悲劇結婚式会場
たくさんの人から来る視線が痛い…
「わ、わ、わたくし…グスッ…この女性のせいで…グスッ…知らない殿方に手篭めにされてしまい…グスッ…純潔を失ったのです…グスッ…そしてジェラール様までそこの女性に取られてしまいましたの…グスッ…」
はぁぁぁぁあああ???
ここで謝罪をするのではなかったのか!?
そもそも何故私のせいになっているのか全然分からない。
ベールを被っていたことに感謝する。
もし被っていなければ…周りに今の顔がハッキリくっきり見えていたことだろう。
お父様や国王陛下の方を見ると、クリスティーナ様のまさかの発言にびっくりしているようだ。
「私は誰とも知らない子を産み、育てることになりました…グスッ…そのため今回の結婚はマーガレット様にお譲りすることになりました。」
誰とも知らない子って。いや、お前とお前がよく知っている平民の子でしょ!?!?
そんなこと言われたらお腹の子供が可哀想だ。
クリスティーナ様は自分のことをよく理解した上で、このようなことを言っているのだろう。今までも奉仕活動や視察など前向きに行ってきていた。
そのお陰で王太子殿下よりも支持率が高いくらいである。
それも今回の話を聞いて偽りの姿だったということが分かったのだが…。
「この泥棒猫!!」
「クリスティーナ様と同じ目に遭わせてやる!!」
「お前なんか死んでしまえ!!」
野次ばかり飛んでくることにため息が出るのは仕方ないだろう。
はぁ…本っ当にベールを被っていて良かったです。
「静まれ! クリスティーナも何を言っているのだ!?」
国王陛下が皆に静まるよう言っても、一切聞く耳を持たない貴族たち…。
普通だったら反逆行為に当たりますよ…。
ベールの下からクリスティーナ様を見ると、ニヤリと笑っているのが見えた。
「お父様は私の言葉を全く信じてくれませんでした…グスッ…私の味方をしてくれたのはジェラール様だけ…グスッ…ジェラール様を愛しているのに…結婚できないのが残念でなりません…グスッ」
きっとここまでが筋書きだったのだろう。
この国で貴族同士の初婚は純潔であることがとても大切になってくる。再婚する時もお互いが再婚同士、もしくは相手が亡くなったときで一年以上間が空いていないとできない。これは妊娠している可能性を考慮してだ。
白い結婚と証明ができれば待たなくても大丈夫だが、それを証明するには莫大な金額がかかる。
それを知った上でクリスティーナ様は話しているのだ。
フェザリス公爵とクリスティーナ様が元々考えた話だったようで、フェザリス公爵はそのまま続けて話し始めた。
「クリスティーナ…色々とすまない。マーガレットがこんなやつだとは知らなかったのだ。私の知らないところでお前を陥れるとは…私は責任をとってマーガレットと結婚してお前に被害がないよう見張っている…だが…これだけは覚えておいてほしい…お前のことは一番愛している。」
私の前で二人は抱き合っている。
一番愛しているねぇ…本当にバカバカしい。
お互いに好き勝手やっていたのに、こちらに責任転嫁ですか…。
恐らく、初めから筋書きを考えていて、結婚できなくなった理由を他の人のせいにしてしまおうと思っていたのか。
本当に腐っている…
それにまんまとはめられたのね。国王陛下とお父様は…。
「こんなに愛し合っている二人を引き裂くなんて本当に最低ね!」
「あなたなんか極刑だわ!」
「フェザリス公爵もあんな女と結婚なんて可哀想だわ…」
「国王陛下も国王陛下だ。自分の娘すら守れないやつが国を守れるわけがないだろう。」
「ファレノプシス伯爵も財務局長になってから調子に乗っているものね。奥さんにも逃げられたという話じゃない。やっぱり娘も娘ね…」
耳障りな声がキンキンと聞こえてくる。
お父様まで悪く言われるなんて。確かにお父様は厳格な方だ。でも不正なんて一つもしていない。逆に今まで野放しにしてきた不正を正してきただけなのに…。
クリスティーナ様を支持する声が多く、なかなか静まらない会場。国王陛下が諌めようとしても、もはや聞く耳を持つものはいなかった。
フェザリス公爵とクリスティーナ様は私たちを置いて早々にこの場を退出していく。
残ったのは国王陛下とお父様、王妃様に王太子殿下と弟のサフィールだけだった。
「はぁ…まんまとやられたな…」
国王陛下はため息をつく。
「そうですね…でも良かったかもしれませんよ。クリスティーナ様について行ったのは、犯罪の疑いがあるものばかり…元々自分を擁護してくれるであろう人しか招待していなかったのでしょう。」
確かに王女殿下と公爵様の結婚式だと言うのに、人が少なくなった気がする。
「クリスティーナの裏の顔を知っているのは、一部のやつだけだからな。これから痛い目を見るさ…」
「なんであんな子に育ってしまったのでしょうか…どこで間違えたのか…」
王妃様からしたら、まさか自分の娘があんなことをするなんて思いたくもなかっただろう。
「お父様…私はとりあえず三年間、フェザリス公爵の離れに住むことになりました。一応こちら誓約書です。お互い干渉はしないという約束。ですが、ちょっと今回のことでカチンときました…なので、早々に動きたいと思います。」
私はそれだけお父様に伝えると、この会場を出た。
時間が経ってから外に出たため、先程までうるさかった人たちはいなくなっていた。
「モニカ。これから忙しくなるわよ。楽しみね。」
「そうですね…お嬢様…」




