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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
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姫様、泣いていいですか?

住吉大社での参拝を終え、一行は住吉で一泊した。


翌日、大坂城への帰路の途中で、四天王寺へ立ち寄った。


(……ここからが、本番。)


茶々は静かに息を整えた。


僧侶に案内され、寺の奥にある屋敷へ通される。


「こちらでお待ちください。」


「はい。」


やがて、先ほどの僧侶が、一人の僧を伴って戻ってきた。


それは、出家したばかりの甚兵衛だった。


「……旭……阿古……。」


低く、震える声で二人を呼ぶ。


「旦那様っ!」「父上っ!!」


二人は同時に立ち上がり、駆け寄った。


そのまま甚兵衛に強く抱き付いた。


「すまん……!」


甚兵衛――いや、穏斎(おんさい)は二人を抱きしめた。


「勝手なことをしてしもうて……!すまなかった……!」


「違うわ!」


旭が首を振る。


「旦那様は悪うない!あんなこと言われたら、誰だって怒るやないの!」


「父上ぇ……!」


阿古が声を上げて泣く。


「……阿古、そんな泣いたら。」


穏斎は、優しく娘の頭を撫でる。


「目が溶けてまうで。」


「だってぇ……!」


阿古は父に抱き付いたまま、泣き崩れた。


「……阿古ぉ!」


三人は、ただ抱き合ったまま泣き続けた。


その光景に、茶々はそっと目を伏せる。


(……よかった。)


隣では萩乃が静かに涙を拭い、僧侶も目頭を押さえている。

於孝と清正は完全に号泣しており、吉継が無言で手拭いを差し出していた。


やがて、少しずつ涙も落ち着いていく。


「……実はな。」


穏斎が、静かに口を開いた。


「この寺に、母方の縁者がおってな。その縁で、ここへ来たんだわ。それで……その日のうちに、出家した。」


「……。」


「穏斎、と名を改めた。」


旭と阿古は、黙って聞いている。


「時期が来れば、尾張に戻って、庵を結ぶつもりだわ。」


「……そうですか。」


旭は、ゆっくりと頷いた。


「阿古は……徳川へ連れて行くのか?」


穏斎の問いに、旭は首を振る。


「この子は、公家の万里小路家へ嫁ぎます。」


「万里小路家へ……!」


驚いたように目を見開く。


「そうか……織田家とも縁のある家やな。」


「はい。」


「御曹司様が、阿古に一目惚れしたそうで……。」


「……そうか。」


穏斎は、阿古を見る。


「ついこの間、生まれたばかりやと思うとったのに……。」


小さく笑う。


「もう、嫁に行く歳か。」


「いまは北政所様のもとで、礼儀作法を学んでおります。」


「そうか。」


穏斎は、ゆっくりと頷いた。


「しっかり励め。」


「はい。」


阿古は、まっすぐに答える。


「阿古。」


穏斎が静かに呼ぶ。


「これからは、関白殿下と徳川様が其方の父となる。それで、ええな?」


阿古は一瞬だけ目を伏せたが、顔を上げた。


「……はい。ですが……。」


声は、はっきりとしていた。


「阿古は――副田甚兵衛吉成の娘であること、決して忘れません。」


穏斎は息を飲んで、震える声で娘に告げた。


「……ああ!お前は、儂と旭の大切な娘や!」


再び、涙が溢れた。


(……ああ、もう。)


於孝と清正が再度号泣に突入する。

吉継は無言で二枚目の手拭いを差し出した。


やがて、茶々がそっと声を掛ける。


「旭様、阿古殿。そろそろ……。」


「……はい。」


旭は、小さく頷く。


「穏斎様。」


そして、夫へ深く頭を下げる。


「最後にお会いできて、良かったです。」


「うむ。」


穏斎は静かに答えた。


「旭。お前はこれから、徳川様の正室となる。儂のことは……死んだ者と思え。」


「……。」


旭は、唇を噛む。


「……はい。」


「達者で暮らせ。」


「……はい。」


次に、阿古へと視線を向ける。


「阿古。」


「はい。」


「幸せになれ。」


短く、それだけ伝えた。


「はい。」


阿古は涙を堪えながら頷いた。


「父上も……ご無理はなさらぬように。」


「……ああ。」


それが、最後の言葉だった。


穏斎に見送られながら、茶々たちは再び歩き出す。


(……これで、ひとつ片付いた。)


茶々は静かに目を細めた。


(だけど、まだ終わりじゃない。これからが本番……。)


視線を前へ向ける。


(次は、徳川。)


静かに、盤面を見据えた。

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