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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
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転生先が詰んでる

(これから……どうするべきなんだろ……。)


北ノ庄城を脱出した三姉妹は、残党狩りを掻い潜り、父方の伯母である実宰院(じっそういん)の庵主・昌安(しょうあん)見久尼(けいきゅうに)の元へ難を逃れた。


母のお市が事前に知らせていたようで、見久尼は命かながら逃げて来た姪たちを温かく迎え入れてくれた。


見久尼が用意してくれた部屋に入り、茶々はようやく息を吐く。


「姉上、誠に大事ございませぬか?」


末妹のお江が心配そうに顔を覗き込む。


「ええ、大丈夫よ。ごめんね……。」


茶々は優しくお江の頭を撫でた。


「……お初、お江。もう休みなさい。今後のことは……明日考えましょう。」


「はい。ほら、お江。行くよ。」


「初姉様、江は姉上のお側におりとうございます。」


「……お江。いまは一人にしてくれないかな?これでも、私も混乱してるのよ……。」


「でもぉ……。」


「大丈夫よ。ほら、もう行きなさい。」


「……はい。」


まだ不服そうな顔をしているお江はお初と共に部屋を出た。


ようやく一人になった茶々は、盛大に溜め息を吐き、思わず愚痴が溢れる。


「はぁぁぁぁぁ………。またかい。なんでやねん、もうええやろ……。私、頑張ってたやん。何回やらすつもりなん?」


まず、"私"について説明しておこう。


"私"は平成から令和の時代を生きた現代人だ。

家と会社の往復、推し活に勤しむ、どこにでもいるヲタクなアラサーOLだ。


そんな私が……。


どういう訳か、『日本三大悪女』と貶されまくっている、淀殿こと浅井茶々に転生した。


一度目は抗う暇もなく、歴史の波に飲まれた。

そして、最期は息子の秀頼と共に大坂城を枕にして死んだ。


二度目は……。

流れは知ってる!だったら、今度は生き残る!とフラグをへし折りまくった……。


すると、秀吉にうっかり気に入られ、寧々の肝入りもあり、秀次の継室として嫁いだ。


側室同士のいざこざを宥めたり、今ひとつ頼りない夫に発破をかけ、豊臣家中で地位を確立させた。

秀次との間に娘も生まれ、慌ただしくも穏やかな日々だった。


だけど……秀次失脚のフラグはへし折る事ができなかった。

秀次粛清の煽りを受け、茶々は六条河原の露と消えた……。


三度目……。

燃える北ノ庄城、泣き震えて茶々にしがみ付くお初とお江の姿を確認して、天を仰いだ。


『またかい……。また帰ってきた……。』


父方従姉である京極竜子(きょうごくたつこ)が三姉妹の後見となり、大坂城で暮らしている時に、"私"は茶々本人の記憶を垣間見た。


茶々は争いを好まぬ、ただ静かに暮らしたいと願う、野心とは無縁な人だった。

しかし、時代がそれを許してくれるはずがなかった。

茶々は妹たちの為、豊臣家の為と己の感情を無視して必死に生きた。


「今度は大人しくしよ……。」


そう決心した"私"は、お初とお江を無事に嫁がせた後、秀吉正室である寧々と竜子の側で極力大人しくしていた。

だが、またしても時代は茶々を巻き込んだ。

九州平定後、茶々は秀吉の養女として島津家へ嫁いだ。


薩摩での生活に慣れるまで苦労したが、それでも政治とは無縁の穏やかな生活。

初めて心から安らげた。


しかし……。

時代はどこまでも茶々に容赦なかった。


秀吉亡き後、徳川家康と石田三成の対立。

会津討伐、そして三成の挙兵、人質政策。

大坂城下に居た茶々は、登城を拒否。子供たちと侍女たちを逃がしてから、屋敷に火を放って自害した。


そして、四度目。

茶々は膝から崩れ落ちた。

「もういい加減にしろ!」と心の中で叫んだ。


どうでも良くなった茶々は、抗うのをやめた。

だが、お初とお江の安全確保は絶対に忘れなかった。

二人を嫁がせた後、秀吉に望まれて側室になった。

子供にも恵まれ、寧々や竜子に守られながら過ごした。


そして、ふと思い付く。


「……そもそもの原因を取り除けば良くない?

関ヶ原の回避は流石に無理やけど、福島正則たちと石田三成の対立をどうにか出来ないかな?」


茶々は寧々と協力して、朝鮮の役での処遇に付いて、対立を深めていた三成たちを集めて話し合いをさせた。


「おみゃあは昔っから頭が固いんだんわぁ!!」


「お前が猪みたいに直ぐに突っ込んで行くからや!後処理、誰がする思うてんねん!!」


「武功を上げてなにが悪いんやぁ!!」


「悪い言うてへん!考えろ言うてんねん!こんの!馬鹿松!!」


「誰が馬鹿やぁぁ!!」


「お前やぁぁーー!!」


すると、加藤清正と黒田長政が頷く。


「……だな。此奴は馬鹿だわ。」


「そこは佐吉が正しいわ。」


「おみゃあたちは、どっちの味方なんやぁぁーー!!」


取り繕う余裕すらなくなったのか、全員訛り全開で喧嘩した。

時には取っ組み合いになったが、お互いに腹を割って話したからこそ、なんとか内部分裂を免れた。


『豊臣家の為、秀頼様の為。』


その想いのもと、全員がどうにか踏み止まってくれた。


そして、運命の関ヶ原。


分裂を免れた西軍の圧倒的戦力と団結力を前に、東軍は敗北。


「歴史を、変えた!」


そう喜んだのも束の間……。本番は、ここからだった。


「……家康、どうするん?」


三成はボソッと呟く。


「切腹!」


「処刑!」


「島流し!」


「待て待て待てぇ!」


そう、戦後処理だ。


勝った!豊臣家残った!めでたし、めでたし。

……んな訳がない。現実はそんなに甘くない。


東軍の武将たちの処分、関東の仕置き、徳川家康に対する戦の責任追及、西軍の武将たちの恩賞、更に朝鮮や明との和睦交渉、南蛮の交易……。


「勝った後の方がしんどいなんて……皮肉やな。」


茶々は書状をしたためながらボヤく。


「少し……休むわ。」


「御方様?」


そのまま、バタッと倒れた。


「御方様!!」


「誰ぞ!医者を!」


「お茶々!しっかりしやぁ!!」


寧々が駆け寄り、茶々を抱き起こす。


「お茶々ぁぁ!!」


「母上ぇーー!!」


竜子、秀頼、侍女たちの声を遠くで聞きながら、茶々はゆっくりと目を閉じ……そして、二度と目覚めなかった。

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