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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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言いつけは守れませんでした

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

「……貴方が、日本のサク殿ですね」


スーツを着こなしたガタイの良い男性が、鋭い視線を向けながら英語で声をかけてきた。


「そうですよ、俺が日本のサクです。そちらは?」


「私はアメリカ合衆国の国家安全保障担当補佐官を務めている、ジェームズ・カーターです」


ジェームズ補佐官はそう名乗ると、自身の後ろに控える残りの3人のメンバーを順番に紹介してくれた。


軍服を着た男性は、ダンジョン対策統合軍の司令官であるリチャード・ハミルトン軍司令官。


眼鏡をかけた知性そうな男性は、アメリカ探索者協会のナンバー2であるダグラス・アームストロング副会長。


そして最後の一人は、アメリカ国内でトップ探索者として君臨しているという、イーサン・レックスという男だった。


「失礼ながらサク殿。……貴方が我が国アメリカに対して明確な敵対意思を持っているか、あるいは国内でスタンピードのような最悪の脅威を引き起こす危険性が無いか、それをこの場で直接確認しに参りました」


「国を預かる身としては、当然の確認だと思いますよ」


俺は肩を小さく竦めてみせた。


「もし俺が貴方たちと逆の立場だったとしても、自国の安全のために全く同じことをしますからね」


俺の物分かりの良い返答を聞き、ジェームズ補佐官は少しだけ張り詰めていた表情を和らげた。


「ご理解いただき感謝します。……率直に申し上げますと、我々アメリカ政府は、貴方という存在を極めて危険視しています」


「でしょうね」


「ある日突然、地上に『神』を名乗る未知の超常存在が現れたのです。国家の安全保障上、警戒を最大限に強めない国家など、この地球上に存在しません」


「それもよく理解できますよ」


「では、単刀直入に確認します。……貴方は、我がアメリカ合衆国に敵対する意思はありますか?」


「ありません」


「それは、将来的にもずっと変わらないと?」


「ないですね」


「……それを、我々に明確に保証できますか?」


向けられた詰問に対し、俺は布の奥で苦笑した。


「この不確実な世界において、『絶対』なんていう都合の良い言葉は、誰も使えませんよ」


俺の言葉に、4人の表情が一瞬で少しだけ硬くなるが、俺はそのまま言葉を続けた。


「ただし、俺の方から理由もなく、貴方たちに喧嘩を売るような真似をすることは絶対にありません」


「……なるほど」


ジェームズ補佐官が、その言葉の意図を測るように頷く。


「では、もしも日本政府から、我が国を攻撃せよと命令された場合は?」


「断ります。俺は政府の道具じゃありませんからね」


「……もしも、アメリカが日本と何らかの理由で敵対関係に至った場合は?」


「それは、その時の内容次第ですね」


問答を黙って聞いていたリチャード軍司令官が、ここで初めて重々しく口を開いた。


「……随分と、曖昧な返答をされますな」


「国同士の諍いの理由にも、色々ありますからね。どちらが悪いか一概には言えないこともあるでしょう」


「では、日本国そのものを守るためなら?」


「当然、全力で戦いますよ。……俺は元ニンゲンで、元日本人ですからね」


その俺の確固たる断言に対し、周囲の空気の質量が少しだけ重くなった。


政府高官たちがサクの言葉の重みを吟味する中、それまで退屈そうに鼻を鳴らしていたトップ探索者のイーサンが、ついに我慢の限界といった様子で鼻で笑った。


「はっ、……随分と偉そうな口を叩いてくれるじゃねえか、おい」


イーサンの無礼な態度に、ダグラス副会長が即座に眉をひそめて叱責する。


「イーサン、弁えなさい」


「何だよ。……黙って聞いてりゃ、事実だろ?」


イーサンは周囲の制止を完全に無視し、生意気にも人差し指で俺の顔を真っ直ぐに指差した。


「そこの小さな島国の猿が、ちょっと力を得たからって調子に乗って神様気取りか? 笑わせるなよ」


その一言が放たれた瞬間、層の空気が物理的に完全に凍りつき、イーサン以外の3人の顔色がサッと青く変わった。


「イーサン!! 言葉を慎めと――」


