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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
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旭の決意、踏み込む茶々

「……何としても、徳川を懐柔させたいのよぉ……。」


手当てを受けながら、秀吉が呻くように言った。


その言葉に、智は顔をしかめる。


「何も旭でなくてもええがね。」


智の低い声が落ち、その場の全員が静かに頷いた。


「他に誰がおるんや?」


「う〜ん……お公家様の娘か、家臣の娘を養女にして……」


「姉やん。」


秀長が、すっと口を挟む。


「あかん。兄さが手ぇ付ける。」


「……ああ。」


全員、納得。


「そ、そこまでせんわ!!」


「はぁ?」


智が即座に切り返す。


「目に付いた女、片っ端から手籠にしとるやろが。」


沈黙。


(おい秀吉さん。アンタほんまに何しとんねん。)


「はぁぁ……。」


仲が額を押さえる。


「なんでこんな女狂いになってもうたんや……。」


「おっかぁ。兄さのこれは、もう病気だでぇ。」


秀長がバッサリ切り捨てた。


(言い方。)


「弥右衛門さも、その気があったけどよぉ……。ここまででは無かったわぁ。」


(おや、意外な事実……。)


「オラァはどこで育て方を間違えたんや……。」


仲はガックリと肩を落とす。


旭はようやく落ち着きを取り戻し、隣で阿古の手を握るお江は、まだ離さない。


(……さて。)


茶々は、視線を伏せた。


(ここまでは、想定通り。問題は……この後だ。)


茶々は静かに目を閉じる。


(……どう動く?)


「……兄様。」


旭が、ゆっくりと顔を上げる。


「私、行きます。」


部屋の空気が止まった。


「え!?」


「い、行ってくれるんか!?」


「戦をせん為でしょう?」


旭は、まっすぐに言う。


「他におらんのやったら、私が行くしかないで。」


「待ちゃあ!!」


「行く必要にゃーで!!」


仲と智が必死に止めるが、旭は一歩も引かない。


(……あ、そうだ。)


茶々は、ゆっくりと息を吐いた。


(ここだ……。)


心の奥で、何かがはっきりと形を取る。


(……これ、チャンス?……でも。)


視線を上げる。


(いや、行くしかない。)


「兄様、条件があります。」


旭が続ける。


「阿古の嫁ぎ先が決まってから、徳川様の元へ行きます。」


「母上……!」


「アンタ一人残して、行けるわけないやろ。」


静かな声だったが、揺るがない。


「……分かった。」


やがて、秀吉が頷いた。


「阿古には……最高の縁談、用意したる。」


「では。」


少し間を置いて、茶々が口を開いた。


「旭様のお供には、茶々をお付け下さい。」


「お〜!分かった、分かった〜!……………え?」


全員が茶々を見た。


(あ、言っちゃった……。意外とすんなり出たわ。)


「……は?」


秀吉の間の抜けた声がもう一度響く。


「お茶々様!?」


少し遠くへ行っていた旭が目を見開く。


「旭様お一人では心細いでしょう。」


茶々は、穏やかに微笑む。


「身内同然の私が付いて参ります。」


「で、でも……!お江様は……?」


旭が戸惑うのは当然だ。


「嫌です!!」


お江が茶々に抱きつく。


「姉上!お願い!……行かないで!!」


(……うん、そうなるよねぇ。)


茶々は一瞬だけ目を伏せる。


「旭様。」


旭へと視線を戻す。


「敵方の陣中に入るのですよ?丸腰で行くおつもりですか?」


「い、いや……それは……。」


「護りも、交渉も、出来る者が必要です。」


(ここで、押し切らないと……。また詰む。)


「――私が、その役を務めます。」


空気が、張り詰める。


「……あかん!!」


秀吉が叫んだ。


「お前はここにおれ!!

