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Ghost Life~キミハヒカリ~  作者: Akira Clementi
第3章 悪魔とは

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第55話 シグムント

「納屋にいた霊はメイドでしたか? 茶色い長いおさげ髪で、青い瞳の」


 納屋の外で、シグムントがエリオに問う。

 シグムントとエリオは、並んで納屋の壁に寄りかかっていた。どちらからということもなく、その姿勢になったのだ。そうやって、ウィッテンが出てくるのを待っていた。


「どうやらそのようだよ。よく知ってる子かい?」

「よく知ってるというか……彼女が生きていた頃、一方的に好きだったというだけです。いつからとか、きっかけなんかは、全然分からないのですが」


 エレナとの日々を、シグムントはぼんやりと思い出していた。


 突然屋敷にやってきて、働かせて欲しいと懇願していたエレナ。

 自分がエレナに恋したのは、いつからだったか。

 ほんの少し特別なメイドだと思っていたエレナを、もしかしたら出会ったときから好きになっていたのかもしれない。そしてエレナが泣いていたあの日に、やっと自分はエレナへの恋心を実感したのだろう。


「僕は助祭だから、守秘義務なんて持ってないからね」

「いいんです。ただ誰かに聞いて欲しかっただけなので」


 ふうん、とエリオが小さく唸る。


「領主様に好いてもらえるなんて、光栄じゃないか。彼女に告白はしたのかい?」

「いえ、一度も」

「なんで? もったいないなあ」


 もったいない。エリオの言葉に、シグムントは本当にそうだと同意した。エレナが生きている間しか、この気持ちを伝えられなかったのに。

 もう少し己の気持ちに敏感になって、彼女に好きだと伝えていたら、この事件は起こらなかったのだろうか。


 いや、きっと彼女はシグムントなど見てはくれなかったに違いない。先ほど納屋で見たあの白骨死体――青い糸状の光に包まれていたあの死体が、おそらくエドワードだ。直感がそう告げていた。


 ふと、納屋の木戸が開かれた。


「シグムントさん」


 中から出てきたウィッテンに突然名を呼ばれ、感傷に浸っていたシグムントはびくりとした。手にしていたカンテラの灯が踊る。


「神父様、どうされました?」

「中にある白骨遺体の埋葬をお願いします。執務室に置いてきた腕も一緒に。可能であれば、エレナというメイドの墓のそばへ」

「分かりました」


 白骨死体はエレナではなかった。彼女の墓を荒らされたわけではなかったと、シグムントは心底ほっとした。


「それで神父様、どうなりました?」

「『霧の悪魔』だったエレナの霊は旅立ちました。もう事件は起きないでしょう」


 エレナが起こした事件を考えれば、「犯人だけが楽になるなんて」と言う者は現れるに決まっている。

 だがそれでも、好きだった者の安らかな旅立ちは、シグムントにとって喜ばしい。この屋敷に留まってくれていたエレナがいなくなるのは寂しいが、そもそもシグムントは霊が視えない。ならば、エレナが旅立ってくれる方が何倍も嬉しかった。

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