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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第四章 井伊家、毎日が戦場。そして、世の中も戦の予感
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天下統一、その裏で

時はさらに流れ――天正二十年四月。


……えー、改めまして。


井伊直政の正室、茶々にございまする。


そして――


私が抱っこしている赤子を巡って争っている、長女・政姫。 長男・虎松。 そして、次男・万次郎(まんじろう)。 それを必死に宥めている側室・杏。


――はい、状況カオス。


……なんて軽く言ってる場合じゃないのよ。


この二年、ほんまに色々ありすぎて。

情報量多すぎて、思考回路ショート寸前なんだけど?


ちょっと聞いて?ほんまに。


***


まず、旦那様に側室を迎えさせようとした、私の作戦。まぁ、ご覧の通り見事に失敗。


頑なに「側室は要らぬ」と言われて、一旦保留。


で、その後どうなったかというと――私、また妊娠しました。(なんでかな?)


天正十九年の夏に、次男・万次郎を出産。


(この子には、いずれ浅井を……)


その悲願は、ひとまず胸の内に留めておく。


……で、ここからが問題。


あんなに側室拒否してた旦那様が『やっぱり側室、迎えようかな』とか言い出したのよ。


は??ってなるやん。


於軽殿も含めて三人で話し合いした結果、杏を井伊家の側室として迎えることになった。


理由?


たぶん、これ。


私の妊娠が分かった直後。

虎松が風邪こじらせて、しばらく寝込んだのよ。(今は元気だけど。腕白すぎるぐらいにね。)

あの時、中々熱が下がらず気を揉んだ。


その時、何か思うところがあったんでしょうね。

それから、お政と虎松が毎日お腹撫でてくるの見て、「兄弟は多い方が良いか」ってなったっぽい。


杏を側室に迎えた頃は、お政と虎松はよく杏の後ろを並んで歩いた。

ペンギンみたいで可愛かった……。


そして、先月。杏は男の子を出産、弁之助(べんのすけ)と名付けた。


で、今どうなってるかというと。


・政姫「抱っこしたい!」

・虎松「とらも!」

・万次郎「(赤ちゃんなのに参戦)」


……地獄かな?杏と二人で、毎日てんやわんや。


そんな井伊家のドタバタの裏で、世の中も大きく動いていた。


聚楽第行幸後に九州征伐、更に本能寺の変で中止になっていた四国征伐。


よくよく考えたらさ……。

聚楽第行幸って九州征伐と四国征伐の後じゃなかった?


……って、今更言ったところで、そうなってんだから仕方がない。

聚楽第行幸に私も参加したし、なんなら今は徳川方。

『ズレてる!』『史実と違う!』なんて言うのは、ナンセンスってもんでしょ?


ちょっと脱線しちゃったけど、話を戻すわね。


そして、天正十八年。豊臣秀吉による、小田原征伐が始まる。


ただし、ここで一つ。正史とは違う点があった。


後北条家が、内部分裂していたのだ。


徹底抗戦を主張する北条氏政、和睦を望む嫡男・北条氏直。

親子で意見が割れ、関東勢はまとまりを欠いた。


結果、関東の覇者・後北条氏は、あっけなく滅亡。

氏政は責を負い切腹。氏直は豊臣に降るも、高野山へ送られ謹慎処分となる。 


そして、氏直の正室であり我が主人・家康公の次女・督姫様。彼女は三人の子を連れ、夫と共に高野山へ向かった。


離縁の話も出たらしいんだけども、それを強く拒んだそうだ。……強い人やな、と素直に思う。


小田原征伐を経て、奥州の伊達・最上も豊臣へ恭順。


――こうして、天下は一つに収まった。

名実ともに、豊臣秀吉による天下統一である。


その最中――天正十八年六月。


秀吉の側室・香の方が男子を出産した。

名は、幸松丸(こうまつまる)。

いずれは兄・鶴松を支え、豊臣を担う存在として、大切に育てられるはずだった。


………しかし、翌年の天正十九年二月。


幸松丸は、一歳にも満たぬままこの世を去る。

もともと身体が弱かったとはいえ、あまりにも早すぎる死だった。


子を失った香の方はにわかに正気を失い、四十九日を迎える前に、幼い我が子を追い、自ら命を絶った。


愛する子と、寵愛していた側室。

二つを同時に失った秀吉の悲しみは、計り知れない。

……ただ、この一連の出来事。どうやら、裏があるらしい。


香の方の見舞いに訪れた、阿波の姫君。

その後から、様子がおかしくなったという。

そして――四十九日前。何かが決定打となった。


(……やっぱり、か。)


かつて、足利義昭改め道休様が言っていた。


「人を惑わし、いずれ滅ぼす類」


あの言葉が、頭をよぎる。


(……豊臣を壊すのは、あの人かもしれない。)


正直に言えば。豊臣がどうなろうと、知ったことではない。


けれど――お初、お江。 寧々様。 竜子姉様。そして、ババ様。


大切な人たちが巻き込まれるなら――話は別だ。

その時は、黙っているつもりはない。どんな手を使ってでも、あの人たちに指一本触れさせない。


……ちなみに。なんでこんな内情を知ってるのかって?


