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やっぱり

「神位生命蘇生儀式魔法『リザレクション』」


 その単語が出た瞬間、アミリアさんの顔色が一気に変わった。

 それは、予想していなかったというものではなく、ある程度察していたような表情だった。


「やっぱり、心当たりはあったんですね」


 正直、俺がこの結論に至った理由も弱いながらある。

 それは単純な疑問からだった。


 ――――なぜ、アミリアさんでなければならなかったのか――――


 もっと別の聖女もいただろうに、もっと捕えやすい聖者がいただろうに、何故わざわざ本拠地の建物の中から、攫うというリスクを犯してまで彼女にこだわるのか。


 それは彼女の立場がどうこうではなく、もはや彼女しか持ちえない価値があったからだろう。

 治療院の権限なんて、もっと簡単に、教皇様にでも相談すれば手に入るだろう。正当な理由こそ必要だろうが、誘拐よりは圧倒的に難易度が低いだろう。


 なら、それだけのリスクを払う価値があるものとは。


 俺にはもう、それしかないように見えた。




「これでも、明るみになっても続けるつもりですか。完成していない今こそ、最後の引き時なんですよ」


 俺は警告を飛ばす。

 正直、この計画には乗り気じゃあない。

 だってそうだろう。下手に術を完成させた結果、俺とアミリアさんが殺され、術は奪われ、何もかもを壊されるような結果が起こり得るほどの大きな計画だ。


 それを決行するのも「ばれないように」という条件を出して、言っていたのだ。


 もう手を出されるほどに確信を持たれてしまっては、もう明るみに出たと同義だろう。


「そうですね。ここまで来たからお話ししますが、実は、儀式自体は理論上、可能な域まで完成しているのですよ」


「えっ......」


 アミリアさんは少し遠くを見る。

 手が届かない月に手を伸ばすように、もう少しで、届くんだと、そう言わんばかりに手を伸ばす。


「あとは魔力と、条件さえ満たせば」


「条件......?」


 条件さえ満たせば、俺が協力すると言えば、彼女はそのリスクを承知で魔法を使うのだろうか。

 彼女は無慈悲に、その魔法をできるほどに覚悟が決まっているのか。


 ――――もう、出来ているだろう。

 そう思い、どう止めようと考えたときに出されたその条件は、俺にとって絶望以外の何物でもなかった。


「満月の夜。つまり、今夜ですよ。ロードさん。私は止まりません」


「......っ」


 やはり、だった。

 俺の言葉は届いていなかった。


 そして、もう言葉を重ねる時間も残っていない、ということだ。


 どうして、と思わざるを得なかった。

 どうして、身に降りかかる災厄を知って、この世界がどうなろうとも知らないと、彼女はただひたすらに顔も知らない父を追えるのだ、と。


「そうですか」


「はい。だから、協力してくれるなら」


 そう言って、アミリアさんは手を差し伸べる。


「協力してくれるなら、今夜、私の部屋に来てください」


聖女だと、誰もが納得するその表情。

だが、俺は即答で返す。





「俺は、行きませんよ」





 結論は決まっていた。協力はしないと。

 いや、協力しようと思えない、が正しいのかもしれない。


 確かに、アミリアさんを助けてやりたい気持ちはいっぱいだ。思いをかなえてやりたいというのもある。

 だが、その思いを打ち消し、マイナスまで振り切ることが出来るほどに、リスクがありありと浮かんでいるのだ。


 俺はアミリアさんを幸せに、そして一緒に俺も幸せになりたいだけであって、極論アミリアさんの父を幸せにしたい感情があるわけではない。

 だから、その父のためにアミリアさんを不幸にすると、そう言っているようなものなのだ。


 そりゃあ、片方にどれだけ感情として願いをかなえたいと重りを置いても、ピクリとも動かない。




「やっぱり、ですか」


 少し寂しそうに、アミリアさんは空を見上げた。

次回2/5日深夜投稿。

少々お待ちください。

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