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朝日さんの面倒ごと  作者: 日の太郎
第2章
12/42

朝日さんは捜査を開始します

 朝日は学院長室に向かっていた。

 無元・立花と別れた後、第2グラウンドの女子更衣室に着いたのだが不安になってきた。この状況を誰かに見られたらやばいんじゃないかと。さっきまでなら無元や立花がいたから良かった。二人はこの学院でも名が知れてるし特に立花は女性の上に学院順位も3位。彼女が盗撮犯の捜査だと言えば誰も疑わないだろう。だがどうだろう?俺が一人、女子更衣室で捜査をているのを誰かに見られたとしたら。まず真っ先に俺が犯人扱いされて風紀委員に差し出されることだろう。捜査だと言ったって誰も信じない事くらい予想がつく。そう言うわけで俺は学院長室に向かっている。学院長に頼んで直々に許可書をもらおうと言う魂胆だ。それがあれば捜査中に誰かに見られても大丈夫だ。しばらく歩くと学院長室に着いた。ドアをノックすると中から「どうぞ」と言う声が聞こえた。俺は「失礼します」と言いながら中に入る。


「なんだお前か。何の用だ?」


 いつも通り学院長室には学院長の仙崎薫が座っていた。


「言っておくが学院順位はあれ以上あげられんぞ」

「別に学院順位のことじゃありませんよ。むしろあれだけのことでこんなに順位を上げてくれて感謝してます」


 俺はこの間の風切の一件で学院長に報酬として順位を上げてもらったのだ。


「そうか。私はてっきり不満があるのかと思ったよ。それなら何でここに?」


 学院長は机に頬杖をつきながら俺に言った。


「この学院での捜査許可書を発行してして貰えないかなと」

「なんでそんなものが必要なんだ?あれは風紀委員が発行するやつだろ」


 そう言われたので俺は学院長に今までの経緯を話した。


「なるほどね。確かにお前じゃ疑われるだろうな」


 学院長は納得したように頷く。


「そう言わけで許可書がほしいんですが」


 学院長は少し考えると


「普通なら断る所だが、まあいいだろう。分かった、発行しよう。」


 そう言うと机の中から紙を取り出しそこにサラサラと何かを書いていく。


「ほら、これが許可書だ」


 学院長がその紙を差し出してくる。俺はそれを受け取り目を通す。確かに捜査の許可書みたいだ。


「ありがとうございます」

「構わんよ....。それよりさっきの話を聞いた感じだとお前、機龍とは上手くいかなかったみたいだな」


 学院長がニヤニヤと笑う。


「馬が合わなかったんですよ」

「分かるよ、お前と機龍は正反対だ。上手くいくはずがない。機龍は例えるなら物語の主役だ。あいつは歴史に名を残す男だよ。そう言う運命の下で生きてる。だけどお前はパッとしないよな」


 俺は学院長の話を聞く。


「物語では必ず主役のことが書かれる。だからそれ以外に物語はないんじゃ無いかと思ってしまうが....、そんなことない。主役以外にもたくさんの物語がある。その中にはパッとしなくて目立たなくても主役以上の役割を持っている奴も居るかもな」


 学院長はそう言うとティーカップの紅茶を飲んだ。


「学院長。その話はもう何度も聞いてますよ。そのつど言ってますけど俺はその辺にいる一般人となんら変わりないですよ」


 そう、似たような話を学院長から覚えてる限り5回は聞いている。その度にこう言っているのだが


「もちろん、お前はそこら辺の一般人と変わらんよ。だけど、面白さはお前が上さ。だから私はお前に興味がある。機龍よりもね」

「俺なんかに興味を持ってもなんも面白くないと思いますけどね」


 俺は踵を返してドアの方に向かう。


「朝日。その許可書大事に使えよ」

「ええ、ありがとうございました」


 そう言って俺は学院長室を出て今度こそ第2グラウンドの女子更衣室に向かった。

 女子更衣室に着くとまずあらかじめ借りておいた鍵でドアをあける。中にはもちろん誰もいなかった。うちの学院はお金持ちと言うだけありこんなに広くなくていいだろと言うほど更衣室が大きい。隠しカメラを見つけるのは大変そうだ。

 とりあえずカメラを隠していそうなところを中心に探していく。途中、見てはいけないものも見てしまったが完全スルーして探す。(女物の下着とか水着とか...)黙々と探しているとやっと一つ目を見つけた。出口から一番奥のロッカーの上に小指ほどの大きさのカメラがテープで固定されていた。それを慎重に剥がしてカメラを回収する。


