朝日さんは暇です
今日から4章!
6時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
このチャイム程、うれしい音は学校には無いだろう。
なんせ、学校の終わりを告げるチャイムだ。
うれしく無い訳がない。
この時間は、あるものは部活に勤しみ、また、ある者は帰宅、中には恋人との熱いひと時を過ごす人もいるかもしれない。
そんな中、ここでは...
「朝日さん。ほら、行きますよ!」
「いいぜ! 受けてたってやる!」
バン!と二人は机にトランプを並べる。
朝日は7のスリーカード、そして無元は...
ダイヤのフラッシュだった。
「チクショ」
朝日は自分のトランプのヤクを見ながらうなだれる。
「弱いですね〜〜。朝日さんは」
無元はニソニソしながらドヤ顔をした。
そう、二人がしているのはポーカーだ。
今のを含めて7戦、朝日が3勝、無元が4勝だ。
「というわけでジュース一本よろしくお願いしますね」
なおかつ今の戦いは前までとは違い、自販機のジュース一本をかけていたのだ。
「くそっ、奢ればいいんだろ! 奢れば!」
「それじゃあ、何を奢ってもらいますかね。そういえばエナジードリンクが新しく入っていましたね。たしか、1000円の奴が」
「1000円⁈ なんだその飲み物!」
「いや、なんかあったんですよ。ほら、前にドリアンジュースがあった自販機に」
「ああ、あれか。その自販機はネタにでも走ってるのか?とても稼げてるとは思えないんだけど」
朝日は呆れたように言う。
「同感ですね。あっ、それとドリアンジュースは消えましたよ」
「あれ、消えたのか」
「ええ、なんでも面白半分で買った生徒がもれなく1週間謎の腹痛にあうとかで廃止されました」
「やっぱり狂気の飲み物だったか」
朝日は若干顔を引きつらせる。
「そうですね。でも今回はエナジードリンクだから大丈夫です」
無元は満面の笑みで朝日に言う。
どうやら、1000円のよく分からん飲み物を朝日に奢らせようとしているらしい。
「言っとくが150円までだからな奢るの」
それに勘付いた朝日は直ぐ値段上限を決めた。
「えっ! 聞いてませんよ! そんなこと最初に言って無かったじゃ無いですか!」
「なんでも買うとも言ってないよ。てことで150円な」
「えーーー、ずるいですよ!」
無元はプクーと頰を膨らませて怒る。
「無元、その顔を男がやっても何にも良くないからな。むしろ、ウザいだけ」
「まともに受けちゃダメですよ。冗談なんですから。でも、飲みたかったなーー、エナジードリンク」
無元は悲しそうにうなだれる。
「また腹壊すぞ、そんなもん飲んだら。午後ティーにでもしておけ」
「わかりましたよ。じゃあ、午後ティーで」
無元は諦めたようにソファーにもたれかった。
「それで、まだポーカーやるのか?」
朝日はトランプを指差す。
「いや、なんかもう飽きましたよ。もともと、暇つぶしでやってただけですしね。それに、次僕が負けたら奢りがチャラになっちゃうじゃないですか」
「勝ち逃げかよ。まあ、いいけど。俺も飽きたし」
朝日は机のトランプを片づけ始める。
「そういや、無元。今日、立花はどうしたんだ?」
朝日は手をカチャカチャと動かしながら無元に聞く。
今日は立花が来るはずの日なのだ。
「立花さんですか? 多分、立花さんならしばらくこっちには来ませんよ」
「また、なんで。なんかあったのか?」
「それがですね。アビリティーアーツ部に天野女子学院から部活の見学に来ている人がいまして」
「天野女子学院? 天野っていったら超お嬢様学院じゃなかったか?」
「ええ、そうですよ。そこの超能力学科の生徒が見学に来てるんですよ。それも、泊まりがけで」
「そりゃ、凄いな。また、なんでいきなりそんなことになってるんだよ」
「それはですね。要するにお金ですよ。テロ事件の事故処理の所為で学院は財政難ですからね」
「つまり、アビリティーアーツ部を見学させてやるから金をよこせと。まあ、なんと言うか学院の闇を見てる気分だな」
「しょうがないですね。お金を取れるだけの材料がアビリティーアーツ部にいますから」
「機流か」
「機龍ですね」
テロ事件で英雄としてメディアに取り上げられてから機龍の世間での人気はうなぎ登りなのだ。
「なるほど、それで立花は機龍のボディーガードって訳か」
