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父に頼まれて契約結婚することになりましたが……どうやら退屈する暇もなさそうです!  作者: ゆずこしょう
捕縛。

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ローラー作戦!?

時は二日前に遡る――


***


トパーズ視点。


「旦那さまぁぁぁ!! マーガレット様からお手紙が届いておりますぅぅぅ!!」


従者のグスタフが大きな声を出しながら駆け寄ってくる。フェザリス家に嫁いでからというもの、一度たりとも連絡を寄越さなかったマーガレットからの手紙だ。誰だって驚くというものである。


元々マーガレットは手紙などを出すなら直接会った方が話が早いと思っているタイプだ。

それに何か用事がなければ返事も来ない……そういう大雑把なところは母親に似たんだろうな……。


私はグスタフから手紙を受け取って中身を確認することにした。


-----

お父様。


二日後にローラー作戦を行います。つきましては王都からフェザリス領に繋がる道を通行止めに……

そちらに逃げてきた人を全員捕まえてください。あっ、あと盾をたくさん準備してください。

次の指示は白煙灯でお知らせします。


それと……アニエスが現在フェザリス邸から離れております。ジェラールは何かしら薬漬けにされている可能性が……急ぎジェラールを確保し病院まで連れて行ってください。


マーガレット


-----


ふむ……。


「このローラー作戦とはなんだ!?」


「存じ上げません……」


どうやらグスタフも知らないらしい。作戦名だけ言われてもこちらは取り敢えず人だけ立たせておけば良いということなのだろうか。


「いつも思うが……本当に大事なことが抜けているな……グスタフ。今から出かけてくる。王城とフェザリス邸に行く。ジェラールの為に医者を用意しておいてくれ。」


ジェラールを病院に連れていくことも考えたが、家の方が安全だろう。


アニエスか……今も昔も変わらないな……。


アニエス・ボルテール。

見た目はとても綺麗な女性だった。二十年前はな……今はどうか分からないが……。


見た目が綺麗だからとその見た目に騙されて何人の貴族男性が餌食にあっただろうか。


その事が原因で婚約がなくなった人や、家から追放され貴族でなくなった人、爵位を取り上げられた人は数知れず……。


もう少し気づくのが遅れていたら国としても危機的状況に陥っていただろう。気づいたのは私が財務局に勤め始めた頃だった。明らかにお金の流れがおかしいところがいくつかあったのだ。


その時に法務長、財務長などこの国の要とも言える人たちも餌食になっていることを知った。


その後すぐに法務長や財務長が解雇され、新たな長が就任したのだが、アニエスはその後からパタリと顔を出さなくなったのである。


それが今になって現れたということは、ほとぼりが冷めたと思っているのだろう。

今の世代にはこの話を知っているものはほとんどいない。

何故かって……?


この事が原因で当時大混乱を招いたからだ。

アニエスはこの国にはない薬をお香の中に入れて幻覚が見えるようにしたのだ。

あとから聞いた話だが……男達には自分が好きな相手や一番会いたい異性の顔に見えるようになっていたらしい。


そのお香も抜けてしまえば成分の検出ができずなかなか捜査が進展しなかった。今だったら研究も進んでいるから見つかりそうだが……。


薬が抜けて正気に戻ったほとんどの人は自分が何をしていたか覚えていなかったのだ。


そう。正気に戻った時に全てをなくしたと知る絶望は本人たちにしか分からないだろう……。

中には自分で命を絶った者もいた。


だからこそこの話には箝口令を敷いて、全てを闇の中にしまったのだ。


それが今になって出てきている。


「今回こそはアニエスを逃がすわけにはいかないな。」


私は急ぎ王宮とフェザリス邸に向かった。


それにしてもローラー作戦ってなんだろうか。


***


サフィール視点。


ジェノベーゼ辺境伯領に着くと、変装を解いてから辺境伯邸へと向かった。


変装したまま行くには流石に気が引けたからだ。


貴族が急に訪ねるのは基本的にはご法度であるが、今回は仕方がないだろう……なんて言ったって急を要するし、ディグレッド王太子殿下からの命だ。


門兵にディグレッド王太子殿下からの遣いで来た旨を伝えるとすぐさま中に通してくれた。


オレガノ・ジェノベーゼ辺境伯。

バジル騎士団長の兄である。

見た目は少しバジル団長よりがっしりしている感じはなく細いという印象だ。

バジル団長と比べてしまうのが良くないのだと思うが、普通の人よりも筋肉はついている感じがする。


「急な訪問となり申し訳ございません。サフィール・ファレノプシスと申します。ジェノベーゼ辺境伯にお願いがあり参りました。」


「サフィール……マーガレット嬢の弟で財務長の息子だろう? お前のことはよくバジルから聞いている。何でも暗躍が得意だとな……」


暗躍が得意……!?


そんなこと言われた事ないけど、姉上やディグレッド王太子殿下の相手をしていると影でいなくてはやっていられないときがある。


もしかしてそういった時の話をしているのだろうか……。


誰も殺してはいないんだけどな……。


「し、知っていただけているのはとても光栄です。それでこちらをバジル騎士団長、ディグレッド王太子殿下、姉のマーガレットから預かってきました。」


「ふむ。急ぎなのだろう。この場で確認するから待ってくれ。」


そう言うと手紙を一つ一つ確認していく。


「クックク……ククク」


声を押し殺して笑う姿はバジル騎士団長にそっくりだ。

こうやって見ると兄弟なのだなと感じる。


「そ、その……どうかなさいましたか?」


「いや、なに……ディグレッド王太子殿下もバジルも全てマーガレットに一任するとしか書いていなくてな……笑ってしまっただけだ。ククッ……」


ディグレッド王太子殿下はいつも姉上がやりたいようにやらせるからその言葉はわかるけど、まさか騎士団長までとは思いもしなかった。


そして姉上の手紙を読み始めると真剣な顔つきに戻っていくジェノベーゼ辺境伯。


そこには五日後、フェザリス領に兵を派遣して欲しいこと。盾装備絶対。

フェザリス領手前まで着いたら白煙灯で知らせて欲しいことが書かれていた。


作戦名はローラー作戦……。


ってなんだ!?


「この……ローラー作戦って言うのは初めて聞いたんだが……何かわかるか?」


「申し訳ございません。うちの愚姉が……。私も内容は聞いておらず今知りました。ローラー作戦ってなんですかね……ハハハ」


二人揃って思った。

一体マーガレットは何をする気だろうかと……。


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