ドッペルゲンガーとご対面。
手紙を送ってから数日後。
来るまでに一週間はかかると思っていたマルグリット商会の皆が、フェザリス領に到着した。かなり急いで来てくれたらしい。そして、その中には……まさかのフェザリス公爵家前執事長のドミニオンさんの姿があった。
「モニカ殿」
「ドミニオンさん。お久しぶりでございますね。今日はどうしてこちらに……?」
「フェザリス領に行くとお話を聞いたものですから、以前よくこちらに来ていた身としては、今のフェザリス領の状態とフェザリス邸に少し興味があったのです。それに、お助けできる部分もあるのではないかと……」
ウィンクしながら話すドミニオンさん。
ダンディーなおじ様だからか、ウィンクがとてもよく似合います。
モニカから以前お話を聞いたときは、あまり生気を感じられないと言っていたけど、一か月くらいでだいぶ回復されたようだ。
「それはありがとうございます。私がモニカの主人である、マーガレットと申します」
モニカに代わり挨拶をすると、ドミニオンさんも挨拶を返してくれる。フェザリス公爵家にいただけあって、マナーも完璧だ。
王都に帰ったら、ドミニオンさんには人材育成の教育者になってもらおう。
ドミニオンさんのマナーを店先の人、メイド、執事がマスターすれば、かなり儲かりそうだ。
「あなたがマーガレット様でしたか。お噂は私のところまで届いておりましたぞ。若くしてとても聡明でいらっしゃると……。前フェザリス公爵もあなたのことはよくお話ししておいででした。自分の息子にもあのような子に育ってほしいのだと……。うまくはいきませんでしたが……」
自分のことを聡明だと思ったことはないけど、褒められるのは嬉しい。
「そう言ってもらえるのはとても光栄です。これからフェザリス邸に行くのですが、ドミニオンさんはいかがいたしますか?」
「そうですね……一緒についていきたいところですが……もし執事たちが変わっていないのであれば、私が行くことでバレることもございましょう。私はモニカ殿についていかせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか?」
モニカに一人で動いてもらうには限界があったし、一緒に行動してくれるならとても助かるところだ。
私はモニカのことをドミニオンさんに頼んで、早速公爵邸に行く準備を始めた。
メイドをするときと同じ髪型、同じ色にするのはやめた方がいいと感じたので、別の色を選ぶ。
「この国で多い髪の色は……金髪かしらね」
金髪と言っても透き通った金髪というよりは、少しくすんだ金髪が多い。その色のウィッグを用意して、綺麗に髪を巻いていく。
化粧はいつもより少し優しい見た目になるように、アイラインを描いていく。あとはマスカラをつけて、薄めの色のチークをつけたら完成だ。
「これで最後に眼鏡をつければ……うん、完璧ね!」
服は水色のワンピースにした。襟と袖部分が濃いめの青い布地になっていて、胸元には襟や袖と同じ色の大きなリボンがついている。
「やっぱりこのワンピースはリボンが合って正解だったわ。靴も濃い青のパンプスにしましょう!」
着替えを終えると、公爵邸に向かう。
門兵に、マルグリット商会から人が来ていることを伝えてもらうと、すんなりと通してくれた。
庭を歩いて、エントランスへ向かった。
「いらっしゃいませ。マルグリットさん。ずっとお話をしたいと思っていました」
迎え入れてくれたのは……やはりマーガレットではなく、クリスティーナだった。
「こちらこそ、予約いただいてからお時間がかかってしまい申し訳ございません。そして、ずっとお待ちいただきましてありがとうございます」
クリスティーナに向かって頭を下げると、楽しみにしていたのか、クリスティーナは笑顔で声をかけてくる。
「結婚式を終えてしまったとお聞きしました……。間に合わなくて本当に申し訳ございません。それで……今回はドレスをいかがいたしますか?」
作ったところで着る機会があるとはあまり思わないけれど……。
「そうね……これから先、着る機会があるかもしれないもの。念のため作っておこうかしら」
クリスティーナの後ろにいるのがクリストフだ。こちらの顔をじーっと見てくる。
クリストフとは何度か店先で会っているが、嫌がらせしてくるばかりで、そこまで関わりがあるわけではない。
「わかりました。では、スケジュールなのですが……ドレスの作成にはいくつか工程がございます。まずはデザイン決めですね。一か月くらいかけて、マーガレット様に似合うお色やドレスの形などを一緒に決めていきます」
これからのスケジュールを提示すると、わかっているのか分からないが、フンフンと相槌を打ちながら聞いている。
「出来上がるまでに早くて二か月。遅くとも三か月ほどで完成できるかと思いますが、よろしいでしょうか?」
「大丈夫よ……出来上がりまでは通ってくださるのよね?」
「もちろんでございます。ですので、安心してお任せください。最後に、費用はドレスによって多少異なりますが、よろしいでしょうか? 宝石なども合わせて作成をということでしたら、プラスの金額が発生いたします」
普通であれば、金額が上がると聞くと躊躇したりするものだが、全くそういった素振りがない。それどころか、普通に支払う気満々だ。
そのお金は一体どこから出ているのか……。
気になるところはあるものの、とりあえずドッペルゲンガーの正体がわかったので、このままドレスの制作に取り掛かった。




