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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第二章 生き残りを賭けて〜徳川家で戦国サバイバル〜
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茶々は遠慮しない

茶々は、夜明け前に目を覚ました。


旭に命じられ、於孝に布団へ放り込まれてから、どれほど時間が経ったのか。


(……めっちゃ寝た気がする。)


二度寝も考えたが、ふわりと漂う米の炊ける匂いで、その気は消えたので、むくりと起き上がる。


「あ゛あ゛〜っっ!!よく寝たっ!!」


布団から抜け出し、障子を開ける。


東の空が、うっすらと明るい。


「今日も良い天気になりそう……。」


部屋に戻り、布団を畳む。

障子を全開にして、空気を入れ替えた。


「……寒っ!!」


秋の朝の冷え込みが、肌に刺さる。


茶々は廊下に出ると、大きく背伸びをする。朝日が、全身を照らして、気持ちが良い。

そして、そのまま、朝日に向かってラジオ体操を始めた。


「浅井の一の姫様……もうお目覚めですか?」


声に振り返ると、於孝や旭と同じくらいの年頃の女中が立っていた。


「おはよう。えっと……」


「あ……とんだご無礼をっ!」


慌てて頭を下げる。


「御前様にお仕えする事となりました、美也と申します。」


「お美也ね。浅井茶々よ、よろしくね。」


一拍。


「ところで、顔を洗いたいんだけど。」


「はい、桶をお持ち――」


「洗い場まで連れて行ってくれる?」


「……はい?」


美也の動きが止まる。


本来、身分の高い者は洗い場へは行かない。

水は、部屋まで運ばれるものだ。


「浅井の一の姫様が……斯様な……」


「いいの、いいの。」


茶々は軽く手を振る。


「私は旭様の女房よ。気にしない、気にしない。」


ニッコリ笑って、美也の前に立つ。


「大丈夫よ〜、案内して。阿茶局様に見つかったら、適当に言い訳するから。」


「………………こちらで御座います。」


完全に押し切られてしまった。


洗い場には、すでに侍女たちがいた。

茶々の姿を見た瞬間、全員が固まった。


(まぁ、そうなるよね。)


だが茶々は気にしない。普通に侍女たちの隣に並び、顔を洗い始めた。


「姫様っ!!」


後ろから悲鳴がして振り返ると、於孝が桶を抱えて立っていた。


「お部屋までお持ちしましたのに!」


「いいの、いいの。」


さらっと返す。


「これもコミュニケーションよ。」


「こ、こみゅ……?」


「南蛮の言葉。」


少し考える。


「……同じ釜の飯を食う、みたいな感じ?」


「そ、そんな……恐れ多い!」


「いいから、いいから〜。」


「一の姫様っ!!?」


さらに大きな声がして振り返ると、阿茶局が青い顔で立っていた。


(あ、見つかった。)


「おはようございます、阿茶局様。」


「おはようございます……ではありません!!」


完全にキレている。


「何をなさっているのですか!?ここは侍女の場所です!」


「ごめんなさい、勝手に使ってしまって。」


そして、あっさりと謝る。


「でも、もう終わりましたので。」


「そういう問題ではありません!!」


阿茶局は今度は赤い顔をして、侍女たちに怒鳴る。


「誰が案内したのですか!!」


「私です。」


茶々が即答する。


「勝手に来ました。」


「……はい?」


「早く目が覚めてしまって、侍女たちの声が聞こえたので、つい〜……。」


一拍。


「ごめんなさい。」


阿茶局が侍女たちを振り返ると、ビクッと肩を跳ねさせる。


「それでも止めるべきでしょう!!」


「止めましたよ?」


茶々は首を傾げる。


「でも私が聞かなかっただけです。」


にっこりと笑顔で侍女たちに振り返る。

茶々は、阿茶局から見えない角度で、侍女たちに向かってウインクした。


「も、申し訳ございません!阿茶局様!」


「姫様が、あまりにも素早く……!」


「もっと強くお止めするべきでした……!」


侍女たちが次々と頭を下げる。


「ほら。」


茶々は軽く肩をすくめた。


「私が勝手にやったことです。

だから、そんなに怒らないであげてください。」


阿茶局は、額に手を当てる。


そして、深く長く息を吐いた。


「……本来であれば。この者たちは、処罰の対象です。」


一瞬だけ、空気が張り詰めた。


「ですが。」


一拍。


「姫様のお顔を立て、此度は見なかったことにいたします。」


侍女たちの顔が上がる。


「ただし――」


ピシリ、とまた空気が締まる。


「今回限り、です。」


「ありがとうございます、阿茶局様。」


茶々は頭を下げる。


「みんなも、ごめんね。朝から巻き込んでしまって。」


「そんな、姫様!」


「勿体なきお言葉です!」


朝餉を終え、一息ついた頃。


阿茶局が、再び姿を見せた。


「御前様。お休みは取れましたか?」


「ええ、よく眠れました。」


旭は微笑む。


「阿茶局のおかげです。」


そして、ふと茶々を見る。


「それより――朝はごめんなさいね。お茶々、悪い子ではないのよ。」


一拍。


「ただ――向こう見ずで、物怖じせず、ちょっと世間知らずなだけで。」


「そこまで言います!?」


「だってそうじゃない。」


旭は涼しい顔だ。


「ねぇ?」


於孝と萩乃を見る。


「「はい。」」


二人とも即答だった。しかも全力で頷く。


「……。」


茶々は頬を膨らませ、二人を睨んだ。


「ふふ……。」


その様子に、阿茶局が思わず小さく笑う。


「一の姫様は、お優しい方でございますね。」


「侍女たちも、驚いておりました。」


「自分たちのような者を、姫君が庇ってくださったと。」


「……そうですか。」


茶々は少しだけ視線を落とす。


「でも。」


顔を上げる。


「度が過ぎるようなら、きつく言っていただいて構いません。

北政所様からも、そう言われておりますので。」


「まぁ……。」


阿茶局は、わずかに目を細めた。


「ではその時は――」


にこり、と微笑む。


「姫様。お覚悟を。」


「……気をつけます。」


「さて。」


空気を切り替えるように、阿茶局が手を打つ。


「昨日はお疲れのご様子でしたので控えておりましたが。

本日は、奥御殿をご案内いたします。」


「お願いします。」


阿茶局の案内で、城奥を巡る。


その中で知ったこと。

側室たちは、それぞれ別の屋敷に住まいを与えられているということ。


(つまり……この御殿の大半は、旭様のもの、か。)


茶々は静かに周囲を見回した。


やがて、人気のない裏庭へと出る。


何もない。ただ、ぽっかりと空いた空間。


「……ここは?」


「殿より、御前様の好きにするように、と。」


阿茶局が静かに告げた。


「殿が……?」


旭の目が、わずかに見開かれる。


「はい。」


「部屋に籠もってばかりでは、気が滅入るであろうと。」


「……。」


旭はゆっくりと庭へ足を踏み入れた。

陽が差し込む、静かな場所。


「旭様。」


茶々が並ぶ。


「耕し甲斐がありそうですね。」


「本当ね。」


旭が微笑む。


「日当たりも良いわ。」


「薬草や野菜を育てますか?」


「ええ。」


一歩、土を踏む。


「まずは耕して――それから種を蒔かないとね。」


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