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ダンジョンで死んだらインプに転生したので、とりあえず盗みから始めてみる  作者: 道雪ちゃん


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空間転移

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

クレアが我が家のリビングに突撃してきたあの嵐のような夜から明けた翌日、俺は朝一番で師匠へ連絡を入れた。


「もしもし、師匠」


『おう、坊主か。……何か新しい動きでもあったか?』


「ええ。昨日の夜、厄災クレア・レミエルが直接我が家にやって来ました」


『……。』


おーい! もしもし師匠! 返事をしてくれ!!


『すまん、坊主。……どうやら私も歳なのか、急に耳が遠くなったようでな。もう一度言ってくれないか?』


「クレア・レミエルが、普通に夕飯のハンバーグを食べに俺の家に来ました」


『……デバイスが壊れたか?』


「壊れていませんし、紛れもない事実なんです。それで、彼女の口から直接、英国政府との関係性を聞くことができました。英国政府は公式には隠蔽していますが、クレアの存在自体は明確に把握しているようです。ただ、あちらの戦力では彼女を管理下に置くことなんて不可能ですし、何よりクレア本人もかなり自由奔放な性格ですから、国家の法で縛ることなんて到底できないのでしょうね」


『……なるほどな。そこまでの重要な情報を直接引き出してくれたか、よく聞いてくれた。本当に助かったぞ、坊主』


「それと、クレア本人から、このイギリス側の事情を日本の政府トップに伝えることの了承はすでに貰っています。水面下での日本と英国の同盟に関しても、彼女は問題ないと言ってくれているので、交渉の席では俺とクレアの名前を遠慮なく使ってください」


『分かった。この件は絹川総理に今すぐ直接伝える。何か進展や動きがあれば、必ずお前にも共有するからな』


「あ、あと、彼女はこれから毎晩うちへ夕飯を食べに来るそうなので、そのうちタイミングを見て師匠のことも我が家の食卓へ呼びますからね」


『……それだけは本当に勘弁してくれよ。胃に穴が空くわ。……じゃあな』


通話が切れたデバイスの画面を見つめながら、俺は笑った。


今度絶対に強制的に呼び出してやろうっと。


そして、あの宣言通り、それから毎日クレアが我が家へ夕飯を食べに本当に来るようになった。


最初は嵐の襲来のようだと全員で頭を抱えていたけれど、実際に生活を共にしてみると、彼女がもたらすものはデメリットばかりではなかった。


大天使クレアは、その身に強大な『雷』と『聖』の属性を宿して扱う。


我が家のゴウキは『雷』の属性を扱うし、傷の回復という点においてはノア子や少女たちも術式を使うのだ。


スキルこそ違えど、世界のトップクラスの厄災から直接その魔力の扱い方を学んだり、戦術に対する考え方を共有できたりすることは、配下たちの成長にとっても非常に素晴らしい経験となっていた。


さらに、消滅させられてから復活したグリムも、自宅のリビングで改めてクレアと直接対話をして顔を合わせた。


最初はどうなることかと見守っていたけれど、グリム自身はあの池袋での戦いで完全に実力負けしたことで、かえってサッパリとした表情を浮かべていた。


クレアの方も、あれはただ単に属性の相性の問題だっただけで、冥王としてのグリムの純粋な実力の高さ自体はしっかりと認めていたようだ。


クレアが俺たちにもたらしてくれた恩恵は、それだけではなかった。


彼女が持つ『幻視』という視る力によって、世界のどこに新しいイレギュラーが発生したか、といった位置情報なども正確に把握することができている。


ちなみに、現在世界に存在している厄災の総数は、変わらず俺を含めて合計で5体のままであり、世界の秩序と均衡は保たれている状態だった。


だが、俺自身は、今すぐにでも仇であるルミナスドラゴンの元へと乗り込みたい気持ちでいっぱいだった。


奴が潜伏している正確な場所はすでにクレアからも詳しく聞いて知っているし、彼女自身、あのドラゴンを討伐する際はぜひとも自分も同行したいという希望を持っていた。


同じ化け物に喰われ、同じ最期を迎えた元ニンゲンとしての因縁の決着をつけるためだ。


俺はその想いを汲み、彼女の同行を正式に許可している。


でも、世界の厄災の数を減らすことは、アメリカに潜む『終わりの王』アストラ・エンドロードとしては、システムの均衡が崩れるという理由から絶対に良しとはしないんだろうな。


