表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
15/36

姫様、突然過ぎます

(時間がない。)


茶々はお江と阿古の手を引き、自室へ戻った。


(旭様の輿入れ。阿古殿の縁談。そして、副田のおじ様の行方――。全部、同時に動かさないと詰む。)


「お江、善を呼んできて。」


「はい!」


しばらくして、善を伴ったお江が戻ってきた。


「失礼いたします。姫様、いかがなさいましたか?……あら、阿古様も。」


「於孝と萩乃が戻ってから、まとめて話すわ。」


善は首を傾げたが、やがて何か思いついたように目を輝かせた。


「もしや……茶々姫様か江姫様の御縁談でございますか!?」


「ああ、惜しい!」


「では……阿古様!?」


「まだ“誰に”とは決まっておりません。」


「まぁ!それでもめでたいことには違いありません!おめでとうございます!」


「善、気が早いわよ。」


「そうですよ〜。相手も決まっておりませんのに。」


それでも善は嬉しそうに頷く。


「ですが急なお話ですね。そのような気配、全くございませんでしたのに……。」


(まぁ、そうよね。)


茶々は小さく息を吐く。


(普通はこんな決まり方、しないわよね。)


「姫様。」


「戻りました。」


於孝と萩乃が部屋に入ってきた。


「ちょうどいいわ。」


茶々は姿勢を正す。


「今から話すこと、しっかり聞いて。」


本丸御殿での一件と、これからのこと。


一通り説明を終えると、部屋に静寂が落ちた。


「……姫様、あまりにも突然にございます。」


於孝が静かに言う。


「そうですよ……。」


萩乃も続くが、二人とも迷いはなかった。


「ですが。」


於孝は一歩前へ出る。


「姫様が行かれるのであれば、何処までもお供いたします。」


「それは萩乃も同じです。」


まっすぐに頭を下げる。


「一の姫様の御側に。」


茶々は、ふっと笑った。


「ありがとう。信じてたわ。」


そして、善の方へ向き直る。


「善。」


畳に手をつき、頭を下げた。


「お江のこと、お願いできる?」


「姫様!?おやめください!」


善は慌てて頭を上げさせる。


「大政所様、北政所様、智様……それに、京極の姫様まで。

これほどの後ろ盾があれば、これ以上心強いことはございません。」


きっぱりと言い切った。


「江姫様は、この善が必ずお守りいたします。」


「……よかった。」


茶々はほっと息を吐く。


「断られたらどうしようかと思ったわ。」


「そのようなこと、あるはずがございません!」


くすりと笑うと、茶々は阿古へと向き直った。


「阿古殿。」


静かに目を合わせる。


「旭様には、私と於孝、萩乃が付きます。

ですから……案じなさいますな。」


その言葉に、阿古は勢いよく頭を下げた。


「……お茶々様。どうか、母を……お頼みいたします!」


額が畳につくほどの茶々へ深く礼をした。


「はい、お任せください。」


茶々は、そっと頷いた。


やがて阿古は於孝に連れられ、旭のもとへ戻り、部屋には茶々と萩乃だけが残った。


「……で。」


茶々は小さく息を吐く。


「副田のおじ様は?」


「四天王寺におられます。」


「え?」


思わず顔を上げる。


「もう見つかったの?」


「追跡は得意ですので。」


(早っ……いや、それより。)