「うるせえよ! こんな細くてヒョロい日本のガキが、本物の神だなんて絶対にあり得ねえよ!」


怒号が飛び交う中でも、俺は忍装束の奥の笑顔を一切崩さなかった。


青ざめているアメリカ探索者協会のダグラス副会長が、慌てて俺に向かって頭を下げる。


「サ、サク殿……我が国の探索者が、本当にすまない……!」


「いや」


俺は小さく首を横に振った。


「別に気にしていませんから、構いませんよ」


それを見たイーサンが、勝ち誇ったようにさらに鼻で笑う。


「ハッ、なんだ。神様サマが、俺の気迫にビビって手も足も出ないか?」


「いや」


俺はどこまでも穏やかに、静かに答えた。


「――1」


「……あ?」


イーサンが怪訝そうに眉を寄せる。


俺は真っ黒な手袋に包まれた指を、一本だけスッと垂直に立てて見せた。


「何だそれは? 降伏のサインか?」


「……1%だよ」


「は?」


「俺の、魔力の開放率だ」


その瞬間。


世界の法則そのものが一瞬で書き換わったかのように、層全体の空気が完全に変貌した。


あまりの異変に、ジェームズ補佐官が驚愕して両目を見開いた。


武人であるリチャード軍司令官の額からは、滝のような冷や汗がドッと流れ落ちる。


ダグラス副会長の顔色は、恐怖のあまり完全に土気色へと変わる。


だが、状況を理解しようとしないイーサンだけは、ガチガチと歯を鳴らしながらも強がってみせた。


「……っ、それが、どうしたってんだよ……!」


「――2」


ドンッ。


空間全体の重力が数倍に跳ね上がったかのような、凄まじい大気の圧力が彼らを襲った。


周囲の地面の岩盤がミシミシと悲鳴を上げて軋みを上げ、肺が圧迫されて呼吸をすることすら少しだけ苦しくなる。


「――3」


「ぐっ……、あ……」


国家安全保障担当のジェームズ補佐官が、その暴力的な魔圧に耐えかねて、その場に激しく膝をついた。


「――4」


「馬鹿な……、こんな、化け物が……っ」


リチャード軍司令官が、地面に片膝をついて必死に両腕で身体を支える。


「――5」


ダグラス副会長は最早顔面蒼白になり、声にならない悲鳴を上げる。


「やめろ……、頼む、止めてくれ……っ」


それでもイーサンは、大国アメリカのトップ探索者としてのプライドと意地だけで、歯を食いしばって立とうとしていた。


だが、神の格の前では、そんなニンゲンの意地なんてただの紙切れ同然だ。


「――6」


「――7」


「――8」


イーサンの視界がグニャリと醜く歪み、ダンジョンの天井の景色が、まるで底なしの漆黒の闇へと染まっていく。


まるで世界そのものが、自分という存在を完全に消し去るために上空から巨大な怪物となって見下ろしているかのような、絶対的な死の恐怖の感覚。


「――9」


「――10」


「カ……、カハッ……! 息が……っ」


ついに限界を迎えたイーサンは、あまりの圧倒的な苦しさに地面へと無様に転がり落ち、恐怖と酸欠のあまり涙と涎をボロボロと流してのたうち回った。


「――11」


「――12」


俺の目の前では、今やアメリカの権力者たち全員が、地面に無様に転がって這いつくばっている。


……あ、ちょっとだけやりすぎちゃったかな?


でも、自業自得だし仕方ないよね。


我が祖国である日本をあまりにも馬鹿にしすぎだし、俺たちを舐めすぎだ。


「も、もう……、どうか、止めてください……っ!!」


ジェームズ補佐官の命懸けの懇願が響いた、まさにそのタイミングで俺は魔力の解放をピタッと止め、再び極限状態にまで魔力を内側に抑え込んだ。


空間を押し潰していた絶対的な圧力が一瞬で消え去り、4人はまるで地獄の底から生還したかのように、ガハッと大きく口を開けて貪るように新鮮な空気を肺へと吸い込んだ。


激しく肩を上下させて震えている彼らを見下ろしながら、俺は忍装束の奥で、何事もなかったかのように最初と全く変わらない穏やかな笑顔のまま語りかけた。


「……安心してください」


言葉を紡ぐ。


「俺は、アメリカに敵対する気なんて本当にありませんから」


息を呑む彼らの前で、ほんの少しだけ、意地悪に間を置いた。


「でも――」


俺は変わらないにこやかな笑顔のままで、最後にこう付け加えた。


「逆に、貴方たちアメリカは……我が日本に対して、何か敵対したい理由でもあるのかな?」


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よろしくお願いいたします。

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