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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
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姫様の旅支度

旭の輿入れが決まり、岡崎へ向かう日も近付いていた。


茶々の部屋では、出立に向けた荷造りが進められている………はずだった。


「薬を多めに。」


「いえ、衣や!!」


「薬です。」


「衣や言うとるでしょうが!」


「薬!」


「衣!」


「薬!」


「衣!」


茶々は文机の前に座り、二人の侍女をぼんやりと眺めていた。


(……何で揉めてんの?)


萩乃は薬箱を抱えている。

対する於孝は、畳の上に広げた衣を畳んでいる。


「姫様は長旅になるのですよ!万一、道中でお身体を崩されたらどうなさいます!」


「薬ばっかり持って行って、着る物が足りんかったらどうするんです!」


「薬があれば多少の不調は凌げます!」


「人間は薬だけでは生きていけません!」


「衣より薬です!」


「衣です!」


(……元気やなぁ。)


茶々は湯呑みを傾ける。


二人とも、茶々の身を案じているのは分かる。


分かるのだが――


「……そろそろ、止めるか。」


茶々は立ち上がり、萩乃と於孝の間にすっと入り込む。


「二人とも。」


「「はい。」」


茶々は二人の顔を見比べ、静かに告げる。


「茶葉を多めに。」


「「…………。」」


沈黙。


やがて、萩乃が頷いた。


「……確かに。」


於孝も頷く。


「ええ。茶葉は必要ですな。」


「でしょう?」


「いや!!」


襖の向こうから、盛大なツッコミが飛んできた。


茶々たちが振り返ると、書状を抱えた石田三成が立っていた。


「なんでですの!?」


「……石田殿?」


「何故そこで茶葉なんです!?」


三成はずかずかと部屋へ入ってくる。


「旭様の輿入れに伴う諸々の確認をしに参ったのですが……何を話しておられるのです!?」


「荷造り。」


「それは見れば分かります!」


茶々は首を傾げる。


「長旅になるんよ?」


「はい。」


「お茶する時ぐらい、落ち着きたいやん。」


「…………。」


三成の動きが止まった。


「……それは、まぁ……。」


一瞬。本当に一瞬だけ納得しかけたが、すぐに我に返った。


「いや!!それでも茶葉って!!」


茶々は眉を寄せる。


「必要やろ?」


「必要ですけど!」


「ならええやん。」


「他に必要なものが山ほどあるでしょうが!!」


「それは於孝と萩乃がやってくれるから。」


「そういう問題ではありません!」


三成が頭を抱える。


「何故、出立前からこんな調子なんです……。」


「石田殿。」


茶々が、ふと思い出したように声を掛ける。


「はい?」


「駿河まで、どれぐらい掛かるん?」


「道程にもよりますが、かなりの日数を要します。」


「ほら。」


茶々は萩乃と於孝を見る。


「長旅やろ?」


「はい。」


「なら茶葉いるやん。」


「「はい。」」


「だから!!」


三成の叫び声が部屋に響いたが……。


「おーい、佐吉ぃ〜。」


廊下の向こうから、呑気な声が聞こえてきた。


「まだ終わらへんの?」


続いて、大きな影が襖の前に現れる。

福島正則、そしてその後ろには大谷吉継もいる。


「何してんの?」


正則が部屋を覗き込む。


「……市松。」


三成が振り返る。


「ちょうどええところに来たわ。お前も一言――」


「ほらほら、佐吉ちゃん。」


「は?」


正則は三成の肩をがっしり掴んだ。


「女は女の支度があるんやで〜。」


「ちょっ……待て、市松!」


ひょいっと、三成の身体が軽々と持ち上げられた。


「お、おい!!ちょ、何をするねん!!

紀之介!お前も見てへんで、助けろや!」


吉継は三成を見上げる。


「……市松。」


「なん?」


「首は絞めたらあかんでぇ〜。」


「分かっとるがな〜。」


「そういう問題やないって!!」


正則はそのまま三成を肩に担ぐ。


「ほな、姫様〜、ごゆっくり〜。」


「おい!!私はまだ確認事項が――!!」


「はいはい、佐吉ちゃん。行くでぇ〜!」


「降ろさんかぁぁぁーーー!!」


「うるさいで。」


「お前が言うな!!」


正則は三成を担いだまま、吉継を従えて廊下の向こうへ消えていった。


「……。」


「……。」


「……。」


茶々たちはその背中を見送り、やがて茶々は小さく息を吐いた。


「……あの人らは相変わらずやなぁ。」


於孝がくすりと笑う。


「仲がよろしいことで。」


「……あれを仲が良いと言っていいんでしょうか?」


萩乃も、ほんの少しだけ笑った。


「少なくとも、以前よりは。」


「……はい?」


茶々は微笑む。


「なんでもない。」


そして、畳の上に並べられた荷物を見る。


薬、衣、そして――大量の茶葉。


「……よし。」


茶々は頷いた。


「これで準備万端やな。」


於孝が首を傾げる。


「姫様、他にもまだございますが?」


「え?」


「書物やら、道中のお召し物やら――」


「……。」


茶々は静かに座り直した。


「……任せた。」


「「はい。」」


こうして、五度目の人生で初めての、徳川領への旅支度が始まった。

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