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朝日さんの面倒ごと  作者: 日の太郎
第3章
17/42

朝日さんは喧嘩します

 目覚まし時計の音で朝日は起きた。

 夜遅くまでゲームをしていたからか目覚めが悪い。

 なんとか眠気を押し殺して起き上がり準備をするとリビングへと向かう。


「お兄ちゃん遅い!」


 リビングには既に準備万全の鈴葉の姿があった。

 競技用の運動着までもう着ている。


「今日が何の日がわかってる? 競技祭だよ、競技祭! いつまで寝てるのよ!」

「どうりで朝起きるのが辛かったはずだ」

「朝起きるのが辛いのは夜遅くまでゲームなんかやってるからでしょ」


 全くもってその通りなのだが俺には鈴葉の様に競技祭に気合を入れるような思い入れはない。せいぜい「今日は授業が無い日」ぐらいの認識である。


「競技祭は東星学院の生徒がもっとも自分をアピールする場でしょ!」

「そう言うアピールってのは上位ランカーの人達がやることだろ」

「そんなんだからいつまで経っても下位ランカーなんだよ! 私が部活でなんて呼ばれてるか知ってる?」

「知らないけど」

「 『落ちこぼれの妹』よ! 私は努力してここまでやってるのに・・・」


 鈴葉は悔しそうな顔をする。


「そんなこと言われても気にしなければいいだろ」

「私は嫌なの!」

「そう言われてもな・・・」


 朝日はバツが悪くなり鈴葉から顔を晒す。

 

「もういい・・・、私先に行くから」


 鈴葉はそう言うと机から立ち上がりバックを持つ。


「そうか・・・」


 朝日は一言そう返事をした。

 鈴葉はそれを聞くとスタスタと歩いて行きドアの前で立ち止まる。


「機龍先輩が言ってた通り・・・」


 鈴葉がボソッとそんな事を呟いた。


「お前今なんて言った? ちょっと待っ」


 鈴葉は俺が話終わらないうちに出て行ってしまった。


「機龍って・・・」


 今確かに鈴葉は機龍と言った。まさか機龍と交流があったとは。朝日は机の上にあるコーヒーを飲みながら呆然としているのであった。



 学院に着くとムードは競技祭一色だった。


「朝日さ〜〜〜〜ん! こっちですよ〜〜!」


 声のほうを見ると無元が朝日に向かって手を振っていた。


「おお、無元!」


 朝日は無元の方に歩いて行く。

 どうやら今日は教室ではなく外に集合だったらしい。


「時間ギリギリでしたね。何かあったんですか?」

「いやなんもないよ。テレビ見てたら遅れただけ」

「ダメですよ。ちゃんとしないと」

「分かってるよ」


 朝日はそう言うと辺りを見回す。グループになってゲームをしている人もいれば競技祭に向けて準備運動をしている人たちもいる。もっぱらゲームしているのは下位ランカーの人達だろう。


「うちのクラスもいつも通りだな」


 朝日はその光景を見て苦笑いをする。


「そうですね。気合の入れ方に差がありすぎですよ」

「ああ、本当にな」


 競技祭は上位ランカーや中位ランカーの人達にとっては晴れ舞台だがそれ以外の人達には馬鹿みたいに長い競技祭の時間を何とかしのぐイベントなのだ。


「ところで朝日さんも暇つぶしのゲームは持ってきたんですか?」

「あっ、忘れた・・・」

「珍しいですね、朝日さんがゲーム忘れるなんて。本当に何かあったんじゃないですか?」

「たまたま忘れただけだよ。こう言う時もある」


 どうやら自分でも予想外に鈴葉の最後の一言が気になっているらしい。


「朝日く〜〜〜〜ん!」


いきなり後ろから声を掛けられた。振り向くと寧々先生が息を切らして立っていた。


「朝日くん探しましたよ。どこにいたんですか」

「いや、どこにいたも何も今来たところですよ」

「あのですね、ちゃんと集合時間より早めに来るようにいっておいたじゃないですか!」

「すいません」

「もういいですよ。次からはちゃんとしてくださいね」

「了解です。で、俺に何の用ですか?」

「ええ、そのことですが」


 そう言うと先生は手に持っていたアタッシュケースからデバイスを取り出した。


「はい、朝日くん。デバイス点検が終わったので届けに来ました」


 先生は朝日にデバイスを渡す。


「朝日くんのデバイスは他の人より武器の数が多いので点検に手間が勝ったんですからありがたく使ってくださいね!」


 先生はアタッシュケースを閉めると他の生徒にもデバイスを渡しにいってしまった。


「先生も大変そうですね」

「そうだな」


 先生はテキパキと生徒にデバイスを配って歩く。


「そう言えば朝日さん。次に出る種目分かってますか?」

「んっ? 今日って俺出るの?」

「やっぱり・・・」


 無元は呆れたようにため息をつく。


「今日はクラス対抗の棒倒しがあるのでクラス全員参加ですよ」


 初耳だ。


「マジか」

「マジです。僕たちは第2グラウンドの第2試合ですから午前中にはありますよ」

「よりによって棒倒しか」

「しっかりやらないと怪我しますからなるべくちゃんとやってくださいね」

「分かったよ。怪我をしない程度には頑張るよ」


 これから始まる棒倒しに憂鬱な思いを抱きながら東星学院競技祭の開会式に朝日は向かった。


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