契約結婚終了!
アニエスとクリストフの罪状が伝えられる数日前。
私はある人のところを訪れていた。
「こんにちは。体調はどうですか?」
「マーガレット嬢。久しぶりだね。この数年のことはモヤが掛かっていて、あまり覚えていないことが多いんだが、少しずつ身体も動くようになってきたよ」
お見舞いに持ってきた花束と果物を渡す。
「そうですか。それは良かったです」
医師の話では、薬を何年も嗅いでいたことでもしかしたら薬が抜けきらない可能性もあるかもしれないと聞いていたが、時間をかけて治療してきたことで、なんとか元の状態には戻ったようだ。
初めの頃は幻覚症状が現れたり暴れたりして大変だったそうだが、今では幻覚を見たりパニックに陥ったりすることもないらしい。
「それで……君と結婚した件なんだけど……ごめん。全然覚えていなくて」
「それは仕方ありません。結婚式の時はそれはそれは二人の態度にイライラしましたが……きちんと理由が分かりましたし、大丈夫ですよ。それにジェラール様。あなたはこれから困難な道に立つことになるでしょう。これから先、前公爵に恥じないように生きてくださいませ。それが私からの罰です」
「あ、あぁ……ありがとう。これからは自分の足で立ってきちんと生きていくよ。それで結婚についてだけど……」
そうですね! いつも「私、結婚していたのだわ」と思うくらいの状態ですし、元々契約結婚だったので、そんなに辛そうな顔で話す必要はないと思うのですが。
なんだか、私が悪者みたいな感じがしますね……。ジェラール様の顔が整っていて、儚さがより増しています。
「はい。元々契約結婚でしたし、離縁はいつでも構いません。それに今回は白い結婚として処理していただけるよう国王陛下には頼んでおります。クリスティーナも関わっているためか、簡単に頷いてくれましたよ」
「本っ当にありがとう!! そう言ってもらえて荷が降りたよ」
「それで、最後に私から一つお願いがあるのですが……五日後、王城に来ていただけませんか?」
五日後。
アニエスとクリストフの罪状が伝えられる日だ。
その日はクリスティーナも登城することになっている。
今はクリスティーナも落ち着いて仕事をしているし、できれば会わせてあげたいなと思っていた。
「分かった。五日後だな。そろそろ私も登城しなければと思っていたところだ。その……クリスティーナは元気だろうか」
「えぇ。元気ですよ。きっと近いうちにお会いできるのではないでしょうか?」
それだけ伝えると満足したのか、小さい声で「良かった」と言っていた。
色々あったけど、二人がまだ思い合っているようで安心した。
あえてここでは五日後に会えることを伝えることはせず……私は話を切り上げて病院を後にした。
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ジェラール視点。
マーガレット嬢が来てから五日が経った。
ここ数年の記憶が曖昧だったこともあり、自分がマーガレット嬢と結婚していたことすら記憶になかった。
マーガレット嬢には本当に申し訳ないことをしたと思う。
罪悪感が大きいが、この罪悪感はこれから私自身が背負って生きていかなければならないものだろう。
「さて、向かうか」
ゆっくりではあるが、杖なしで歩けるようになったのは良かった。
王城に着くと、アルヴィエ侯爵が待っていた。
「お待ちしていましたよ。フェザリス公爵。以前よりだいぶ顔色が良くなりましたね」
アルヴィエ侯爵は、私を病院まで連れていってくれた一人だ。
元々はファレノプシス伯爵が来る予定だったらしいのだが、アニエスのことやクリストフのことで忙しく、代わりにアルヴィエ侯爵が助けに来てくれたとのことだった。
そのおかげでここまで回復することができた。
「アルヴィエ侯爵。その節は大変世話になった。おかげでここまで回復したよ。この借りは必ず……」
「ハッハッハ!!! いやぁ。元々はそういう性格だったんですね。今の方が全然いいじゃないですか!! さぁ、行きましょうか」
豪快に笑うアルヴィエ侯爵。もっと厳しい方だと思っていただけに意外な反応だ。それにしてもそんなに変わったか……? 自分ではそんなに感じないのだが……。
アルヴィエ侯爵について行くと、謁見の間の前に着いた。
「ここで待っていてください。扉が開いたら入ってきていただきますようお願いします」
それだけ言うと、アルヴィエ侯爵は謁見の間の中に入っていく。
それからしばらくして、中がザワザワし始めた。
一体何が起きているのだろうか……。この中に入っていくのは少し気が引けるが、扉がゆっくり開いたので中に入っていくと、国王陛下の前には二人の男女が膝をついて拘束され、その横にはクリスティーナと王妃が立っていた。
どうやらここでは二人の罪状を伝えていたらしい。
クリスティーナを愛していると叫ぶ男を見て、頭に血が上る。
こいつらが全てを……そう思っていると……拳を振り下ろしていた。
「クリスティーナ……」
「ジェラール様……」
皆がいなくなったあと、私たちは磁石のように引き寄せられる。
「会いたかったです。ジェラール様」
「私もだ。クリスティーナ……その……よかったら結婚しよう。もちろんクレアも一緒に……色々遠回りしたけど、幸せにする」
「で、でも……マーガレットお義姉様と……」
マーガレットお義姉様!?!?
いつの間に姉になっていたんだ!?!?
ん? どういうことだろうか?
もしかしてサフィールと結婚したということか!?
そう思っていると、ガチャリと扉が開き、国王陛下、王妃様、ディグレッド王太子殿下、ファレノプシス伯爵、そしてマーガレット嬢が中に入ってきた。
「クリスティーナ。安心しなさい! 私たちの結婚はなかったことになったのです。これは国王陛下からも許しを得ています。そうですね? 国王陛下!!」
「あ、あぁ……そうだ。だからお前の自由にしなさい。クリスティーナ……そしてフェザリス公爵よ。君は確かに被害者だが、このままというわけにはいかぬ。そのため今回は爵位を公爵から伯爵に降爵することとする。今ある領地の一部を速やかに返還するように。ここからは父としての助言だ。二人でいい家庭を築きなさい。そして何かあればすぐ頼ること。私たちは君の親なんだから……分かったね?」
「「はい、お父様/義父上」」
色々あって平民になる覚悟もしていたが、まさかの爵位を残してもらえるとは思ってもいなかった。
クリスティーナに見えないところでコソリと義父上が言ってきた一言は一生忘れないだろう。
「本当は爵位取り上げのところをマーガレットが色々根回ししてくれたんだ。もうマーガレットを敵に回すのはやめなさいね。それと女性は強いから……喧嘩したら謝った方がいい……」
その言葉にこくりと頷いた。