旭には、それなりの者を付ける!!」


「そのような者に、心当たりは?」


「い、今から探す!!」


「それでは、遅うございます。」


茶々は即答し、秀吉を黙らせる。


「それでも!!お前が行く必要はにゃー!!」


「でしたら。」


それでも秀吉は食い下がってくるので、茶々は微動だにせず言い放った。


「旭様が行く必要も、ございませんね?」


――沈黙。


(ふふ、詰んだわね。秀吉。)


「……ふっ……ああ言えばこう言う。」


秀長が、小さな笑みを浮かべながら、小さく呟く。


その時、寧々が場を仕切り直すため、一歩前に出た。


(さぁ。)


茶々は、静かに息を整えた。


(ここからが、本当の勝負よ。)


「お前様、ちょっと黙って。」


寧々の一言で、場が静まる。


「お茶々。其方の言い分はよう分かる。

旭殿一人を行かせれば、城奥の女達に陰でいびられるかもしれん。そう心配するのは当然やね。」


「はい。女のやる事は陰湿ですから。」


「か、関白の妹たる旭に対してそんなたわけがおるんか!?」


「殿下。先ほど申し上げましたでしょう?女のやる事は陰湿なのですよ。」


一歩踏み込む。


「例えば……徳川様のご側室に仕える侍女や女房。突然やって来た旭様を、どう思われるか。」


すると、今まで黙っていた仲と智が、茶々の手を取った。


「お茶々……旭を守ってくれるんか?」


「はい。茶々にお任せください、ババ様。」


にこりと笑う。


「喧嘩売って来るようなら、買ってやるまでです。」


「お茶々……ええ()や。」


「ですから、私の代わりに……お江を。」


「うん、勿論や。お江のことは私と母様に任せてちょう。

寧々さんも竜子さんもおるし、心配いらん。」


智がお江の頭を優しく撫でる。


「なぁ、お江。アンタは一人じゃない、私らがおるで。

アンタもお茶々も、いずれは嫁いで行く身や。

離れて暮らすんが少し早なっただけだわぁ。

だから、そんなに泣かんでぇ。」


お江がようやく顔を上げた。


「……ババ様も、智様も……江を一人にしない?」


「あたりみゃーだわ。おみゃあはなんも心配せんでええ。

嫁ぐまで責任持って面倒みたる。

だからそんな泣かんでぇ。目が溶けてまうがねぇ。」


お江は小さく頷いた。


気づけば、話は決まっていた。


旭は徳川へ。そして茶々が付き従う。


「さてと……。」


寧々が手を叩く。


「やる事があるで。」


「やる事?」


「阿古の嫁ぎ先だで。」


「あ、ああ……そうじゃな。虎、市。」


「「はっ!」」


「阿古と歳が釣り合う、未婚の者を探せ。」


「「ははっ!」」


「佐吉。」


「はい。」


「徳川へ直ぐに使いを出せ。」


「畏まりました。」


「紀之介は補佐を。」


「承知。」


場が一気に動き出す。


「殿下。」


茶々が静かに口を開く。


「旭様に付き従うのは、茶々であるとお伝え下さいね?」


「儂は許しとらん。」


「……ふぅ〜ん……ねぇ、石田殿。」


「はい、一の姫様。」


「徳川様へ、旭様のお付きは茶々であると、しかとお伝え下さい。」


三成がわずかに身を強張らせる。

三成がそっと寧々の方へ視線を向けると、寧々は静かに頷いた。


「佐吉、お茶々の申す通りじゃ。」


「はい。」


「おい!儂は許しとらんで!」


「小六さ、この人連れてってちょう。」


「うむ。ほれ、藤吉郎。」


「お、お茶々ぁ……」


茶々は軽く視線を流した。


(あの野郎、やっぱり私を側室にしようと考えてたか……。)


茶々は、仲と智へ向き直す。


「お江のこと、よろしくお願いします。」


「任せとき。」


「指一本触れさせん。」


「……はい。」


お江はしっかり頷き、茶々は静かに目を細める。


(さてと、盤面は動いた。)


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