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朝日さんの面倒ごと  作者: 日の太郎
第3章
18/42

朝日さんに彼女はいません

 開会式が終わり次に行われる棒倒しの場所へ朝日は向かった。

 無元はというと「作戦会議がある」と機龍に連れていかれてしまった。無元は曲がりなりにも上位ランカーだ。作戦の要にでもなるのだろう。

 朝日がそんなことを考えながら歩いていると棒倒しが行われる第2グラウンドに着いた。

 うちの学院の棒倒しは一回戦と二回戦はポイント制となっていて、グラウンドのあちこちに棒が立ち一本倒すごとに10点がもらえる。人のハチマキをとっても点が入り一人5点、大将20点となっている。一回戦では一学年から三学年を合わせた30クラスから得点の多い上位12クラスを選び二回戦はその12クラスから同じように得点の多い上位4クラスを選ぶようになっているが準決勝と決勝だけポイント制ではなく通常の棒倒しと同じルールになる。

 競技も棒倒しだけでは無く決闘戦や障害物走、借り物競走、綱引き、玉入れなどなどかなりの数の競技が三日間かけて行われる。なかでも決闘戦は特に注目されている。というのも決闘戦の結果によっては今年の星王祭の代表がきまるかもしれないからだ。星王祭の代表選出は様々な要因が見られるがその中でも競技祭の決闘戦は比重が大きい。

 それ故にみんな血眼になって決闘戦にでたがるのだ。

 ちなみに朝日は決闘戦には出ない、朝日が出る競技はクラス対抗の棒倒しと2日目に行われる障害物走だけである。


「やっときましたね朝日さん」


 無元が人垣を押しのけて近づいて来る。


「時間どうりだろ。五分前には着いたんだし」


 朝日は腕時計をトントンと叩く。


「まあ、そうですけど。作戦会議終わっちゃいましたよ」

「作戦会議なんてあったのか・・・、知らなかったぞ」

「急遽始めたんですよ。来てなかったのが朝日さんくらいでしたから」

「扱いが酷くない? それで作戦は」

「その作戦なんですがとりあえず朝日さんは4番のポールを守ってください」

「そんなんでいいのか?」

「まあ、この作戦の要は機龍くんや立花さんですからね」

「俺は楽できそうだな」

「見た目だけでもいいので4番のポールを守ってくださいね」

「分かってるよ」


 どうやら朝日のお仕事はポールを守るだけの簡単なものらしい。


「もうあと10分くらいで始まりますから朝日さんも準備しておいてください」


 無元は忙しそうに人垣を分けて何処かに行ってしまった。

 それから程なくしてBクラスは棒倒しが行われる第2グラウンドに移動した。

 相手はCクラスの生徒だ。際立った人はいないが上位ランカーが多いと聞いている。朝日は無元に支持された通り4番ポールの守りに着く。他の人達もどうやら自分の定位置に着いたようだ。審判がそのことを確認すると放送席の方に合図する。


『それでは本日第2グラウンドでの棒倒し二試合目を開始します。対戦クラスはBクラスとCクラスです。それでは始めてください』


 放送席からのアナウンスが終わると同時に棒を倒そうとみんなが走り始める。

 予想通り機龍と立花が中心となって攻め込んでいくらしい。無元は主にサポートに回っていた。

 朝日もその様子を遠巻きに見ながら攻め込んでくるCクラスの生徒を軽くいなしていたが、それも長くは続かず、制限時間残り半分を過ぎたところで相手の数に圧倒されて棒は倒されてしまった。勿論、ハチマキも取られた。

 近くにあった椅子に座りグランドの方を見ると機龍と立花、無元が猛攻を続けていた。三人は今もまだ頑張っているらしい。ほどなくして試合終了のブザーが鳴った。

 Bクラスはみんなの頑張りもありかなりの高得点のようだ。この分だと二回戦進出もあるかもしれない。


「朝日さん! どうですか。なかなかいい戦いだったでしょ」


 無元が額に汗を浮かべながら言う。


「ああ、そうだな。俺もそこそこ頑張ったんだけどな」

「まあ、あの人数だったら仕方ないですよ」


 無元はタオルで汗を拭いながら励ましてくる。


「それよりも朝日さん。この後予定ありますか?」

「いや、今日はもう何も無いよ」

「ならご飯食べに行きましょう。僕お腹すいちゃって」

「それじゃあ、学食に行くか」


 とは言ったものの、やはりみんな考えることは同じらしい。


「結構、人いますね。まだ昼前なのに」

「能力の使用は体力使うからなお腹が空くんだろ」


 学食にはあふれんばかりの人でごった返していた。

 何とか席を確保し、ご飯を食べるころにはそれなりの時間が経過していた。


「無元、お前この後、決闘戦があるんだっけ?間に合うか」

「大丈夫ですよ。午後の2時ですから」

「なら、いいか。でも、大変そうだな」

「まあ、僕が始めたことです」


 無元はそう言いながらうどんをすする。


「なあ、無元」


 朝日は一つ無元に聞いておきたいことがあった。


「なんですか?」

「お前、機龍とはよく一緒にいるよな」

「ええ、まあ。同じ部活ですから。それがどうかしたんですか?」


 無元は不思議そうに聞き返してくる。


「それじゃあよ。機龍が俺の妹と一緒に居るところ見たことあるか?」


 朝日がこの質問を無元にすると明らかに無元の顔が歪んだ。


「その顔はなんかあったな」

「いつ気づいたんですか」

「今日の朝だよ。妹の鈴葉と口喧嘩してなその時にあいつの口から機龍の名前が出て来た」


 朝日は今日の朝にあったことを洗いざらい無元に話す。


「なるほど、バレちゃいましたか」

「言って欲しかったわけじゃないけどなんで隠してたんだ?」

「 それは・・・。やっぱりマズイかな〜〜と」

「別に鈴葉が誰を好きになろうとかまわないんだよ。鈴葉の人生は鈴葉のものだしな」

「それじゃあ、気にしてないんですか?」

「いや、めっちゃ気になる」

「ですよね」

「どんなにムカつく妹でも心配しない兄はいないんだよ」

「まあ、それもそうですか」


 無元は納得したように頷く。


「で、今どんな感じになってるんだ?」

「合同練習の時に色々ありまして・・・。それ以来、機龍くんを相当意識してるみたいでこっちの練習に顔を出す事が多いんですよね。まあ、機龍くんは可愛い後輩レベルにしか思ってないと思いますけど」

「そうか・・・」

「機龍くんは着実にハーレムを形成してますよ。立花さんや機龍妹は当たり前として朝日さんの妹さんに加えて新たに二人増えたしたからね」

「それは羨ましい限りだ」

「一人は機龍くんの中学生からの幼馴染みたいです。もう一人は風紀員の人でなんでも一緒に捜査をしてたら惚れられたみたいです。まあ、なんて言うか朝日さんとは逆ですよね」


 なんだかとても既視感がある話だ。


「朝日さんもいつか彼女ができるといいですね・・・」

「それお前にも当てはまるからな」


 朝日はそう言って残っていたラーメンのスープを飲み干した。


「そうですね、人のこと言える立場じゃ無いです」


 無元はバツが悪そうにそう言って立ち上がる。


「どこかいくのか?」

「ちょっとトイレに行って来ます」


 無元はスタスタとトイレの方に歩いて行った。

 朝日はそれを見送ると椅子の背もたれに寄りかかった。


「・・・」


 朝日は一つのことを思い出していた。

 まだミス研に先輩がいた頃のことを。


「夕香先輩・・・」


 朝日は一人そんなことを呟きながら無元が帰って来るのを待つのであった。

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