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朝日さんの面倒ごと  作者: 日の太郎
第2章
15/42

朝日さんは事件を解決します

 時刻は午前5時。

 俺が一人で張り込みを始めて約二時間。いっこうに犯人は現れない。

 これは絶対に真夜中の12時から始める必要は無かった。学院内で警備員の監視が厳しい12時から4時くらいの間に犯人が来るはずないのだ。何が悲しくて二時間も更衣室を見ていなくてはいけないのか。逆にこっちが覗きをしている気分になってくる。


 俺の後ろでは先生と衛藤が気持ちよさそうに寝ている。

 

 一時間前に衛藤を起こして順番を変わってもらおうと思ったがあれを起こすのはやはり気が引けた。

 俺は眠い目をこすりながら更衣室を見張る。

 今までは時間が早すぎて犯人が来ないと思っていたがここからの時間は違う。おそらく犯人はこの時間を狙ってくるはずだ。

 

 これからが勝負だ。

 

 俺は一層気合いを入れて張り込みをする。

 それから程なく怪しい人物が更衣室の近くに現れた。

 そいつはキョロキョロと辺りを見回して誰もいないことを確認すると更衣室のドアの鍵を開け中に入った。


「来た!」


 声をあげて俺は言った。

 初めて張り込みをしていて良かったと思った。

 俺は早速後ろでは寝ている衛藤を起こす。


「おい、衛藤!おきろ!」

「うぅ〜〜」


 衛藤は唸りながら俺の手を払う。


「おい、衛藤!」

「むにゃ・・・、なに〜?」

「犯人が現れたぞ!」

「犯人・・・、犯人!」


 がばっと衛藤が起き上がる。


「えっ、でも犯人現れるの早くない! まだ、3時くらいじゃ」

「いやいや、もう6時近いぞ」

「私・・・。ずっと寝てたの・・・」

「ああ」

「ごめん・・・」


 そう言いながら衛藤が頭を下げる。


「いやいいよ。俺もわざわざ起こさなかったんだし。その分犯人確保をしてもらおうと思って」

「分かったわ。全力で捕まえる!」


 衛藤が完全に目が覚めたところで中庭を突っ切り第2号館に入る。


「ねえ、先生はいいの?」

「そういえばいたな」

「忘れてたの!」

「あんまり役に立たなかったし。あのままでいいだろ」

「なんか先生がちょっと可哀想だけど。今は犯人が先ね」


 衛藤は静かに更衣室の前に行く。

 俺もその後ろから静かに近づく。


「それじゃあ。いくわよ・・・」

「ああ」


 俺が返事したのを合図にバンと更衣室のドアを開ける。


「風紀委員よ!盗撮の現行犯で逮捕します!」


 更衣室に入り衛藤が叫ぶ。

 更衣室の中では犯人と思われる奴が驚いたようにそこに立っていた。

 今まさにカメラのバッテリーを変えようとしていたらしい。


「なっ!」


 犯人がその場で固まる。


「あなたが盗撮犯ね。一緒に風紀委員室に来てもらうわ。抵抗するなら力ずくでも風紀委員室に連れていくからね」

「な、なんで風紀委員がここにいるんだよ。この件に関しては関わらないはずだろ」


 犯人はその場で頭を抱える。


「まあ、あれだけ大きく動いてたら目をつけられるだろ・・・。ん? まて風紀委員がこの件に関して関わらないってなんだよ」


 いくら盗撮犯をつかまえるのが手柄にならないからってここまで大きく動いてたら嫌でも捜査しないと風紀委員の沽券にかかわる。

 それなのに風紀委員はまったく捜査しないしそればかりか一般の生徒は盗撮が行われていることをあまり知らない。俺も寧々先生に聞くまで知らなかった。


「もしかして風紀委員の中に協力者でもいたのか?」


 そうとしか考えられなかった。


「ちょっと待って! 朝日、それは風紀委員の中に裏切り者がいるってこと!」

「それは目の前にいるこいつに聞けばわかるだろ」


 俺は犯人を指差す。


「い、言わないからな言ったら俺がヤバいんだ!」


 まあそりゃ言わないか。

 そんな簡単に口を割るわけがない。

 まあその辺は拘束した後ゆっくり尋問すればいいと思っていたのだが・・・


「おい、お前! どう言うことだ。今ここで話せ! 話さないならここで矢で串刺しにしてやる!」


 衛藤が犯人の顔面でデバイスから出した矢を構える。本当に矢を放ちそうな雰囲気だ。


「ひっ!」


 犯人が怯えたように後ろの壁まで下がる。


「衛藤、落ち着け」

「朝日はだまってて!」


 衛藤がこうなるのも分かる。

 自分が誇りを感じている風紀委員会が犯罪に関わっているかもしれないと分かったら正気など保っていられないだろう。


「言って!! 言わないと本当に串刺しにするわよ」

「言う! 言うから辞めてくれ!!」


 犯罪が震えた声で言った。

 衛藤の剣幕に気圧されたらしい。


「俺はもともと一人で盗撮してたんだよ。一人でこそこそやって自分の欲求を満たせればよかったんだ。だけと盗撮中にある風紀委員に見つかって。そしたらそいつが盗撮を見逃す代わりに撮った写真を売ってその利益の7割を持ってこいって言われたんだ。それからの盗撮は難しくなかったよ。そいつが怪しまれないように手配してくれたから」

