そろそろ進展が欲しい所ですね。
「最近、少し陽が昇る時間が遅くなってきたわね……結構、朝方は肌寒いし」
軽く伸びをしてから、仕事の準備を始める。
「お手本って一体誰だろう」と思っていたら眠れませんでした……なんてことは一切なく、今日もぐっすり眠ることができた。
「「おはようございます。マーガレット様」」
「おはよう! モニカ、ナニカ! 今日の予定を話しましょう」
朝起きると、皆で朝食を食べながら一日の予定を話す。
「私は王都で買い物をしてまいります。あとは商会の様子を見てくる予定です」
誰もいないとなると不審がる人がいるかもしれないため、ナニカには基本的に家事と商会の運営の様子を見守ってもらっている。運営の様子と言っても、売り上げを見てきてもらったりするくらいだけど……。
「分かったわ! 商会の売り上げは今のところ順調だけど、最近、新しい商品などを出せていないから、もしできそうだったら、お客様の様子や街の雰囲気から流行になりそうなものをピックアップしておいてくれないかしら?」
いつもであれば季節ごとに新しい商品を出せていたが、最近はメイドの仕事でいっぱいいっぱいになってしまっていて、なかなか商会の仕事に手がつけられていなかった。自分だけの意見よりは、他の人から意見を聞けた方がひらめきが降りてくる可能性もある。
「承知しました。何かいいものを見つけましたらお伝えいたします」
「よろしくね。モニカの予定は……」
「私は、本日、以前こちらに勤めていたという執事長とお会いする予定です。何か収穫がありましたらご連絡いたします」
モニカには引き続き、フェザリス邸に勤めていた人を探してもらっていた。この半年、色々な人を探してはきたが、すぐ辞めてしまった人ばかりで、深い話を聞くことができていなかった。
大体、すぐに辞めてしまう人は、アニエスやジェラールに対する不満ばかりで、聞きたい話は一切聞けなかった。
「ついに、執事長と会えそうなのね……色々話が聞ければいいのだけど……」
「そうですね……ここまで空振りでしたので、そろそろ詳しい話をしてくれる人がいればいいのですが……」
「そうね。少しでも進展があることを祈るわ! 私の予定だけど……今日もメイドの仕事です。そろそろ帳簿のありかが分かればいいんだけど……もしかしたら、王都に帳簿を置いていないなんてことないわよね……」
以前、寝室を調べたとき、二重底になっている場所があったが、特に何も入っていなかった。もしかしたら、ジェラールではなく、それ以前の公爵が使っていたものなのかもしれない……。
時間があるときに図書室や使っていない部屋などを片付けてはいるのだが、いかんせん一人で行っているためか、なかなか進まず……。
「はぁ……本当であれば、もう一人くらいメイドが来てくれればいいんだけどね。本当に猫の手も借りたいくらいよ」
「では……ツテがあるので、一人声をかけてみましょうか? 侍女をされている方ですし、仕事は早いと思います」
あまり知り合いがいなさそうに見えるのに、意外と知り合いが多いのがモニカである。
「できれば口が堅くて、味方になってくれる人だとありがたいわ……あとは通いしか無理だから、それでも大丈夫な人でお願い」
「承知いたしました。声をかけてみますね」
三人で今日の予定を話し終えると、外は朝日が昇り始めてきていて、少しずつ明るくなってきていた。
一方その頃――
「サフィール様。モニカからお手紙が届いております。何でも、至急お願いしたいことがあるとのことです」
「ありがとう。グスタフ。確認する」
モニカからは月に一回の姉上の報告書くらいしか連絡が来ないが、珍しいこともあるものだ。
手紙の中を見てみると、端的に「メイドを一人、フェザリス公爵家に派遣してほしい」とだけ書かれていた。
以前の報告書で、姉上がメイドをしていると書かれていたし、人が足りていないと言っていたから、恐らくそれ関係なんだろうが……。
もう少し細かく書いてくれてもいいと思う。理解していると思って書いていないんだと思うけど……。
「はぁ……本当にどんどん姉上に似てくるな……グスタフ……地味で、目立たない。それに口の堅い侍女は誰かいるか?」
「いなくはないですが……この家の侍女は皆、口が堅いですし、マーガレット様が行っている派遣業界のメイドも口が堅いです。ですが……ここはあえて、マーガレット様のことが大好きな未来のお兄様に頼んでみてはいかがでしょうか……」
未来の兄上……か……。
確かにこの辺りで姉上に恩を売っておいてもらうのも一つかもしれない。姉上は全然ディー兄上の気持ちに気づいていないからな。
「それはいい考えだな。これからディグレッド王太子殿下のところに行ってくる」
俺はモニカからの手紙を持って、急いでディー兄上のところに向かった。
王城に着くと、何も言わずともディグレッド王太子殿下の居場所を教えてくれる。どうやら今日は書斎にいるらしい。
ノックをしてから中に入ろうと、扉を叩こうとした瞬間……中から王太子殿下の声が聞こえてきた。
「はぁ……マーガレットに会いたいな……元気だろうか。少しくらいあいつも俺のことを思い出してくれていればいいんだが……」
姉上に会えなくなって半年……相当ストレスが溜まっているようだ……。
でも、これだけは言わせてもらおう……。
きっと姉上はディグレッド王太子殿下のことをあまり思い出してはいないと思いますよ。
それに……今は忙しすぎて、それどころじゃないでしょう。
「ディグレッド王太子殿下……入りますよ!」
「あ、ああ……どうぞ」
「急にすみません。実は姉上からお願いがありまして……ディグレッド王太子殿下にも協力してもらおうかと……」
「な、なに!? それはマーガレットから俺に協力してほしいということか!?」
なんだかすごい勘違いをしていそうだけど、姉上の名前を出して元気になってくれるならいいだろう。どうやら他の側近たちも同じ思いなのか、「本当のことは言うなよ」という目で見てくる。
「え、ええ……きっと姉上もディグレッド王太子殿下に早く会いたいと思っているんだと思いますよ」
「そ、そうか……それは協力しないわけにはいかないな……。話の内容を教えてくれ……」
少しにやにやしているディグレッド王太子殿下。どれだけ姉上のことが好きなのか……。
俺はモニカから頼まれた出来事をディグレッド王太子殿下に伝えた。