あの梅田のフルグル・ベヒモスの時は、俺も世界の秩序ことなんて何も知らなかったからノーカウントということで、何とか許してもらうしかない。


ということで、俺は自分から勝手に行動するのではなく、冒険者協会の師匠のルートを経由して、絹川総理へ「アメリカへと向かいたい」という旨の公式な要望を伝えてもらった。


俺の『空間転移』を使えば、国の許可なんかなくとも勝手にアメリカの地へ侵入することくらい簡単にできてしまうのだけれど、万が一あちらの国で問題が発生した時に、すべて日本国の責任として外交問題に発展してしまっては迷惑がかかるからね。


報告を受けた絹川総理は、秘密裏にアメリカの大統領へと連絡を取って交渉を進めてくれたらしく、驚くほど迅速に、俺のアメリカ入りに対する正式な国家許可が下りたのだった。


手続き上は何の問題もなくなったけれど……。


向こうの地で、無事に事態が進んでくれるといいんだけどなぁ。





アメリカ合衆国――アリゾナ州、グランドキャニオンダンジョン。


渡米するにあたり、事前に絹川総理から「まずは大人しく1層に留まっていてほしい。向こうのニンゲンに会って外交的な話を済ませてから、目的の厄災と会うように。それと、現地のあちらの探索者たちに、君が日本の神であるサクくんだと一発でバレないような格好で行くのが好ましいな」と釘を刺されていた。


とはいえ、そんな都合の良い仮の衣装なんて、普段の俺は持っていない。


ということで急遽日本で用意したのが、全身真っ黒な『忍装束』だった。


頭から顔まで布で綺麗に隠れるし、まだニンゲンだった頃の俺も、『シャドウアサシン』として似たような隠密服を着ていたから馴染みがある。


何より、海外のニンゲンたちにも抜群にウケが良い人気なファッションだしね。


空間転移の術式を発動する前、クレアからは「空間転移の権能は、目標となる遠方のダンジョンそのものに座標を合わせることは簡単にできますけれど、最初から特定の階層をピンポイントで指定して転移するのはとっても難しいのですよ。お姉ちゃんなら軽々と出来ますけれどね。……まぁ、神であるサクも、魔力を細かく練れば出来るはずですよ」と事前に聞いていた。


今回はグリムに日本の守護として別働隊で残ってもらい、ゴウキとノア子たちは俺の自身の影へと潜ませた状態で、いざ『空間転移』を発動する。


実際に魔力を練ってやってみると、脳内の世界地図にピンを刺すような不思議な感覚で、確かに目的地であるアメリカのダンジョン自体にはアクセスできるのだが、そこから狙った層へ潜り込むには精密な魔力の操作が必要だった。


揺れる思考と体内で渦巻く魔力を、ピタッと一点に合わせなければならない。


だけど、現在の俺の魔力値のステータスはEXをも遥かに超えて『ERR』表示なのだ。


なんとかなるでしょ、と位置を感覚でポンと合わせて、俺は一気に空間を『飛んだ』


俺のイメージでは、いつもの『影移動』のように一瞬で到着することを想像していたけれど、実際には世界の壁を越えるためか、暗闇の中を数分ほど突き進んでようやく到着した。


デバイスの画面を確認すると、無事にグランドキャニオンダンジョン1層と画面に表示され、まずは安堵のため息を吐く。


さっそくダンジョン内を進んでいると、道行く現地の外国人探索者たちから「おい見ろよ、ジャパニーズニンジャだ!」と次々に興奮した声を掛けられた。


俺はノリノリで手で忍者のポーズを取ってみせたり、少し英語で気さくに会話を交わしたりして、現地の観光気分を楽しんだ。


これでも一応は神様なので、英語くらいはね。


そうして異国のダンジョンを満喫していると、層の入口の方向から、ただならぬ威圧感を纏った4名のニンゲンが姿を現した。


彼らは周囲の探索者を遠ざけながら、忍装束の俺に向かって真っ直ぐに迷いない足取りで進んでくる。


その様子からして、あれが絹川総理が言っていた「向こうのニンゲン」というやつだな、と察した。


俺はあらかじめ自身の魔力を極限まで内側に抑え込み、布の奥で相手に対してにこやかに微笑みながら待った。


ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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