帳簿が見つかりました!
サフィールにも話をしたし、あとはディーに任せて手紙とドレスを持ってスージーと一緒にフェザリス邸に向かった。
フェザリス領の外は囲まれているというのに、フェザリス邸はいつも通りの日々を送っているようだ。
外の様子は流れてきていないのだろうか……。
「ごめんくださぁーい! マルグリット商会でございまーす!」
いつも立っている門兵が今日は立っていなかったので、門の外から大きい声で呼ぶ。
「はいはい……。お待たせして申し訳ございません。」
ヨロヨロと一人のご老人が出てくる。
「お、おじいさん! やっと見つけました……」
目の前に現れたのは、あの時手紙を届けてくれたお爺さんだった。
「ほっほっほ。やっと見つかってしまいましたな……」
どうやらこのおじいさんかなりマイペースらしい……。
お爺さんが、重たい門を軽々と開けていく。一体どこにそんな力があるのだろうか……。
「今、マーガレット様《《しか》》おりません故、《《ゆっくり》》して行ってくださいませ。こちら……お渡しするように仰せつかっております。」
そう言ってお爺さんはいくつかのノートを渡してきた。古いものから新しめのものまである。
「こ、これは……」
「マーガレット様からお探しのものだと……王都の邸の分も書き終わるとこちらに送られてきていたのです。嫌な予感がしましたので、私が隠し持っていたんですよ。ほっほっほ……」
ジェラールに見つかってしまうと危ないと思っていたのだろうか。中をペラペラめくっていくと途中から字体が変わっている。
「前公爵がお亡くなりになった頃からの分ですね。とても助かります。一点だけおじいさんにお聞きしても良いですか? おじいさんは税金について減額申請が五年前から行われていたことをご存知でしょうか? そして今年に入ってから再申請が行われております。見たところ災害も起きた様子はございません。この数年で税が支払えなくなるようなことはございましたか?」
おじいさんは細めていた目を少し広げてから、簡単にお話してくれた。
「私がここにいることがバレるとマーガレット様が叱られてしまいますので手短に……」
きっとこのおじいさんは私がマーガレットで、マーガレットがクリスティーナだと気づいているのだろう。
「ここ数年、領民から税金が支払われなかったことはございません。天気も安定しており豊作が続いております。寧ろ税金が増額され、領民たちの不満がいつ爆発してもおかしくない状況です。」
税金は支払われていないのに増額だけされていた……。
しかもその理由が国の意向で、領地に災害が起きた時のために予め徴収しておくという話だったそうだ。
「税金が高くなったのも五年前から……。申請はフェザリス公爵から行われていますね。」
ノートをペラペラ見ながら確認していく。
この国の税金の金額は昨年の収入額によって変わってくる。それも一世帯ごとの収入合計で決まるため、あまり稼げていない世帯でもそこまで支払いは難しくないはずだ。
国で統一されているため、フェザリス領だけ税金を上げるなんてことはしない。
「それにしても……この帳簿……段々と書き方が雑になってますね。」
初めは町村ごとに綺麗にまとめて書かれていて、とても見やすいのだが、今は総額と、支出額、残高くらいしか載っていない。
やはり税金については領民から徴収していた金額と国に支払われていた金額に差がある。
五年間となると相当な金額になるだろう。
それにしてもこの支出額……宝石とかドレスにあてたのだろうか……。
「細かく書いてあるのは前フェザリス公爵が書いていたものですな。ジェラール様になってからは……このような感じです。」
出来ればどこの店で買い物していくら使っているのかは調べたいところだけど、そんな時間はあまりないだろう。
こちらの件は後で片付けるとして……。
後ろから誰かがついてきているのを感じる……やはりこの中にも仲間を入れていたようだ。おじいさんとこれ以上話すことが無理だと感じた私は、少し大きめな声でおじいさんに話しかけた。
「仮縫いですが、ドレスを一着持って参りましたのでマーガレット様に見ていただきたいのですが、お会いすることは可能ですか?」
おじいさんも理解してくれたようで、
「こちらです。マーガレット様もドレスを楽しみにしておりましたよ。」
と返してきてくれた。
そしてそのまま応接室まで私を連れていってくれた。
「マーガレット様。マルグリット商会のマルグリット様がおいでになりました。」
「入ってちょうだい。」
クリスティーナの声を聞いてから私は中に入った。
どうやら今日はクリストフはいないらしい。
ただずっと誰かが跡をつけていたことを考えると、このまま話すのは得策ではないだろう。
私はドレスの上に手紙をのせ、見えるようにしてからドレスを渡した。
クリスティーナ。あなたもこの国の王女なんだから、この手紙の渡し方をする理由はわかっているわよね?
目で訴えると、軽く頷いてから
「とても素敵なドレスね! まだ仮縫いということだけれど……本当にデザイン通りでびっくりしちゃったわ。たまにデザイン通りにならないこととかもあるからドキドキしていたの……やっぱりマルグリット商会にお願いしてよかったわ!」
二人でドレスについて少し話すと、私は今後のスケジュールを簡単に伝えてこの場を後にした。




