これで全ては私達のもの!
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アニエス視点。
「ふん、本っ当に昔からこの国は変わらないね!」
十年以上他の国に行き、久しぶりにこの国に戻ってきたが、今までどおり平和な国のままだった。
もう少し混乱を招くと思っていたのだが、どうやらうまく切り抜けたようだ。
ありがたいことに、十年以上経てば私の顔を覚えているものはほぼいなくなっていた。
酒場でひとり酒を煽っていると、隣に一人の男が座る。
その男は私に向かっていい話があると言ってきたんだ。
それから私はその男の提案のもと、フェザリス邸の使用人として働くことにした。
なんでこんな仕事しなくてはならない。誰よりも美しく、何人もの男を魅了してきた女だ。
普通だったらドレスを着て貴族たちが食べているような食事をするのが普通だろう……。
しかしそれも今だけだ。
時間が経てば大金が手に入る。
以前使った時と同じ薬をお香に入れ、ジェラールが寝ている間ずっとお香を焚き続けた。
お香には強力な幻覚作用を感じる成分が入っている。効き始めてしまえばなかなか元には戻れないだろう。
しかし、臭いがかなり強力だからね。
一気に使ってはバレてしまうため、まずは寝ている間だけ、徐々に昼間も少なめの薬の量から始めて、徐々に使用量を増やしていったんだ。
そしたら、あら不思議。
ジェラールにはどうやら私が母親に見えているようでね。なんでも言うことを聞く傀儡になってくれたよ。結婚しようと言われた時はどうしようかと思ったけど、マーガレットとかいう女に全て押し付けてやった。
顔は見ていないが、今頃悔しい思いをしている頃だろう。そう思うと笑わずにはいられなかったさ。
フェザリス家に潜り込んで何年経ったか分からないが、ここいらが潮時だろうと感じた私は次の行動に出ることにした。
これで全て私の物になると思うと楽しみでならないね。
「くっ……ふっ……ふははははは」
私だけでなくクリストフも同じように思っているのか、隣で宝石を手に持ちながら笑っていた。
***
クリストフ視点。
「そろそろ潮時だな……」
アニエスと画策してから、五年以上か……。
もっと早くバレるのではないかと思ったが、バレることなくたくさん稼がせてもらったぜ。
ただ、あの箱入り姫を相手にするのは憂鬱だった。
まさかアニエスの薬が効く前に二人が婚約者になり、本当の恋仲になるなど誰が思っただろうか。
あのタイミングで、前公爵が死んだのは誤算だった。せめてあと一年タイミングがずれてくれていれば、俺があんな姫を相手にする必要はなかったというのに……。
そろそろ潮時だと思っていたら、タイミングよくこの領地の周りを領民たちが騒ぎ始めたのには笑ったが。
不満が爆発するのも仕方ないわな……。
だって俺が仕組んだんだから!!!
理由もなく税金を少しずつ吊り上げていけば、そりゃ誰だって嫌だもんな。俺だって支払う側なら嫌だもん。
そのおかげでこちらはガッポガッポでしたが。
こういう時は商会の息子として生まれたことに感謝だ。
フェザリス邸に潜ませていた従者たちも一緒に街を出る準備を始める。
「最後にマグノリア商会のところに忍び込みたいな」
「あぁ、宝石っすか!? あの姫もバカっすよねー! なんでもクリストフ様の言うとおりにするんですもん。ハハハ」
確かにな。あのドレスも無理やり宝石をたくさんつけてくれたしな。
「本当だよ。世間のこと知らなすぎて見ていて滑稽だったよ。いつも笑いをこらえるのに必死だったわ」
「そうっすよね! 脅したらすぐ顔真っ青になって言うこと聞くし。王族って威厳ないんすね。もっと自信たっぷりな感じを想像してたっす」
皆好き勝手言ってるな。
それだけこの数年が苦痛だったんだろうが。
もしかしたらジェラールと同じように薬を使うのも一つだったかもしれない。
俺たちは荷物を持つと、そっと邸から抜け出してアニエスの元に向かった。
アニエスを見ると、昔はすごく綺麗だったらしいが、今はただの太ったおばちゃんだ。
まだ自分が綺麗なお姉さんだと勘違いしているのが見ていて気持ち悪いが……アニエスのおかげでここまで稼げたのは間違いないからな。
お金は少しずつバレないようにあるところに埋めてあるし、ドレスも先程盗んできたから宝石を換金すれば終わりだ。
もう少しで全て俺たちのものになると思うと……今から楽しみだ。
「ふ……ふ……フハハハハハハ……あと少しだ」
俺たちは急いで海を渡って別の国に行くために馬に乗って走り出した。
なんだか月がこちらを見て笑っているように見えるぜ。




