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人生五度目。浅井茶々は遂に開き直った〜今度こそ、生き残らせてもらいます!〜  作者: 奈羅
第一章 タイムリープ五周目、開き直って何が悪い!
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五度目の人生、バグり過ぎ

(……私の阿呆。)


茶々は項垂れていた。


(いま、天正十二年だよ。

来るんだよ!小牧長久手の戦いが!)


なんだか、自分が嫌になる……。


(なんで忘れてた!んな重要イベントをぉぉー!!)


「お茶々様、何か悩み事?」


旭が不思議そうに覗き込む。


本日は、旭から縫い物の指南を受けている。

武家の女、縫い物の一つや二つ出来ないとダメだからね。


「……奥でも、話に出てるん?」


「……え?」


「藤吉郎の兄様が、三介様と戦になるかも知れんって。」


「……小耳に挟んだ程度です。」


「旦那様、久々の戦や言うて張り切っとるんよ。」


――その言葉に、茶々は僅かに目を伏せた。


(信雄様につくのは徳川。その後、旭様は……徳川へ。)


茶々はふと、手を止める。


(じゃあ、副田のおじ様と阿古殿は?

……否が応でも、巻き込まれる……。)


小さく息を吐く。


(それでも……。どうか……。誰も不幸になりませんように。)


「お茶々様、集中できとらんね。」


「……面目ない。」


「想い人はおらんの?」


(秀吉?……却下。今世では関わりたくない。)


「父上と母上……皆です。」


「んなら、その人に届けるつもりで縫いな。」


針を動かす。ひと針、ひと針。


(……まぁ。)


手を動かしながら、口元を小さく歪める。


(そう簡単にいかんよな。)


***


天正十二年三月。


秀吉は、織田信雄への出兵を決断した。


――大坂城の空気が、変わる。


奥御殿ですら、どこか張り詰めた気配が漂っていた。


「織田様と戦かぁ……。」


そんな中でも、茶々はいつも通り畑を耕していた。

……いや、耕している場合ではないのだが。


(じっとしてる方が無理。悪い方向に考えるん。)


今日は、阿古とお江も一緒だ。

仲はぽつりと呟く。


「人生、何が起こるか分からんもんやなぁ……。」


「父上が張り切っておりました。」


阿古の言葉に、仲と茶々の手が止まる。


「甚兵衛さんがか?」


「はい。」


「副田のおじさま、庭で槍とか刀の手入れしてましたの。」


お江が続ける。


「それ見て……怖くなって……。」


少しだけ、声が小さくなる。


「阿古姉様の後ろに隠れてしまいました。」


――北ノ庄城の記憶。


あの炎と、あの音。


忘れたはずのものが、ふとした拍子に蘇る。


「そしたら……。」


お江は、少しだけ笑った。


「旭様が“このたわけぇ!”って、おじさまを引っ叩いてましたの。」


「……はぁ〜……。」


仲が深くため息をつく。


「何をやっとるんやぁ……あの子は……。」


(……空気、重いな。)


茶々は、手を止めたまま考える。


話題を変えようとした、その時――


「……あ。ウグイス?」


まだ拙い鳴き声。けれど確かに、春を告げる音だった。


「どこ?」


「お江様、耳を澄ませてみてください。」


阿古が両手を耳に当てる。

江も真似をして、目を閉じる。


「……本当だ!」


ぱっと顔を上げる。


「聞こえたわ!」


「もう春なんやねぇ……。」


仲が空を見上げる。


(こんなに穏やかなのに。……戦は、すぐそこまで来てる。)


その日の夕暮れ。


「今日はこの辺でええやろ。」


仲の言葉で、作業は終わったので、お江を部屋まで送り届ける。


「湯浴みの支度が整っております。」


お江の乳母の(よし)に任せ、茶々はそのまま自室へ戻った。


部屋には、萩乃だけがいた。


「萩乃。」


茶々は静かに座る。


「何か分かった?」


「はい。ご報告に。」


萩乃の前に腰を下ろして向き合い、報告を静かに聞く。


「池田恒興様が、筑前様に与しました。」


(ここは、いつも通り……。)


「それを受けて、徳川様は小牧山へ。

森長可様もご出陣。」


戦は、もう始まっている。


そして、次の報告で茶々は首を傾げる。


「岡崎の松平信康(まつだいらのぶやす)様も、ご出陣されたとのこと……。」


(……ん?待って。なんで――)


眉間に皺が寄る。


(松平信康が生きてるん?

……いやいやいや!!あの人、生きてんの!?)


茶々は頭の彼方の記憶を手繰り寄せる。


史実では若くして亡くなった、信康。


一度目は、病で死んだ。

二度目は…………どうだったっけ?ぶっちゃけ、覚えていない。

三度目は、家康と対立して、妻子と母を連れて織田家へ出奔………だった気がする。

四度目も家康と対立して、死んだ。


そして、今回は……生きてる。


しかも、徳川を継がない宣言までしている。


『俺は岡崎家当主だ!徳川は弟たちの誰かに継がせれば良い。その代わり、岡崎は任せろ!』


「姫様?」


「……ああ、ごめん。岡崎が気になって。」


(信康の正室である五徳様。あの人も……おかしい。)


母方の従姉である、織田信長の長女・五徳姫。


この人は、何故か母親が違う。しかも毎回である。


「御母堂の安土の方様を、岡崎へ呼び寄せたそうです。」


「安土様を岡崎へ?」


「はい。」


(……今世では、正室の濃姫の娘なんだ。)


茶々は織田家で暮らしていた記憶を思い出す。

茶々たち三姉妹を可愛がってくれた義理の伯母である濃姫。

美しく、そして、どこか底知れない人だった。


(……いやいや、待て、待てぇ!)


茶々はほんの僅かに目を伏せる。


(今回、バグりすぎやろ。

この世界……本当か私が知ってる世界か!?)


***


秀吉は、三万の兵を率いて出陣した。


大坂城には、重苦しい空気が残る。


お江は、露骨に怯えていた。

北ノ庄の記憶が、まだ消えていない。

それはお初も同じだった。


茶々は二人を励ますが――効果は、いまいち。


(……どうしたもんか。)


それでも、日が経つにつれ。

二人は、少しずつ元の調子を取り戻していった。


(……まぁ、よかった。

秀吉は………帰ってくんな。流れ弾でも当たれ。)


――もちろん、心の中だけで。


そして、十月に戦の報が届いた。


結果は――惨敗。大惨敗だ。


数では勝っていた。数では圧倒してたんだよ。


それでも――徳川と岡崎に、叩き潰された。


(……やっぱり。あの親子、ヤバい。)


徳川家康、そして――松平信康。


信康は舅の信長より、武田内通を疑われた。

しかし、信康は身の潔白を証明する為、出家し寺に入った。

五徳もまた、夫の無実を証明する為、信康の後を追って寺に入った。


信康の母・築山殿は息子夫婦と孫たちを守る為に、己の命を信長に捧げた。


『信康も五徳も、わたしくしも、武田に内通などしておりませぬ。』


築山殿自害により、織田と徳川が戦になりかけた。

それを止めたのが、信忠と濃姫だった。


(修羅場、潜りすぎでしょ……。)


茶々は、静かに呟いた。


「徳川様に岡崎三郎様……。」


「敵に回したくない御方ね。」


「誠に。」

茶々のこれまでの知識と経験、そして歴史知識はどこまで通用するのか?

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築山殿は生き残れなかったか……
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