第51話 ※グロ注意
ロープの輪から抜けて、エドワードの死体を床に下ろす。
己の涙を拭ってから、屋敷の調理場へと忍び込んだ。幸い料理人はおらず、包丁は簡単に入手できた。
裏庭を通る途中で、よく使われている方の納屋から麻袋を数枚手に入れる。
エドワードが眠る納屋に戻ると、私はエドワードの肉を削ぎ始めた。
手が震えたのは、片腕の肉を削ぎ終わるまでだった。麻袋に削いだものをどんどん入れていく。麻袋には血の染みができていたが、調理場のごみと混ぜてしまえば怪しまれないだろう。とにかく夢中でエドワードの肉を削いだ。
どんなに愛おしい姿でも肉は腐って蛆が湧くと分かっていたから、できるだけ綺麗に削いだ。
これが、愛した『エドワード』を独占できる唯一の方法だった。
肉を削いで骨が露わになるたび、エドワードとひとつになっていくような感覚さえして、私は喜びで満たされていった。誰も知らない彼の一面を見ているような気がして、本当に愛おしい。彼は私の為に死んでくれたのだと思うと、彼の愛情を一身に受けているような気さえしてきて、返り血の温もりに心がとろけるようだった。
よく手入れされていた包丁のおかげで、日が暮れる頃にはエドワードは綺麗な骨になった。エプロンで磨いてあげつつ、もうこれで私から彼を奪うものはないのだと思うと、彼と結婚したような気分になれて幸せだった。
骨になったエドワードを乾かそうと納屋に寝かせ、私はごみ捨て場に麻袋を運んだ。明日の朝には、エドワードの外側だったものは他のごみと一緒に処分される。
包丁を戻しにいく途中で、メイド長に会った。血だらけの姿を驚かれたが、鹿の解体を手伝ったと言ったら、人のいい彼女は信じてくれた。今夜の夕食は鹿だと料理人が言っていたから、怪しくないと思う。
それにたとえ怪しまれても、これから死ぬ私には関係ない。
もう少しで、永遠にエドワードと一緒にいられる。
その幸福感と満足感で、いっぱいだった。
着替えてから残っていた仕事をひととおり終え、夜を待って再び納屋に向かう。案の定エドワードは誰にも見つかっておらず、私が寝かせた状態のままそこにいた。
「エドワード、愛しているわ」
いまだ血の臭いが残る頭蓋骨にキスをする。今までエドワードとかわしたキスの中で、一番幸せを感じた。
そうして私は積んであった木箱の上に乗り、ロープの輪へと頭を通すと――木箱を勢いよく蹴った。
見えているはずなのに、ごちゃごちゃと色々なものが混ざり合う視界。白黒の光が明滅する。私もエドワードのように凄い呻き声を上げているのかなと思ったけれど、鼓動と耳鳴りが邪魔で他の音がなにも聞こえない。
頭が爆発するんじゃないかというほどの圧迫感に、全身に広がる重い痺れ。
口から泡を吹きながらも、私は後悔していなかった。
これで、エドワードとずっと一緒にいられる。
それに、これで私から『アルウィン・リザック』を隠し続けてきた住民たちにも復讐ができる。
そんな喜びで、私は満たされていた。




