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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十五章

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歪ー19 




「……そうか、オークションの参加者を」


 ハンスはそう呟くと、ゆっくりと顔を上げた。


 「エルドルンで開かれた公式のオークションなら参加者の記録が残っているはずだ。王都から来ていた貴族を洗い出し、その中に大派閥の人間がいないかを照らし合わせる」


 俺はハンスに同意し頷いた。


 「……そして、その貴族たちが事件の後、王都へ戻ってきているかを調べる。俺がオークションについて尋ねたのも、そのためです。俺はあのオークションに大派閥の貴族が呼ばれていた可能性が高いと思っています」


「なぜ、そう思う?」


 バルドウィン卿の問いに俺は即答する。


 「ヘルメースは王都の大派閥と繋がっていた可能性がある。ロイヴァ・カフカが派閥の貴族たちに資金を提供し、その見返りとして西方の流通を牛耳っていたのなら、あのオークションに招待された貴族たちも、単なる無関係な客ではなかったはずです。彼らがヘルメースと接触していた可能性は十分に考えられる」


 バルドウィンは、しばらく何も言わず腕を組んだまま、俺の言葉を頭の中で整理するように黙り込んでいる。


 やがて、その表情が変わった。


 「……なるほど」


 低く呟いたバルドウィンの声には、先ほどまでとは明らかに違う響きがあった。


 「オークションに参加していた貴族を調べれば、ヘルメースとの繋がりを持つ者が見つかる可能性がある。そう考えているのだな」


 「はい」

 

 バルドウィンはもう一度、深く考え込むように目を伏せた。


 「……確かに、調べる価値はある」


 「そしてオークションに参加していた貴族がこの王都に戻って来ているという事は、あの魔族の襲撃を逃れたということ」


 ハンスは険しい表情のまま、ゆっくりと頷いた。


 「確かにそうだ。エルドルンでは、ほとんどの人間が魔族に殺された。あの惨状から無事に脱出できた者は、決して多くない」


 「もちろん、オークションに参加していたことや、王都へ戻ってきたことだけでは何の証拠にもなりません」


  俺は一呼吸置き続ける。


 「ですが、ロイヴァ・カフカの手引きがあった可能性は否定できない。そしてそこに大派閥との繋がりがあれば……」


 ロイヴァ・カフカと、派閥の貴族が繋がっている可能性。


 それはまだ、根拠の薄い推測に過ぎない。


 だが、決して無視できる話ではない。


 もしその貴族がカフカと繋がっていたのなら、ロイヴァ・カフカが何らかの理由で、その貴族だけを意図的に逃がした可能性もある。


 襲撃を事前に知らされていたのか、それともカフカ側から見逃されるだけの取引があったのか。


 その経緯を調べれば、カフカと大派閥の繋がりに迫る手掛かりになるかもしれない。


 ハンスは机の上に置かれた書類へ視線を落とした。


 「まずは王都に残された記録から、エルドルンのオークションに参加していた貴族を洗い出そう。その中から大派閥の人間を特定し、事件後に王都へ戻ってきた者を調べる」


 俺は付け加える様に続ける。


 「そこに何か不自然な点があれば、さらに詳しく調べればいい」


  ハンスは小さく頷いた。


 「そういうことだ。まずは候補を絞る。話はそれからだな」


 そう言って、ハンスは腕を組み直し、バルドウィンも静かに頷いた。


 部屋に、短い沈黙が落ちる。


 あとは実際に調べてみなければ何も分からない。



 俺は一度、二人の顔を見てから口を開いた。


 「ハンス公。オークションの参加者を調べている間、俺は教会のほうへ行ってみようと思います」


 ハンスが思わず顔を上げる。


 「教会に?」


 「そうです。今回の件で、聖リヴォニア教会がどう動くつもりなのか、直接、確かめておきたい」



 「……教会の動きを探るつもりか?」


 「大派閥と聖リヴォニア教会が繋がっていることは分かっている。しかし、今回のエルドルンの一件を受けても、教会がその姿勢を変えないのか。それとも、何か別の動きを見せるのか。それはきっと評議会の行方を大きく左右するはず」


 ハンスはしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと頷いた。


 「……確かにな、教会がどう動くかは無視できない」


 ハンスは険しい表情を浮かべた。


 「大派閥を支持している教会が、今回の件をどう利用するつもりなのか。それによっては、評議会での議論そのものが大きく変わる可能性がある」


 「……だから、今のうちに同行を探っておいた方が良い」


 「そうだな……。ラック公は聖リヴォニア騎士団のガラハッド公と面識があるのだろう? なら、何か面白い話が聞けるかもしれん」


 「副団長のガラハッドから?」


 「ああ。教会の意向を直接聞いたところで、そう簡単には答えんだろう。だが、騎士団の副団長ともなれば、今回の件について何か聞かされている可能性はある」


 「確かに、それなら何か話を聞けるかもしれない」


 セレナが王都を離れている今、聖リヴォニア騎士団はガラハッドが指揮を執っている。


 その立場なら、教会や大派閥の動きについて何か耳にしていてもおかしくはない。


 「バルドウィン卿、聖リヴォニア騎士団は今も王都に?」


 「ああ。今は教会の宿舎に滞在しているはずだ。騎士団を訪ねるなら、そこへ行けばいい」


 「宿舎か……。ありがとうございます。では、教会へ行った後、騎士団を訪ねてみようと思います」

 

 「頼む。何か分かったことがあれば、こちらにも知らせてくれ」



  聖リヴォニア教会と騎士団。


  まずはそこからだ。


  俺は二人に視線を向けると、小さく頷いた。







 


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