「アビリティーアーツ部は全員参加ですけど立花さんはそう言う目的だと思いますよ」
無元は近くにあった煎餅をバリバリ食べながら答える。
今頃、アビリティーアーツ部では機龍を取り合った熾烈な戦いが繰り広げられている事だろう。
それを想像した朝日は心の底から機龍に同情した。
「ん? まてよ、ならなんでお前が来てるんだ?」
アビリティーアーツ部全員参加なら無元はここに来ないはずなのだ。
「えっ? いや、普通にサボってるだけですよ。そんな、面倒そうな事やりたい訳ないじゃないですか」
さも当たり前の様に無元は言う。
「お前、だんだんいい性格になって来たよな」
「もともと、こんな性格ですよ。僕は」
無元はバリバリと煎餅をかじる。
「にしても、最近暇だな。いつも面倒な事頼みに来る寧々先生もこないし。まか全然、OKなんだけどさ」
「そうですね。テロ事件から2週間くらいたちましたけどミス研は平和そのものでしたね」
そう、学院も始まり、また面倒ごとが舞い込むのだろうと思っていた朝日だったが平和そのものだったのだ。
朝日にとってこれ以上ないうれしいことなのだが、ここまで平和だと逆に怪しいと言うかなんと言うか。
何かありそうか気がしてならないのだ。
朝日がそんなことを密かに思っているとドアからノックの音がした。
「ほら、こう言う話をするとこれだよ」
「秒速フラグ回収ですね」
無元は苦笑いしながら「どうぞー」とノックした人へ言う。
するとガラガラと言う音と共にドアが開いた。
そこには100人に質問したら全員美少女と答えるくらいの美少女が立っていた。
顔立ちはとても綺麗に整い、長く伸びた艶のある髪がさらに美しさを際立たせている。
しかし、何より一番、目を引くのは彼女の着る真っ黒着物だ。
細やかな装飾が施された漆黒の着物は彼女のプロポーションをより強調し、なんとも言えない艶かしさを醸し出していた。
「へ? ...誰?」
朝日は目を丸くしながら呆けたような顔でドアに立つ美少女を眺める。
ノックをしている時点で寧々先生では無いことは分かっていたがまさかまさか着物美人が立っているなんて予想していなかった。
「...ここはミステリー研究部の部室でまちがいないですか?」
目の前に立った着物美人は静かに口を開く。
「ええ、そうですよ。それにしても珍しいですね。貴方がここに来るなんて」
無元は煎餅をバリバリ食べながら着物美人に言った。
「ふふっ、随分と迷いましたよ。わかりにくいんですものこの部室」
着物美人はコロコロと笑いながら部室に入って来た。
「少しだけ用事がありまして、今時間は、おありですか?」
着物美人は首を傾げながら無元に聞く。
「うん、問題ないよ。いま、ちょうど暇だったからね」
「そうですか、では」
着物美人は近くのソファーに座る。
そのやり取りを聞いていた朝日は目をパチクリさせながら隣に座った着物美人をみる。
「なあ、無元。この人知り合いか?」
朝日は隣の着物美人を指差しながら無元に聞く。
「......朝日さん、それ冗談ですよね」
「いや、マジで知らないんだけど」
二人の間にしばしの沈黙が流れる。
「......朝日さん。本当にこの人を知らないんですか?」
「ああ、知らん」
朝日は少なくとも校内を着物でほっつき歩く人など知らなかった。
「ふふっ、私を知らない人がまだいたのは驚きですね」
朝日の隣に座る着物美人は微笑みながら朝日に言う。
「あの、まさか有名人?」
「朝日さん、この人はこの学院の...」
無元は朝日に答えを言おうとするが
「いいですよ、無元さん。私が自分で言いますから」
着物美人がそう言うとソファーから立ち上がり朝日に向き直る。
「どうも、はじめまして、朝日さん。私は本郷真由美と申します。この学院の生徒会長です」
そう言うと着物美人あらため、本郷真由美はぺこりと朝日に頭を下げる。
「ふーん、本郷真由美ね〜。......ん? 今、生徒会長とか言ったか?」
「はい」
二人の間にしばしの沈黙が流れる。
そして、
「は〜〜〜〜〜〜〜〜! 生徒会長⁈」
放課後の校舎に朝日の悲鳴が鳴り響くのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
はい、4章に入りました。
4章は小さな事件みたいなのをいくつか解決するみたいな話にしようかなと思っています。
ちなみに朝日は戦わないと思います。(多分...)