「……近いわね。」


「はい。既に出家されております。」


「そう……。」


茶々は腕を組み、暫し考えた。


「……どうやって会いに行こうかしら。」


「………はい?」


萩乃が目を瞬かせると、茶々はふっと軽く笑った。


「――明日、寧々様に相談に行きましょう。」


「姫様!?」


「於孝と萩乃は、明日ついて来るのよ。」


「は、はい!……って、姫様!」


萩乃が思わず声を上げる。


「ホンマ突然なんやさかい!!」


茶々は萩乃に向かって、にやりと笑った。


「そう?」


一拍。


「――時間がないのよ。」


そして、翌朝。


寧々は、早くから茶々の訪問を受けていた。


「相談したい事がある、出来れば内密に――」


阿古の縁談の件で忙しい最中ではあったが、時間を作れない訳ではない。

人の出入りが少ない奥の部屋に、茶々を通す。


やって来た茶々は、侍女を二人従えたまま、座るなり切り出した。


「副田様は四天王寺にて出家されたそうです。」


「え?」


「会いに行きたいので、お許し願いたく。」


「……お茶々?」


あまりにも直球すぎる要求に、寧々は思わずこめかみを押さえた。


「出来れば、旭様と阿古殿も連れて行きたいのですが。」


「頭が痛いわ……。」


思わず本音が漏れる。


「甚兵衛殿を呼び出せばいいのでは?」


「北政所様のお呼び出しでも、大坂に戻って来られると思います?」


「……思わないわねぇ……。」


二人して腕を組む。


しばし沈黙が流れたが、茶々が口を開いた。


「――住吉大社への参拝、というのはいかがでしょう。」


「参拝?」


「はい。旭様と阿古殿の良縁祈願という名目で。」


一拍。


「その折に、副田のおじ様とお会いできれば。」


寧々はゆっくりと頷いた。


「……最もな理由ね。」


そして、小さく笑う。


「いいわ。手筈はお茶々に任せる。」


「ありがとうございます。」


「殿下には“住吉大社への参拝”とだけ伝えておくわ。」


「助かります。」


――話は、決まった。


***


茶々はすぐに動いた。


萩乃を通じて甲賀の者たちへ指示を飛ばし、副田甚兵衛への接触を図る。


返ってきた報は、予想通りだった。


「最後に、旭と阿古に会いたい、と。」


(……そうよね。)


茶々は静かに息を吐く。


(あの人が、このまま終わる訳ない。)


そして、阿古の縁談もまた決まった。

相手は公家、万里小路家の御曹司。

大坂城で阿古を見かけ、一目惚れしたらしい。


(まぁ……分かる。)


阿古は、旭によく似た和やかな美人だ。


豊臣の養女として迎えられ、婚約。輿入れは一年後。

それまでの間、阿古は寧々のもとで礼儀作法を学ぶこととなった。


すべて、盤面は整いつつある。


そして、数日後。


茶々は、旭と阿古を伴い、住吉大社への参拝へと出立した。


供には於孝と萩乃。


そして――


(問題は、これよね。)


護衛として付けられたのは、加藤清正と大谷吉継。


(よりによって、この二人……。)


輿の中で、茶々は頭を抱えていた。


(どうする?)


茶々は知恵を絞る。


(気絶させる?……いや、無理。ゴリラ二匹、無理。……毒?……いや、後が怖い。

説得?……通じるかしら。)


考える。とんちが得意なあの坊主のように考えるが……。


(……無理。何も浮かばない。)


結論:詰みかけ。


茶々があーだこーだ考えていると、一行は四天王寺を過ぎたあたりの茶屋で、休憩を取ることとなった。


茶々は一人外へ出て、茶屋の周辺をブラブラと歩く。


(さて……どう動くか。)


「一の姫様。」


突然声を掛けられ振り向くと、清正と吉継が立っていた。


「……何か?」


二人は顔を見合わせ、清正が一歩前に出る。


「おっか様から、きつく言われました。」


「北政所様から?」


「はい。」


清正が真っ直ぐ言う。


「何を見ても、何を聞いても、決して殿下には申すな、と。

某も大谷紀之介も、これからの事は口外しません。」


「……誠ですか?」


茶々は二人をじっと見つめる。


「俺も虎も、嘘は言いまへん。」


「……ホンマに、言うたらあかんさかいね。」


吉継の近江訛りに、ふっと肩の力が抜ける。


(……ああ、なるほど。寧々様が先回りしてたのね。やっぱり、寧々様に相談して良かった。)


茶々は、にこりと笑った。


「ほんなら、宜しゅうお願いします。」


「「はっ!」」


二人は揃って頭を下げた。


(――よし。)


茶々は静かに目を細める。


(これで、邪魔は入らない。あとは――会うだけ。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