結婚式。
アニエスとクリストフの件から数ヶ月の時が経った。
私は無事ジェラールとの結婚が白紙に戻り、実家に戻ってきている。
クリストフだけでなく、バンギー二商会も裏で違法の薬物を他国から下ろしていたことがバレて、営業停止処分となった。
そのおかげでマルグリット商会は今まで以上に繁盛している。
「クリスティーナ。あなた、もうすぐ結婚するのにいつまで働くつもりなの?」
「お義姉様!! 私、今が一番楽しいのです。もちろん伯爵夫人としての仕事はしますが、できればこのままここで働かせてもらえませんか?」
クリスティーナには私の代わりに服飾部門の統括をお願いしている。私もデザインを描く時はあるけど、今はそういった部分も含めてクリスティーナが行ってくれていた。クリスティーナが代わりをしてくれるため、他の事業にも手を出しやすくなったのは確かである。
「それは願ったり叶ったりだけど……ジェラールは何も言わないの?」
あの後、ジェラールはリハビリをしながら少しずつ領地経営について学んでいる。サフィールと話が合うようで、時間があれば二人で勉強をしている。
「はい。クリスティーナの好きにしていいと。それにお義姉様のところにいれば安心だし、色々学べることもあるだろうから学んできなさいと言っていました」
「ならいいのだけど……」
それより、なぜスージーにしても、クリスティーナにしても私のことを姉と呼ぶのだろうか……。スージーはサフィールとのことがあるから何となく分かるけど、クリスティーナにしては謎である。
「それよりも、あなたたちは結婚式しないの?」
来月結婚すると聞いてはいたものの、結婚式をするとは聞いていない。
一応伯爵家と王家の結婚だ。普通であれば結婚式をするところだけど……。
「あぁ……今回色々あったので、しないことにしたんです。領民の皆さんに返さなくてはならない部分もありますし……」
アニエスが使ったお金は確かに全額何に使ったか調べることができたけど、消耗品などに使った分もあるので、そちらについては返さなくてはならない。
それに減額申請していた分の税金と罰金を伯爵家で払わなくてはならないのだ……。
「そう……よね……」
年頃の女の子だ。結婚式は夢だっただろう。何かいい方法がないか、少し考えていると……一つのことが頭に浮かんだ。
「クリスティーナ! あなたを私にプロデュースさせてちょうだい! ドレスは……以前デザインしたものを少し変えましょう! そしてあなたはたくさんの貴族をパーティーに招待しなさい。いい? これは仕事よ?」
クリスティーナは少し首をかしげながら、
「分かりました。会長のご指示ですので、すぐ会場と貴族を招待します」
と言ってから部屋を出ていった。
***
クリスティーナ視点。
マーガレットお義姉様から、準備をするように言われてから一ヶ月経ちました。
ジェラールにもお願いをして貴族の方々に招待状を出し、会場はお父様に相談したところ、「王宮を使いなさい」と仰ってくださったので、ありがたく王宮を使わせてもらうことにしました。
お母様ともお父様ともお兄様とも、マルグリット商会で働き始めてからの方が会話をするようになった気がしています。
そして明日はいよいよ結婚式当日です。
明日の結婚パーティーは全てお義姉様がプロデュースしてくれるということで、今からとても楽しみです。
なんでもドレスを途中で着替えたり、立食パーティーというものが催されたりするそうです。
ちなみにドレスは白と青色にしていただきました。
立食パーティーについては、皆が好きな時に食べて飲めるようにすることで、長い時間退屈することがないようにするんだと仰っておりました。
それから両親への手紙を読み合います。ジェラールは両親が亡くなっているので、天国の両親に向けて、私は二人に向けて手紙を用意いたしました。
それからダンスの時間があり、締めくくりのダンスを夫婦で踊って終わりになるということでした。
最後に夫婦で踊ることで「これからも一緒に」という願掛けも兼ねているらしいです。
「そんな色々やるんですか?」
「えぇ、そうよ! これでうまくいったらウエディングプロデュース部門を立ち上げようと思っているわ!」
「そ、そうですか……」
お義姉様の考えが難しすぎることが多いのですが、今回は何とか理解できて良かったです。
私がお義姉様の言葉に詰まっていると思ったのでしょう。私の反応を見てお兄様が耳打ちしてきました。
「あぁ見えてクリスティーナの結婚式を楽しみにしていたんだ。だからクリスティーナもこの結婚式を楽しみなさい」
お兄様の言葉に少し嬉しくなりました。
だってお義姉様には色々と迷惑をかけてまいりましたから……。
そして当日。
全ての支度を終えると、お母様がクレアを連れて入ってきます。
「クリスティーナ。とても綺麗よ! あなたが想う方と結婚できてよかったわ。今まで言いすぎてしまった部分もたくさんあると思うけど……私はいつまでもあなたの味方だから。幸せになりなさいね」
そう言ってベールをゆっくり下ろしてくれるお母様。
「ありがとうございます。お母様」
確かにうるさいと思ってしまうことがありましたが、今になって思います。
あれは私のために言ってくれていたんだと……。
それからお父様やお兄様、お義姉様にスージーと、たくさんの人が部屋に来ました。
いつの間にか私にもお友達と呼べる人がたくさんできていたんですね。
もう一人だった時とは違うんだなと思うと、今がとても幸せです。
「クリスティーナ。そろそろ時間だ。行こうか」
そう言ってゆっくり歩いてくるジェラール様の腕に手を回しながら、私たちは会場までの道を歩きました。
「クリスティーナ。これから色々起こるだろうけど。一緒にいてくれるかい?」
「もちろんです! 末永くよろしくお願いいたします」
二人で顔を見合わせてから、ゆっくりと会場に向かいました。




