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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第六章 豊臣家の試練、家康は胃薬片手に政務をこなす
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天下人、花見でやらかしたので、家族総出で締め上げます

空が、茜色に染まり始めた頃。

宴は、終盤へと差し掛かっていた。


上座の方で、がたん、と音がした。

酔った秀吉が、ふらりと立ち上がったのだ。


「殿下!」


寧々と竜子が、慌てて両脇から支える。


「みんなぁ〜!!」


秀吉は構わず、声を張り上げると、宴席が静まり返る。


「今日はよう集まってくれたなぁ!!」


満足げに、周囲を見回す。


「おっか様も、小一郎も喜んでおろう〜!」


そのまま、さらに声を上げた。


「今日は諸大名も集まっておるしのぉ……!」


一拍。


「儂は決めた事があるんじゃ!!」


——ぞわり、と茶々の背筋に、嫌なものが走る。


(やめろ!その流れ、絶対ロクでもない!

……何言うつもりだ?あの酔っ払い……!)


「儂は日の本をこの手に治めておる!!」


しん、と静まる空気。


「次は、明じゃ!!」


ざわめきが、一瞬にして止まる。


「明を征服し!日の本の力を世界に見せつけてやろうやぁ!!」


沈黙。


「「「「……………は?」」」」


宴席にいる全員の、間の抜けた声がやけに響いた。


空気が、凍り付く。諸大名も、公家も、家臣も、誰一人、言葉が出ない。


(……おい、今なんて言った……?このボケ老人……。)


その時、凍り付いた空気を明るい声が見事にぶち破った。


「殿下ぁ!」


ぱっと立ち上がった女が一人。淀殿だった。

しかも、満面の笑み……。


「ご決心なさったのですね!そうですよ!明を征服すれば——」


淀殿は、さらに声を弾ませる。


「イスパニアも、皆、殿下に従います!」


(………アンタかぁぁぁぁーーー!!!アンタが唆したんかぁぁぁぁーーー!!)


茶々の心の中の絶叫が響く。


視界の端では、豊臣家臣全員も『お前かぁぁぁ!!』と同じ顔をしていた。


茶々はすっと目を細め、旭に耳打ちする。


「旭様。今すぐあのサル、仕留めてきていいですか?(どさくさに紛れて、淀殿も仕留めますか?)」


旭は、にっこり笑った。


「手ぇ貸すわよ………って、言いたいとこやけど。ウチの姉様と治兵衛がやるわ。」


指差す先を目線をやると、猛スピードで突っ込んでいく智と秀次がいた。


(……世界記録出てるんじゃない?)


「こんの……阿呆ぉぉぉぉぉおああああああ!!大たわけぇぇぇぇぇえええええ!!!」


智の怒号が桜山に響き、続いて秀次の絶叫も同じく響き渡った。


「それこそ向こうの思うツボやろがぁぁぁぁああああ!!」


寧々と竜子は一切の躊躇なく、秀吉の腕を掴み、「どうぞ。」と言わんばかりに、智と秀次へ差し出した。


次の瞬間、バッッチィィーーーン!!と、乾いた音が山に響き渡る。


左から智、右から秀次のビンタが同時に炸裂した。


「叔父上ぇぇ!!ボケたんかぁ!?ボケたんやろぉ!!」


腰に刺している扇子を手に思い切り振り上げ、ばしんっっっ!!と鈍い音を立てて、秀吉の側頭部に振り下ろされた。


「淀城に籠りっぱなしでボケたんかぁ!!」


そして、折れかけている扇子を秀吉に向かって、思い切り投げ付ける。

投げつけられた扇子が、床に落ちた。


茶々の耳が「ひっ……!」と小さな悲鳴を拾う。


何気なしに其方を見ると、秀次の正室・一の台が打掛で口元を隠しながら青い顔をして、夫と姑を見つめていた。

二人の側室が一の台を支えており、他の側室たちは秀次の子供たち――於宮姫の目を耳を塞いでいたり、退避させたりしていた。


(公家の姫君には、刺激は強いわよね。)


茶々はゆっくりと視線を戻した。


上座では、やられっぱなしの秀吉は喚いていた。


「こらぁぁ!!治兵衛ぇぇぇ!!おみゃあ、叔父に向かってなんじゃぁぁぁ!!

寧々ぇ!!竜子ぉぉ!!離さんかぁぁ!!」


しかし、寧々の目は完全に据わっている。


「おみゃあさ……さっきから何を訳の分からんことを言うとるのぉ?

明の征服ぅ?唐入りぃ?はぁぁ?

……意味が分からんのだけどぉ!?」


「……誠に、秀次様が申される通り……ボケました?」


寧々と竜子が、腕をへし折る勢いで締め上げていた。

秀吉のなんとも情けない悲鳴が響く。


(あっ!そうだ!子供たち!)


茶々は、はっとして上座を見るが、鶴松、万寿姫、拾丸の姿がない。


代わりに。そこにいたのは西の丸殿ことお虎。

目が合うと、にこりと微笑み、茶々に向かって小さく手を振る。


お虎の笑みを見て、茶々は瞬時に理解した。


(避難済み、ね。……流石。)


茶々が微笑み返すと、お虎は真顔に戻り、そのまま戦線に参加した。


(アンタまで行くんかい。)


「……旭殿。」


家康が、そろりと立ち上がる。


「そろそろ止めぬか?」


旭はニコリと笑って首を横に振る。


「殿、気にする事やあらへん。」


旭は涼しい顔で答えた。


「アレは余興やでぇ。

それより、お茶でも飲みましょ。今日はお酒を沢山呑まれたでしょ?」


「御台様、菓子も用意できますが?」


西郡殿も、完全に同調している。


(誰も止める気ない。)


そんな中、直政が辺りをぐるりと見渡し、ぽつりと呟く。


「……若様たち、遅いな。」


「ああ、それなら——」


茶々はさらっと説明する。


騒ぎの直前、秀忠たちは華姫とお寿に連れられ、そのままUターンして茶屋へ退避済みだ。


(判断が早すぎ。)


場に残された者たちは、誰もが同じことを思っていた。


(……これ、どうすんの?)

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