マーガレットはいつも一言足りません。
「「ローラー作戦!?!?」」
モニカ、ディーが私の言葉に対して反応する。
今回の作戦名、伝えていなかったかしら……。
手紙を書いたからか、てっきり言ったつもりになっていた。
「そう! ローラー作戦よ!!! 今日ジェノベーゼ辺境伯から応援部隊が来るわ! そしたら白煙灯で合図が来る手筈になっているから作戦開始よ!!」
「えっ!? 今日?!」
「そうよ!!」
サフィールにはジェノベーゼ領に着いたらお父様にも手紙を送ってもらうようにしていたこと、王都側の道も逃げられないように王国騎士団に道を塞いでもらえるよう頼んでいることを伝える。
「お、お、おま……」
「おま……?」
「い、いや……そういうことは前もって言っておいてくれ!」
「だから前もって言ってるじゃない!!」
「前もってって今の事か?」
ディーの言葉に頷くと、ディーは溜息をついた。
そんな溜息つくことかしら。
作戦開始前には話しているし、クレソンや騎士団長には伝えてあったから先に動いてくれている。
そんな悪いことはしていないような気がするけど……。
「はぁ……これからはもう少し早く伝えてほしい。それでローラー作戦ってなんだ?」
「ローラー作戦は盾を持って二列に並んで少しずつ前に進んでいくのよ。それで押し戻していくの。最終的には領地の壁と板挟みになる計算よ!!」
「「……」」
二人揃ってポカーンとしている。私の中ではこれが一番怪我もなく死人も出ない方法でいいかと思ったんだけど。ダメだったかしら……。
「えっと……私何か変なこと言ったかしら?」
「ちなみに……その……方法はちゃんと伝えたのか?」
言わなくてもわかるだろう。盾を持ってきてほしいと言っているくらいだし……。
「……えっと……ローラー作戦することは伝えたけど?」
「はぁ……モニカ。そのままでいいから急いでジェノベーゼ辺境伯領までの道を道なりに進んでくれ。恐らく、周りを囲んでるのは領民だけだ。この数日全く攻撃してこないから攻撃してくることはないだろう。そして先程のローラー作戦の方法を説明してきてほしい」
「承知しました」
それだけ言うとものすごいスピードで部屋を出ていくモニカ……。
やっぱり……ローラー作戦っていう名前が良くなかったのかしら……?
「マーガレット。やり方はいいと思うが……作戦名だけでなくやり方を伝えないと相手が分からないだろう。これからはちゃんと伝えてくれ……」
「ご、ご、ごめんなさい……?」
「まぁ……とりあえず始まる前に気づいてよかった。それでファレノプシス伯爵にも手紙を出したのだろうが、まさか……」
そのまさかである……。お父様も、サフィールも家族だから意図を汲んでくれていると信じていたためだ。
でも、ちゃんと内容を伝えなくては伝わらないこともあるのね。いつも端折りすぎていたことを思い出し、これからは少し気をつけようと思った。
「その……まさかです……ただ、あちらの道は一本道。その一本道も崖に挟まれていますし、他に逃げ道がありませんので大丈夫だと……思います」
ジェノベーゼ辺境伯領に続く道は森で囲まれており、逃げ道がある。特に森の中に入られてしまうと分からないが、王都の道はその崖の道さえ封じてしまえば逃げることはできないだろう。
「確かに……そうだな。どちらにしても王都側に伝えるのは難しい。そのまま始めるとするか……」
***
ディグレッド視点。
「ローラー作戦です!」
そう言い放ったマーガレットを見て、ローラー作戦ってなんだ? と思ったのは俺だけじゃなかっただろう。
モニカもマーガレットの後ろで「また何か言い出した……」というような顔で見ていた。
「「ローラー作戦!?」」
俺とモニカの声が重なった瞬間だった。
「そう! ローラー作戦よ!!! 今日ジェノベーゼ辺境伯から応援部隊が来るわ! そしたら白煙灯で合図が来る手筈になっているから作戦開始よ!!」
しかもこのローラー作戦。いつ開始なんだろうかと思っていれば今日というのだ……。
只今の時刻は太陽が真上に昇りきっているので、お昼辺りだろうか……。
正直言ってあまり時間がない。
しかもローラー作戦の内容を伝えてあるのかと聞くと、伝えていないと言うし……。
口をすぼめながら「ごめんなさい……」と謝るマーガレットもすごく可愛いが……。
すぐに許したくなってしまうのは惚れた弱みだな。
だから喧嘩にいつも勝てないんだ……。
モニカにローラー作戦を急いで伝えに行くように伝えると、モニカはすごいスピードで部屋を出ていった。
まだ白煙灯は上がっていないから間に合うだろう……。
「白煙灯が上がるまで俺たちはここで待機でいいのか?」
「私たちは行かなくてはならない所があるわ! 先に団長たちが向かってるから急いで追いかけましょう!」
先程までシュンとしていたのは嘘のようにパッと顔を上げて、俺の腕を掴んできた。
「どこに行くんだ!?」
「それは……着いてからのお楽しみよ!」
マーガレットに腕を掴まれたまま進んで行く。
どうやらジェノベーゼ領、王都とは別の方向のようだ。
準備された馬に乗ってマーガレットの後を追うと、前には騎士団長とクレソン、そしてそれよりもっと前にある二人の姿があった……。