簡単な話よ。萩乃を通して、甲賀と伊賀に探らせてるから。

本来の目的は、あの人たちを守るため。……だったんだけど。


(まさか、ここまで持ってくるとはね。)


諜報能力、高すぎでしょ。


さてと……暗い話はこの辺にしとこか。

めでたい話も、ちゃんとある。


天正十八年。


岡崎の三郎様と五徳様の長女、登久姫が信濃の名家・小笠原家へ輿入れ。

さらに翌年。次女・熊姫は、本多家へ嫁いだ。


登久姫の時は――まぁ大変だったらしい。


小笠原家はかつて武田に敗れ、各地を流転。

だが、今川や武田の混乱を突いて信濃を奪還。

一時は徳川と敵対していたが、北条牽制も兼ねての縁組となった。


……が!!三郎様、溺愛する長女の嫁入りに大反対。

出発を遅らせるわ、駄々をこねるわ……。

最終的に、五徳様と安土の義伯母上に叱られたらしい。


(……想像つくわ。)


その反省もあってか。次女・熊姫の時は「せめて目の届くところに」と殿や旭様に泣きつき、本多家との縁談が整えられたのだとか。


……親心、やね。


――そういえば、これも後出しになるけれど。

大坂に残っていた妹・お江と、秀康殿が結婚した。小田原征伐の後のことだ。


長い婚約期間を経た二人は、いわゆる「夫婦」というより、どちらかといえば『同志』のような関係らしい。それでも、仲は悪くないと聞く。


(まぁ、あの二人なら大丈夫やろ。)


だが、その直後。鶴松誕生を境に、状況は一変する。


秀吉の養子たちは、まるで用済みとばかりに次々と他家へ出された。

寧々様や竜子姉様が怒ったというのも、無理はない。(そりゃ、私でも怒るわ。)


そして当然、秀康殿も例外ではなかった。


秀康殿は関東の名門・結城家へ養子入りし、家督を継ぐことになる。

お江も共に移り、二人は“結城家の夫婦”となった。


理由は――血筋。


秀康殿は、遠縁ながら結城の血を引いているらしい。


……とはいえその経緯が……まぁややこしい。


母・於万様の父方のさらに先。高祖母の母が、結城家の庶出の娘。つまり、かなり遠い。


(それで通るんや……。つか、結城秀康が結城家の遠縁って史実とは違うよな?…………分からん。またバグが発生したんかな。)


とはいえ、結城家には跡継ぎとなる男子がいなかった。

苦肉の策、というのは一目瞭然だった。


そしてこの頃、徳川にも大きな転機が訪れる。


関東への転封。石高は一気に百数十万石から、二百四十万石へ。規模が桁違いになった。

広大な関東を治めるため、殿は家臣たちへ領地を分配していく。


当然、岡崎松平家の三郎様も例外ではなく……。

「いつか必ず岡崎に戻る!」と鼻息荒くして、相模・小田原へ二十四万石で入封した。


(ほんま、分かりやすい人やわ……。)


我ら井伊家はというと――奥州の抑えとして、上野国(こうずけのくに)・箕輪(みのわ)に十万石。(正史よりちょっと減ってるけど……まぁ誤差だよ、誤差。)


こうして、徳川家臣団は関東へと散っていった。


その結果、私は箕輪へ。旭様と阿茶局様は江戸へ、離れることになった。


箕輪へ発つ前に、旭様に挨拶へ伺った時のことを、今でも覚えている。


「離れていても、お茶々は私と殿の養女。そして、私の女房や。」


あの言葉に、どれほど救われたか分からない。


……それにしても。旭様は正史では、天正十八年に亡くなるはずではあるが。こっちでは、風邪ひとつ引かずにピンピンしてる。


(やっぱり人間、ストレスフリーが一番よね。)


***


「ああー!!万次郎様っ!危ないですっ!!」


杏の悲鳴に、我に返る。


「どうしたの?」


「も、申し訳ございません……!弁之助が、万次郎様の指を……!」


見れば、弁之助がしっかりと万次郎の指を咥えている。


「あーあ……こらこら、弁之助。兄上の指を食べてはなりませんよ。」


弁之助の頬を指で軽く摘む。その隙に杏が万次郎を引き剥がした。

当の本人は、杏に引き剥がされて不満そうに「ぶーぶー」と腕の中で抗議中。


「……元気やねぇ。」


よしよし、とあやした瞬間。


「ははうえ!政も抱っこしたい!」


「とらも!」


今度はお政と虎松が突撃してくる。


「こらこら、引っ張らないの!弁之助が可哀想でしょ!」


その騒ぎに、万次郎まで身をよじって参戦しようとする。


(……なんでこの子ら、こんな元気なん?)


毎日これ。ほんまに毎日これ。


「姫様方、そろそろお昼寝の刻ですよ。」


杏が、救世主のように割って入る。


「万次郎様も眠そうですし、皆で休みましょう。」


お政と虎松が並び、 万次郎と弁之助も寝かしつけられ。


ようやく、静寂が訪れた。


「御方様、寝かしつけは私が。」


「……お願い。(あぁ〜……助かった……。)」


自室に戻り、帳簿を手に取る。


(あぁーー……疲れた。でも、これでやっと一息出来るわ。)


四人の子育て。乳母や侍女の手があっても、普通に大変。


(これ、ワンオペやったら地獄やで……。)


現代のお母さん達、ほんま尊敬する。


……なんて考えながら、ようやく仕事に取りかかろうと、帳簿を手にしたその時。


「御方様ぁぁぁ!!一大事でございます!!」


廊下から、ものすごい勢いで萩乃が飛び込んできた。


「ちょ、どうしたの?!」


「お、織田の……三介様が……!」


(あ、これアカンやつや。)


直感で分かる。


「関白殿下の勘気に触れ――改易、そして遠流を申し付けられたと!!」


「………………は?」


一瞬、思考が止まる。


「…………はぁぁぁ!?」


誰が?あの?何やらかしたんだよ!!あのバカ従兄ぉぉぉぉおおおお!!

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