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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第六章 豊臣家の試練、家康は胃薬片手に政務をこなす
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家康は縁談地獄、西郡殿はメンタル限界突破。三成は薬膳茶の調合にハマる

文禄四年 四月上旬。

春の気配が、江戸にもようやく届き始めた頃。


徳川家康は、未だ上方に滞在していた。

その家康の身の回りを案じ、伏見に残る西郡殿が「世話役に」と若い女たちを何人か差し向けたらしい。


しかし、当の家康は「中々に良き女たちじゃ。」と、そう評しただけ。

しかも、その場で全員の縁組を決めてしまった。


「違う!!そうじゃない!!!」


西郡殿は慌てたが、時すでに遅し。縁談はすべて成立済みである。


「まぁ……そう上手くはいかんもんやねぇ。」


長々と綴られた愚痴の文を読み終え、旭はため息をついた。


その文の長さたるや、ほぼ戦書。

受け取った於孝が、片付けに難儀するほどである。


「いっそのこと、大殿の寝所に女を送り込めばよろしいのに。」


茶々がさらっと言う。


「お茶々やないんやから。」


旭が首を横に振る。その横で、阿茶局と於孝は遠い目をしていた。


「……あれは酷かった……。」


「井伊様がお可哀想で……。」


(※前科あり)


「女を寝所に送る、とは……?」


新しい茶を運んできた日向昌康が首を傾げる。


「昌康、止めぇ。聞かんでええ。」


旭が即座に遮る。


「疲れるだけや。」


だが、茶々は止まらない。


「私、万次郎を身籠る前にね——」


「やめてください。」


阿茶局と於孝が、全力阻止した。


結果、昌康は詳細を聞けず終い。


………だったのだが、後日。

まさかの本人(井伊直政)に直接聞きに行き、無事、トラウマを掘り返すことに成功してしまった。

(※これはまた別の話である)


その頃、京・聚楽第。


秀次は、秀保家臣の藤堂高虎(とうどうたかとら)から一つの相談を受けていた。


「秀保に、正室をとな?」


「はい。若様も十三。頃合いかと。」


秀次は腕を組み、しばし考える。


「……まだ早い、と言いたいところじゃが。」


徳川秀忠の婚儀が脳裏をよぎる。


「……分かった。北政所様と若政所様に伺いを立てよう。」


「ありがとうございます。」


高虎は頭を下げた。


「して、秀保の様子はどうじゃ。」


「つつがなく。領地を巡り、民の声を直に聞いておられます。」


「……そうか。」


秀次は、ふっと目を伏せる。


「叔父上がご存命であれば……さぞお喜びになっただろうな。」


秀長の姿が、脳裏に浮かぶ。


「……儂は、秀弘様の件で手一杯じゃ。秀保のことは、其方らに任せきりでな。」


「それが某の務めにございます。」


高虎は即答し、秀次は小さく笑う。


「……頼もしいの。これからも、秀保を頼む。」


「はっ。」


秀保の正室については、秀次の働きかけにより、寧々を中心に、諸大名家・公家を巻き込んだ選定が進められることとなった。


候補は、公家の姫君、あるいは有力大名家の娘。

家格と年齢、そして政治的均衡が重視される。


最終的な調整には、五人の衆の一角である、家康も加わり、秀保の婚姻は、豊臣政権全体の思惑が交錯する案件へと変わっていった。


この一件をきっかけに、各家からの縁組相談は、徐々に増え始める。


——まだ、この時は誰も気づいていなかった。


それが後に、家康を悩ませる、“縁談地獄”の始まりであることを。


***


「近頃、儂の元に縁組の相談が後を絶たぬ……。」


徳川家康は、深くため息をついた。その横で、西郡殿は思った。


(また始まった……。)


そう思いつつも、薬膳茶を淹れる手は止めない。


「石田治部様からの差し入れにございまする。」


「うむ。」


顔を近付け、そっと香りを嗅ぐ。


「……あやつ、新しく調合したな。」


くく、と喉の奥で笑う。


「誰に試したのやら……。」


——福島正則、加藤清正、大谷吉継。いつもの顔ぶれが、脳裏をよぎる。

そして、湯呑みを一気に傾けた。


何故、家康の所に来るのか……原因は明白である。


秀保の婚姻をまとめたことで、「この人に頼めばなんとかなる」と認識されてしまったのである。


結果……縁談が全部家康に来るように…。


「はぁぁ……何故じゃ……。」


「皆様、殿を頼りにしておられるのですよ。」


「それは分かる……が……!」


家康は薬膳茶のお代わりを促す。


(飲めば良い、というものでは……。)


溜め息を吐きつつも、空の湯呑みを受け取った。


「元は、太閤殿下が整えられた縁組ぞ?」


(ああ……今日も長そう……。)


西郡殿は静かに目を閉じた。


「縁談だけではなく……毛利も毛利でうるさい……。

やれ『土豪上がりが』だの、『今の地位は奥方のお陰か』だの……。」


はあ……と重い溜め息。


「名門様の嫌味は分からぬのぉ……。」


(……助けて、御台様……。)


西郡殿は、江戸にいる主人に心の中で助けを求めた。


そして、遂に……。


西郡殿から届いた文を読んだ旭は、静かに呟いた。


「……限界やね。」


手紙の要約は、こうである。


『もう無理。助けて。』


今回の文も戦書顔負けである。


「私が上方に行くのは、異論ないけど……。」


文を於孝に差し出しながら、呟く。


「まだ若い、お賢一人にここを任せるのはねぇ。」


「でしたら、私が若御台様のお側に……。」


阿茶局がすかさず名乗り出た。


「そう?……でも、また阿茶局が……。」


「では、御台様。私も江戸にて、若御台様と阿茶様の補佐を。」


文の片付けに悪戦苦闘している於孝も名乗り出る。


「そうね。それなら、安心ね。」


しかし、ここで阿茶局が待ったをかける。


旭に付く女房役は誰にするのか。


三人は腕を組んで考えていると、於孝が閃いたらしい。


「……箕輪様は?」


「お茶々?……まぁ、あの子連れてったら……おもろい事にはなりそうよね。」


阿茶局も同意したので、旭は静かに立ち上がる。


「井伊へ使いを。」


「はっ!」


そして、戦場は上方へと移る……。

徳川家康と石田三成。

何故か漢方のことで、うっかり意気投合。

今は"薬膳友達"という妙な友情を築いてます(笑)


因みに、臨床試験は豊臣家臣団の皆様。

全員、気付かぬ間に実験台にされてます(笑)

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