形相で声を裏返らせて全否定してきた。
「まぁ、そこにいる不届きなバカを、俺がこの場で今すぐ綺麗に消し去ってしまえば、今回の不愉快な問題は何もかも丸く解決しますけどもねぇ……」
俺はわざと悪戯で冷酷な笑みを浮かべ、ガタガタと震えているイーサンのことを見つめてやった。
ヒッ……!と短い悲鳴を上げて怯え、涙目で絶望しているイーサンに対し、「あはは、冗談だよ」と軽く言葉のフォローを入れておく。
「でも、これで貴方たちも身に染みてよく分かったんじゃないですか? 俺なら、やろうと思えば貴方たちの国家そのものを数日で容易に陥落させられるのに、あえてそれを絶対にやらないんですよ。これでも十分に、俺が貴方たちに対してどれほど友好的であるかと思ってほしいものです。それにね、俺が今回わざわざアメリカまで足を運んだ目的は、ここのダンジョンの最深部だけ。それ以外のことには、俺は一切の興味は無いですからね」
「わ、分かりました……。我が国アメリカは、貴方の神聖なる来訪を心から歓迎いたします……」
「ハハハ! 歓迎していただきありがとうございます。このままアメリカ政府も、日本に対してずっと実直に協力的であってくれたら本当にいいんですけどね。……ねえ、そこでこちらの様子を覗き見ているんでしょう? 大統領さん」
最初から全てお見通し、バレているんだよなぁ。
目の前で冷や汗を流しているリチャード軍司令官の、衣服の胸元の位置に精巧な超小型の監視カメラが仕込まれていることに、俺は最初から気づいていた。
俺は忍び装束の顔を覆っていた黒い布をスッと下へ下げ、素顔を晒した状態で、その小型カメラのレンズの目の前まで自ら大胆に顔を近づけた。
「……絹川総理は優しいから、今回の貴方たちの無礼なちょっかいに対しても表向きは何も言わないかもしれませんけどね。俺としては、そちらが今後少しでも俺たちの国に妙なちょっかいをかけてきたら、いつでも直接ホワイトハウスのあんたの部屋まで一瞬で遊びに行くつもりですから。……近いうちにお会いできることを、心から楽しみにしていますよ」
レンズの向こうにいるであろうアメリカの最高権力者へ向けて、カメラの至近距離から満面の笑みで強烈な警告を直々に叩きつけてやった。
「そ、……それは、我が国に対する事実上の脅迫では……?」
ダグラス副会長が、震える声で恐る恐る尋ねてくる。
「それをどういう意味として捉えるかは貴方たちの自由にお任せしますけれど、これからの国家としての選択だけは、絶対に間違えちゃ駄目ですよ? 俺のルールでは、次の一発で完全にアウトですからね。……さて、それじゃあ俺はそろそろ最深部へ向かって行ってもいいですか? 目的の用事が終わったら、すぐに日本へ帰りますから」
「……し、失礼いたしました。不敬な引き止めをしてしまい、本当に申し訳御座いませんでした。……どうか、お気をつけてお進みください」
そう言って、先ほどまで世界の頂点気取りだった4人の男たちは、幽霊のように肩を落としてトボトボと1層の入口の方向へと引き返していった。
まあ、最初の挨拶代わりとしては少々やりすぎちゃったかもしれないけれど、アメリカという国家の心臓部に対して、これ以上ないほどの完璧な釘は刺せただろう。
二度と抜けないくらい、深く深くね。
◇
「……へい、管理者! そこにいる?」
アメリカ政府の男たちが去った後、俺は一連の揉め事をここで起こしてしまった件について、このグランドキャニオンダンジョンの管理者に念話で謝罪を試みた。
『……ええ、しっかりと一部始終を見ていましたよ。……幻惑神、僕の管轄であまり大きな悪戯や戯れをしないでくださいよ』
「それは本当にごめん! わざとじゃないんだ。とりあえず、俺は今からアストラってやつに直接会いに行くからさ。ここから一気に探索を進めるけれど、別に君を倒してこのダンジョンを潰すわけじゃないから安心して! あと、アストラにも申し訳ないけれど『そこで待ってて』って事前に伝えておいてよ!」
『……分かりました。彼もお待ちしておりますよ』
管理者との会話の終了と同時に、俺は自身の力をフル活用し、最深部へと向かって下へ下へと潜り続けた。
道中では、アメリカならではのモンスターを倒したり、日本にはないドロップアイテムを拾ったりと、まさにちょっとした観光気分だった。
それでも、飛翔しながらの移動であり、敏捷値も魔力値と同じである『ERR』という途轍もない数値に達している俺のスピードは、道中のモンスターの視界にも一切捉えられないほどの速さであった。
そうして瞬く間に辿り着いた、最深部である33層のボスフロア。
「……一体何メートルあるんだよ、これ……」
目の前に立ちはだかる、ついそんな言葉を口にしてしまうくらいに巨大で荘厳な装飾が施された石造りの扉を、両手でゆっくりと押し開いた。
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