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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第二章 生き残りを賭けて〜徳川家で戦国サバイバル〜
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徳川のおっちゃんたち、畑に強制連行

家康と旭が婚儀を結んでから、一か月が過ぎた。


それでも、家康に上洛の気配はない。


「殿は上洛しませんね。」


「誠に。年明けかしら?」


「どうでしょうねぇ。」


「そのうち、兄様が誰かをこちらへ寄越しそうだわ。」


「来るとすれば……お江様でしょうか?」


「そうだったら、随分と賑やかになりますね。」


「お江はないわ。義姉上様からの文で、近々婚約すると仰っていたもの。

……そうよね?お茶々。」


「はい。」


「まぁ!めでたい!して、お相手は?」


「於義丸殿と、とのことです。」


旭と茶々、それに副田家の頃から仕える侍女のお桐と八重は、雑談を交わしながら土を耕していた。


旭が農作業をすること自体は、元が足軽の娘ということもあり、それほど驚かれなかった。


だが、浅井の姫である茶々まで一緒になって鍬を振るっている姿には、奥の侍女たちが何人か卒倒した。


阿茶局や於愛の方ら側室たちも当初は驚いていたが、今では見守る側に回っている。

むしろ「男手が必要でしたら」と声を掛けてくるほどだ。


「……あら。」


お桐が鍬を振り下ろした瞬間、ガツン、と鈍い感触が返ってきた。


「これは……石?」


鍬を置き、手で動かそうとするが、びくともしない。


八重が加勢するが、それでも動かない。


さらに、旭と茶々も加わる。


「周りの土を退けてみましょう。」


「そうですね。」


茶々と八重が鍬で掘り進めていく。


「……これ、石じゃなくて。」


茶々が眉をひそめた。


「岩、ですね。」


「あら、本当。中々に大きいわ。」


「女四人でどうにかなるでしょうか……。」


「……うーん。」


旭は腕を組み、少し考える。


「人手がいるわね。お桐、お茶々。人を集めてきて。」


「はい。」


茶々はお桐を連れ、奥御殿へと向かった。


侍女を何人か連れて戻り、再び挑戦するが、ビクリともしない。


『儂ぁこっから動かんぞ!退かせられるもんなら、退かしてみぃや!』


そんな意志すら、岩から感じる……。

茶々はちょっとムカついた。


「ご、御前様……やはり、女手だけでは……。」


「無理そうね……。」


全員が息を切らし始めた。


「阿茶局様に……お伝えしてきます。」


「お願いするわ。」


茶々は踵を返す。


奥御殿に向かっている途中で、体格の良い男たちの一団が目に入った。


(……あ。)