「マジであったよ。ひどいことする奴もいるもんだな」


 そんなことを小さく呟いていると


「動くな!」


 後ろからいきなり声がした。俺は驚いて後ろを振り向くとそこには風紀委員の腕章を付けた黒髪の長い綺麗な女の子が自分の武器である弓矢を引きながら立っていた。


「盗撮犯だな!現行犯で逮捕だ!」


 その子はさらに弓矢を引きそう言う。


「まてまて、俺は盗撮犯じゃない」


 俺は慌てて否定する。


「嘘を言うな!その手に持つカメラが動かぬ証拠だろ!」


そう言って弓矢でカメラの方を指す。


「違う違う!これをみろこれを!」


 俺は慌ててさっき貰った捜査許可書をその子に見せる。その子は警戒しながら俺に近づいて許可書をみる。


「捜査...許可書?ほ、本物⁈」


 その子は弓矢をデバイスにしまい俺の手から許可書をひったくりまじまじと許可書を見る。


「ほ、本物だ...。じ、じゃあ、あなたは盗撮犯じゃないの?」

「ああ」


 そう言って許可書を返してもらう。こんなに直ぐにこの許可書を使うことになるとわ思わなかった。貰ってよかったと心から思った。


「ごめん、疑って。明らかに怪しかったから...」


 そりゃ怪しいだろ。男が一人、女子更衣室でゴソゴソやってたら誰だって疑う。俺だって疑う。


「まあいいよ。あんたは仕事しただけだろ」


 この人は風紀委員として当然のことをしただけだ。俺が怒る資格はない。


「いや、だけど...。無実の人に武器を向けるのはいけない。ごめんなさい」


 その子は深々と頭を下げる。


「いや、いいよ。そこまでしなくて」


 一生懸命に謝ってくるその子を宥めながらなんとかその場を収める。そんなこんなで話を進めて....。


「私の名前は衛藤香奈美だ。よろしく」

「俺は大空朝日だ。よろしく」


 何とかお互いに自己紹介を済ませることができた。


「私は風紀委員としてこの辺の見回りをしていたんだがお前はなんで風紀委員でもないのに盗撮犯の捜査なんてしてたんだ?」

「風紀委員の人手が足りないらしくてな。それで駆り出された」

「そうだったのか...。風紀委員の手伝いをしている人を私は盗撮犯と疑ってしまったのか。本物にすまない」

「それは、もういいよ」


 俺と衛藤はそんなことを話しながら女子更衣室にあるベンチに座る。


「それじゃあ、その手に持っているカメラは...」

「ああ、ロッカーの上にあった隠しカメラだよ」


 カメラをひらひらと衛藤に見せる。


「これが...」

「まだ探せばあると思うぜ」


 俺は女子更衣室を見渡す。


「本当にひどいわね。風紀委員でも問題視されてるんだけど...。この件にみんなあまり興味ないの」

「どうして?」

「もっと大きな案件にみんなつきたがるの。能力絡みの事件とかね。そっちの方が点も稼げるし名も売れるから。わざわざ面倒で大変な盗撮犯探しなんてしないのよ。派手な事件とかの方が解決した時にかっこいいしね」

「おいおい、風紀委員は学院の治安維持機関だろ。何だよその売名行為と点数稼ぎは」


 風紀委員の仕事は能力絡みの事件に関わるために危険がつきものだ。そのため風紀委員になると特別加点があり犯人を捕まえればその分、成績や学院順位が上がるのだ。それを目的に風紀委員に入る奴も最近は多いらしい。


「ええ、面目無いわ。最近じゃあ点数欲しさにそこまで悪いことしてない人を重罪にでっち上げて捕まえる人もいるって聞くわ」

「もはや職権乱用だな」

「職権乱用か...。確かにそうね。今の風紀委員はどこかおかしい」


 考え込んだように衛藤が俯く。


「昔はあんなんじゃなかったの。先輩達が辞めてから変わっちゃった」

「そんなもんさ、その先輩方が優秀だったらなおさらね」


 優秀な頭が消えれば統率がなくなるのは当たり前だ。


「その通りよ。先輩方は優秀だったわ。点数のことなんて二の次でみんなが安全に学校生活が出来るように活動してた。特に笹神先輩はみんな尊敬してたの」

「笹神?」


 俺はその名前に聞き覚えがあったら。


「笹神ってたしかこの前卒業した前風紀委員長だよな」

「そうよ」


 前年度の風紀委員長、笹神叶は学院では有名な人だ。三年前の東星学院襲撃事件で英雄的活躍をしたことで知られている。


「笹神先輩は常に人のために動きなさいと言っていたわ。目先の利益に取り憑かれて暴走しちゃいけないって」


 衛藤は懐かしむように言う。余程、慕っていた先輩なのだろう。


「立派な人だな」

「そうでしょ」


 しばしばの沈黙が流れる。


「ごめん、こんな話どうでもいいよね」


 衛藤はベンチから立ち上がり俺の方を向く。


「朝日、あなたこれからどうするの?」

「俺はもうちょっとここで隠しカメラを探していくよ」


 俺もベンチから立ち上がり更衣室を見渡す。


「そう.....。ねえ、朝日。私も盗撮犯探し手伝ってもいい?」

「えっ!どうして?」

「風紀委員として盗撮犯は見過ごせないし他の風紀委員に任せても多分進まないだろうからもう私とあなたで犯人を捕まえた方が早いと思って」

「それは、別に構わないが....。普通、俺が風紀委員を手伝うほうじゃないか?」

「細かいことはいいの!さあ、早く残りのカメラを探しましょ」


 衛藤はテキパキとカメラを探し始める。確かに細かいことはどうでもいいだろう。考えてみれば仲間が増えたのだ。これで少しは捜査も楽になる。


「朝日〜〜。こっちに一個あったわよ〜〜」


 もう一個見つけたらしい。衛藤はなかなか優秀なようだ。そんなことを考えながら朝日は再びカメラを探し始めるのだった。


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