二人の末路。
二人を捕縛したあと、私たちはその足で王都に戻った。
ローラー作戦はうまくいき、死者を出すことなく捕まえることができたとサフィールに聞いた。
あとから聞いた話だと、今回暴動を起こした領民たちは、やはり税金が上がったことに対し不満が爆発したことが原因だったそうだ。
王都側にいた貴族のような身なりをした人たちは、元貴族だった者たちで、トマト前公爵が集めたらしい。約二十年前に、アニエスが原因で何人もの人が貴族位を剥奪された。
ほとんどの人たちがお父様と同年代、もしくはそれより上の人たちばかりで構成されていた。
おかげで逃げ切ることもできずに、すぐ捕まえることができたそうだ。
やはり身体は鍛えておかなければ年齢には敵わないとお父様が仰っていた。
そして、アニエスたちを捕まえてから一年。
余罪が多くて全てを調べ終えるのに時間がかかってしまったが、本日二人には国王陛下の前で罪状が伝えられることになる。
「皆の者。よく集まってくれた。今日呼んだのはアニエス・ボルテール並びにクリストフ・バンギー二のこれからについて伝えるためだ」
国王陛下が一声かけると扉が開き、二人がトボトボ歩いてくる。衛兵たちには「早く歩け」と小突かれている。
久しぶりに見た二人は以前よりも老けていた。
「さて、アニエス・ボルテール、クリストフ・バンギー二。何か言っておきたいことはあるか?」
「わ、私は何もしておりませんわ! どうか信じてくださいませ。ペリドットさまぁぁ!!」
甘い声を出しながら国王陛下に擦り寄っていこうとするアニエス。
そんな姿をナメクジを見るような目で見ている国王陛下。それ以上に酷いのはエルミニア王妃の顔である……。
「ペリドットさまぁぁ。私、貴方様の言うことであればなんでも聞きますわぁ。ですから信じてくださいませ。ねっ! お願いしますぅぅ!!」
その言葉と同時にバキリと何かが折れる音がした。音が聞こえた方を見ていると、顔はにこやかなのに後ろにはドス黒い何かを背負っているエルミニア王妃がツカツカと歩いてアニエスのところに向かっていく。
アニエスの前に着くと上から見下ろして、勢いよく足を振り上げた。
このままでは足が頭を踏み潰すのではないか……と思ったが……頭スレスレの所に踵が落ちた。
「おい、クソババア。よく鏡見てみろよ。どこからどう見てもただのクソババアだ。お前なんかに靡くやつはもうどこにもいねぇんだよ」
そう言ってエルミニア王妃はアニエスに鏡を突きつけた。
初めて鏡を見たんだろうか。もしくは今の自分を見たくなくて鏡を隠したのか……今思えばフェザリス領には一つもなかった。
鏡を見た瞬間……。
「あ"……ぁ"ぁ"……」と獣のような声を出し始めたのである。
「こんなの私じゃない。私は美しいのよ。誰よりも美しいの。こんなの私じゃないわぁぁぁ……」
アニエスの姿を見て、もはや誰も何も言う者はいなかった……。
気を取り直したように国王陛下がクリストフへ顔を向ける。
「クリストフ・バンギー二。お前は何かあるか?」
「私はアニエスに唆されただけです。今も昔もクリスティーナだけを愛しています。もちろん私との子であるクレアのこともです。クリスティーナ、助けてくれ! 頼む。俺にはお前しかいないんだ……」
あれから無事クリスティーナの子供は見つかった。少し衰弱はしていたものの命に別状はなく、現在はクリスティーナと一緒に暮らしている。
クリスティーナは王族に戻ることはなく、今はマルグリット商会で働きながら子育ても頑張っているところだ。
そうそう、余談だがクリスティーナのおかげで、小さい子供がいる人も働きながら子育てできるよう保育部署を立ち上げた。仕事時間は子供を預けて働けるようにするためだ。意外にも子供がいるから働くのを我慢していた人が多く、少しの金額で預けられるならと結構人気だ。
子供に何かあったら大変なので細心の注意を払わなければならないけど、これから国家事業にもなっていくような、そんな気がしている。
そんなクリスティーナが今、クリストフのことをすごい顔で睨んでいた。
「私、あなたと体の関係を一度も持ったことはございません。ずっと脅迫されていました。クレアはあなたとの子ではなく、ジェラール様との子です。ですので、私の前に顔は出さないでくださいませ。それに私はもう王族ではございませんので……あなたの好きなお金は手に入りませんわ!!」
クレアをエルミニア王妃に預けると、クリストフの頬を勢いよく叩いた。
母強しである。
「そ、そんな、俺と愛し合っていたじゃないか……!!!」
クリストフが大きな声で喚き始めると同時に、扉がガチャリと開いた。
カツカツとこちらに歩いてくる足音が聞こえる……。
「いい加減にしてくれないか。私の愛しいクリスティーナと娘のクレアをこれ以上苦しめるのは許さない」
クリストフの顔を思い切り殴ったのは……。
最近まで床に伏せていたジェラールだった。
「何とか間に合ったようね」
私の言葉にディーが反応する。
「マーガレット……もしかして……」
「そうよ! ナイスタイミングでしょ。そろそろ二人を引き合わせてあげたかったの。クリスティーナのおかげで新しい事業も大成功! 愛しの金貨ちゃんにもたくさん会えたわ! もう十分返してもらったもの。ジェラールもずっとリハビリを頑張っていたからね。このタイミングがちょうどいいと思ったの」
ありのままの言葉を伝えると、ディーは「ありがとう」と返してきた。
クリスティーナ……ディーがクリスティーナのことを嫌いだと思っていたみたいだけど……ディーはあなたのことを大切に思っているわ! だから安心しなさい。
「さて、今回の被害者を含め全員が揃ったところで罪状を伝えよう。アニエス・ボルテール、クリストフ・バンギー二、二人は島流しの刑に処す。島流し先は一番労働が過酷な場所を選んだ。そこで働いた金額は全て国に返還してもらう。簡単に死ぬことは許さん。連れて行け!!」
国王陛下が合図をすると、二人はそのまま目隠しをされた状態で島流しにあったという。
その後どうなったのかは誰も知らない。