「誰! その風紀委員は!」


 衛藤が矢に更に力を込めて言う。


「お、お願いだ!それだけは見逃してくれ! 殺されちゃうよ!」


犯人が衛藤に懇願する。


「言って! 早く!」


 弓の弦が切れるんじゃないかと思うくらい矢を引きしぼる。それでも犯人は風紀委員の名前を言わずそのうちブクブクと泡を吹いて気絶してしまった。この緊張感に耐えられなかったらしい。

 しかし、衛藤は犯人が気絶しても矢を引きしぼるのを辞めない。


「おい、衛藤。そいつもう気絶してるぜ。それ以上やったらただの人殺しだ」


 衛藤はハッとなったように矢を引きしぼるのを辞めた。


「ご、ごめん」

「いや、分かるよ。まさか風紀委員がね・・・。俺でも失望感あるよ」


 俺がこれだけの失望感を感じているなら衛藤が感じている失望感はどれほどのものなのか。想像もつかない。


「とにかく犯人は捕まえた。後のことはお前の仕事だ」

「ええ、分かってるわ。どんな手を使ってでも協力者の名前を吐かせる」

「あんまり非人道的なのは辞めろよ」

「了承しかねるわね。今の私何するかわからないから・・・」


 衛藤が冷ややかな目で犯人を見る。


「それで? こいつどこに持っていくんだ。風紀委員室に持っていくのは不味そうだぞ」

「そうね、とりあえず極堂先生に掛け合ってみる。あの人だったらなんとかしてくれると思う」

「それがいいな」


 俺は犯人を自分の能力で拘束する。

 こうして今回の盗撮事件はひとまず幕を下ろした。 犯人は2年B組の深川と言う生徒だと分かった。今回は風紀委員ではなく先生が尋問したそうだがそいつは最後まで口を割ること無く学院での拘束期間が過ぎ規則に従い強制退学となった。


「朝日さん、なかなか面白そうなことしてたんですね。僕もそっちがよかったです」


 無元がミス研の部室にあるソファーにうなだれる。


「馬鹿野郎!面白いわけないだろ!」


 もう盗撮事件を捜査してくれと言われても絶対にやらない。あの張り込みをした日は授業中に寝てしまい大目玉を食らったのだ。


「もう二度とやらない」

「相当きつかったんですね。でも途中で会った風紀委員の女子と一緒に捜査してたんですよね。それはもう恋愛フラグ立ってるんじゃないですか」


 無元が口元をニソニソさせながらこちらを見る。


「そんな簡単に恋愛フラグが立ったらそこら辺にいる男が全て彼女持ちだよ。だいたいあれからあいつとは一度も会ってないしな」


 あの盗撮事件から1週間ほど経ったが衛藤とは一度も会っていないし連絡もしていない。彼女は彼女なりにいろいろやることがあるのだろう。おもに風紀委員内の裏切り者探しとか。


「そうなんですか。いい展開だと思ったんですけどね〜」


 無元が残念そうに天井を見上げる。


「そういえば無元。お前合同練習はどうだったんだよ」


 ふと気になって聞いてみた。


「ああ、聞きたいですか」

「まあ、そりゃ。こっちも活動報告したわけだし」

「まあ、そうですね。いろいろ大変でしたよ。途中までは普通にキツイ合同練習だったんですけど・・・。極星学院の辻宮くんがいろいろ機龍くんに絡んできて・・・」

「辻宮って前の星王祭を優勝したって言う」

「ええ、そうです。辻宮桐人、能力者なら誰でも知ってる名前ですよね。そいつが機龍の実力を知りたいって言って決闘をすることになったんですけどそれがまあ二人でやればいいのにチーム戦がいいとか言って僕と立花さんと機龍妹が選ばれたんですよ・・・」


 無元の虚な目をしながらそんなことを言う。


「そっちも大変だったんだな。同情するよ。で、お前は勝ったのか?」

「負けましたよ、向こうのナンバー2に勝てるわけないでしょ! こっちは戦う気無かったのに戦えってほうが酷じゃないですか」


 合同練習はいろんな意味できつかったらしい。

 だがもう過ぎ去ったことだ。合同練習も盗撮犯探しも終わった事だし今くらいゆっくりしてもバチは当たらないはずだ。


「それじゃあ今日はお前の慰め会ってことで寧々先生に焼肉でも奢ってもらうか」


 張り込みの時に眠りこけていたのだ。

 これくらい言っても文句は言われないはずだ。


「それはいいですね! 早速行きましょう!」


 無元がガバッと立ち上がる。


「ああ、行くか!」


 その日、俺らは「給料が〜」と言う先生を引っ張って焼肉を食べに言った。なぜか立花や機龍、機龍妹がいたが焼肉はそれなりに美味しかった。

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