次の瞬間、茶々は全力で駆け出していた。


「良いところにいらっしゃいましたぁぁ!!」


「な、何事か!?」


「こちらへ!一大事です!」


「はぁ!?」


「急いでください!!」


有無を言わせぬ勢いで腕を掴み、そのまま引きずるように連れて行く。


「旭様〜!ちょうど手の空いておられる方をお連れしました!」


「「手が空いてるとは何事だ!!」」


「聞き捨てなりませぬぞ、一の姫!」


連れて来られたのは、徳川家の重臣たちである、

酒井忠次(さかいただつぐ)本多重次(ほんだしげつぐ)板倉勝重(いたくらかつしげ)であった。


「助かるわ〜。あら、酒井殿に本多殿、板倉殿まで。」


「御前様……これは一体?」


旭はにこりと微笑む。


「耕していたら、大きな岩が出てきまして。」


「……はい?」


「私たちでは動かせませんの。」


茶々も一歩前に出る。


「お力を、お貸し頂けませんか?」


侍女たちも続けて頭を下げる。


「お願い致します。」


「女手ではどうにも出来ず……。」


沈黙。


重臣たちは顔を見合わせた。


「い、一の姫!このような事で我らを呼んだのか!?」


「だって、女手ではどうしようもないもの〜。」


「たかがこんな事で!」


重臣たちは、たちまち声を荒げたが、茶々は冷めた目で見つめる。


「あら。自信がありませんの?」


「「なぬ!?」」


()()()()()()()、と仰いますけど……。

この岩を退かせられぬ自信が、ございませんの?」


ぴしり、と空気が張り、旭がそっと茶々の腕を掴む。


「はぁ……。岡崎の三郎様が仰っていた通りだわ。」


わざとらしく溜め息を吐いた。


「仕方ないわ。他の方にお願いしましょう。」


一拍置いて。


「井伊様なら手伝ってくださるでしょうし……本多平八郎様も。」


にこり、とおっさんたちに向かって微笑む。


「お二人とも、お若くてお強いですもの。」


――ピキッ。


重臣たちの額に青筋が浮かぶ。茶々はニヤリと笑って、さらに追い打ちをかける。


「申し訳ございません。酒井様、本多様、板倉様。

お三方の()()を考えず、このような事をお願いしてしまって。」


ペコリと頭を下げる。


(……決まった。)


「……何を申されるか!!」


「井伊や平八郎などの若造を出すまでもない!!」


「これしきの岩――この本多作左衛門一人で十分よ!!」


「お前ら引っ込んどれ!儂がやる!!」


バッと袖をまくり、侍女たちから鍬を奪い取った。


試合開始のゴングが鳴った。

徳川重臣VS.岩、ガチバトル開始。


「……扱いやすっ。」


「お茶々……。」


旭は呆れたように目を細める。


「使えるものは、使いませんと。」


「はぁ……。」


旭は肩をすくめる。


「では、酒井殿たちが頑張っている間に――私たちはあちらを。」


「「はい、御前様。」」


そして、太陽が真上に昇る頃には、裏庭は見違えるほど整っていた。


「ご苦労様です、酒井殿たち。」


旭が歩み寄る。


「あら……こんなに大きな岩だったのね。

道理で、私たちでは無理なはずだわ。」


三人は肩で息をしていたが、どうにか岩を撤去していた。


「ありがとうございます。お茶でもいかがですか?」


ニコリと微笑みながら、お茶のお誘い。


「ご、御前様……。」


「い、いえ……我らは、これで……。」


「ひゃ〜……よう動いたわ〜……。」


その場から逃げようとする三人だが……。


「お茶々。」


「はい。」


「お桐と一緒に、ゴザとお茶と饅頭を。」


「かしこまりました。」


逃がすかぁ!!と言わんばかりに、すぐさま休憩セットが用意された。


ゴザが広げられ、湯呑みが並ぶ。


「どうぞ〜!」


茶々が手招きする。


「疲れた身体に甘いものは効きますよ〜。」


もはや抵抗する気力もなく、重臣たちはヨロヨロと座り込んだ。


茶々は湯呑みを一つ取り、口をつけようとする。


「一の姫!!それは我らの茶では!?」


「毒見ですよ、毒見。」


「……いえ、結構。頂戴致します。」


「そうですか?では、どうぞ。」


順番に湯呑みが渡されると、三人は一息ついた。


「はぁ〜……戦場でも、ここまで動かんぞ……。」


「まったくじゃ……。」


「明日の朝が心配じゃ……。」


茶々が、にこりと笑う。


「やはり御歳なんですね〜。」


「「「五月蝿いわい!!!」」」


――ゴンッ!と、鈍い音が響いた。

茶々の頭に、旭の拳が落ちていた。


「痛っ!」


「お茶々。」


にっこり笑顔で茶々を制圧する。


「調子に乗りすぎやで。」


「……面目ない。」


そして、翌日。


三人のおっちゃんは、見事に筋肉痛になり、動けず。


「こ、腰が……。」


「むむ……認めとうはないが……。」


「儂等も歳だな……。」


小姓たちに腕や腰を按摩してもらっていた。

そこへ通り掛かったのが、井伊直政。


直政はゾンビのような呻き声を上げるおっちゃんたちに、首を傾げる。


「……皆様、如何されたのです?」


すると、忠次が顔を上げる。


「万千代……浅井の一の姫様には気をつけた方が良いぞ。」


「はい?」


「あれは……手に負えんじゃじゃ馬だわ。」


直政は首を傾げるしかなかった。

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