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朝日さんの面倒ごと  作者: 日の太郎
第3章
16/42

朝日さん、競技祭ですよ!

 人が寄り付かない郊外。

 廃墟が立ち並ぶこの裏街は世界に能力者が生まれてから至る所に点在している。

 殺人、臓器売買、人身売買、国際法で禁止されている科学実験、人体実験などなど、なんでもありなのがこの街のルール。

 そんな裏の街の一角にある大きな廃墟。

 昔は立派なホテルだったのだろうが今はその見る影もない。

 その廃ホテルのエントランスであっただろう場所で何者かが食事をしている。


「それで計画の方は順調なの?」


 10歳くらいの見た目の少年がお菓子を食べている。


「ええ、問題ありません」


 一人の屈強な男が手に持ったグラスに入ったワインを飲む。


「そっか〜、よかった。ナイトがそう言うなら大丈夫だ」


 少年がテーブルにあるオレンジジュースを飲みながらニコニコする。


「他のみんなも順調?」


 少年が小首を傾げてその場に居る他の人に尋ねた。


「大丈夫よ、ボス。もうあの学院のことは全て調べてあります。後は計画を実行するだけ・・・」

「さすがクイーン、用意がいいね。他のみんなも大丈夫そうかな?」


 少年がそれぞれの顔を見る。


「それじゃあ、予定通り東星学院競技祭の3日目に決行と言うことで。みんな準備しておいてね」


 少年の声に全員が頷く。

 それを見た少年は嬉しそうに笑うのであった。



 あの盗撮事件からしばらく時間が経った。

 あれからと言うもの特に目立ったこともなく暇な日々が続いている。


「おい、無元!そのアイテムは俺が狙ってたやつだぞ」

「朝日さん。こう言うのは早い者勝ちですよ」


 朝日と無元はそんな平穏な日々をテレビゲームをやりながら過ごしていた。


「おいおい、勘弁してくれよ。俺このゲーム苦手なんだよ」


 朝日はコントローラーをカチャカチャと触りながら自分のキャラを動かす。


「大丈夫ですよ。朝日さんが死んでも僕がいますから」

「馬鹿! 俺が楽しくないんだよ」


 朝日は自分のキャラを見ながら慎重に動かしていくが敵の流れ弾に当たってゲームオーバーの字が出る。


「ダメだ」


 朝日はコントローラーを投げ出し床に仰向けに寝る。


「後は僕に任せてください」


 無元はそう言うと器用に自分のキャラを動かしてステージをクリアしていく。

 朝日がそれを不貞腐れたように見ていると


「あなた達いつまでゲームしてるのよ・・・」


 ソファーに座りながらつまらなさそうにゲームを見ていた立花がブスッとした顔をしている。


「久しぶりに来たのにゲームばっかり、他にする事ないの?」


 立花が呆れたように言う。


「そう言われてもな。もともとこれと言った活動がある部活じゃないから」

「前は事件の捜査をしてたじゃない」

「先生に頼まれたからね」


 朝日は放り投げたコントローラーを拾い上げ、適当に机にしまう。


「これだと私居ても居なくても変わらないじゃない」

「別に名前を置いてくれるだけでもいいんだけど」

「嫌よ、せっかく入ったんだからちゃんと行かなきゃダメじゃない!」


 立花がさも当たり前のように言う。

 真面目な奴だ。


「終わりました〜」


 ゲームをクリアしたのか無元が話に入ってくる。


「無元、あなたも何か活動したいとは思わないの」


 立花が今度は無元に聞く。

 

 しかし


「まあ、この部活はこれが平常運転ですから」


 そう言いながら無元はドスッとソファーに座る。

 この部室では立花の意見のほうが少数派なのだ。


「慌てなくても直ぐ能力競技祭が始まります。嫌でも忙しくなるよ」

「それもそうね。今年の競技祭は私も気合いをいれなきゃ!」

「機龍くんも居ますしね。決闘戦は白熱しそうです」


 無元がデバイスで競技祭のスケジュールを確認する。


「あら? 無元、あなたなんでデバイスを持ってるの? 今日は競技祭に向けてのデバイス一斉点検の日だから機械科に預けているはずじゃ・・・」


 立花が無元のデバイスを指差す。


「ああ、これですか。これはプライベート用のデバイスですよ。僕は学校用とプライベート用で分けてるんです」

「へー、いいわねそれ。デバイス無いと不便だし」

「ええ、便利ですよ。そういえば朝日さんはデバイス預けたんですか?」

「預けたよ。あれ預け無いと競技祭出れないからな」

「やる気あるんですか?」


 無元が意外そうに言う。


「やる気があるないじゃなくて競技祭は出ないと成績に響くんだよ。俺も留年は避けたい」

「そう言う事ですか」


 無元が納得したように頷く。


「それに最近デバイス内の専用武器使ってなかったし、ちょうどいいから点検してもらおうと思って」

「・・・ちょっと待って」


 立花がソファーからガバッと立ち上がった。


「朝日、あなた自分専用の武器を持ってるの!」


 立花が驚くのも無理はない。

 通常、学生は学院側が用意した貸し出し用の武器を使うことになっているが上位ランカーになると自分の能力にあった専用武器が学院から支給される。故に上位ランカーの持つ武器は強力なものが多く学生の憧れでもあるのだ。


「まあね」

「まあねって・・・。あなた下位ランカーでしょ?!」

「上位ランカーじゃなくても専用武器を持ってるやつはいるだろ。親のやつを譲り受けたり、金持ちが持ってたりな」

「そうだけど・・・、下位ランカーで持ってる人は聞いたことなかったから」


 立花はソファーに再び座ると腕組みをする。


「じゃあ、あんたも親から譲り受けたの」

「親からじゃない。先輩からだよ」

「先輩?」

「そう、使わないからってな」

「へー、どんな武器?」

「鉄球だよ。ゴルフボールくらいの。それが10個」

「てっきゅー?」


 立花が不思議そうに顔を傾げる。


「ねえ、それどうやって戦うの?」

「さあ?」

「本人も使えない専用武器とは・・・」


 立花がまた呆れたように言う。


「まあ、いいや。私、翼と約束あるから帰るね」


 立花はそう言うと荷物をまとめ始める。

 そしてほどなくして部室から出て行った。

 そんな光景を見ていた二人は


「朝日さん、僕たちも帰りますか」

「そうだな」


 満場一致で帰宅を選択した。

 そして朝日と無元も荷物をまとめてミス研の部室を後にする。


「競技祭は明後日ですね」

「俺は障害物走とクラス対抗の棒倒ししか出ないから暇だよ」

「本当に暇そうですね」

「友達とゲームでもしてるさ。三日間授業が無いと思えばテンション上がるしな」

「・・・朝日さんは本当にブレないですね」

「まあね」


 俺は無元に向けてニッと笑顔を見せる。

 その様子を見た無元は小さくため息を吐いた。

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