表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ghost Life~キミハヒカリ~  作者: Akira Clementi
第3章 悪魔とは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/42

第38話

「ウィッテン・フェルベルトと申します。あなたがエレナ・リザックですか?」


 ウィッテンが問えば、メイドの少女――エレナはこくりと頷いてくれた。


「不躾な質問で申し訳ありませんが、四年前に納屋で亡くなったというのはあなたでしょうか?」

「はい、私です」


 あっさりとエレナが呟く。

 どんな霊かと思っていたが、エレナはおとなしい性格のようだ。質問にも特別抵抗する様子もなく答えてもらえて、ウィッテンは安堵した。『霧の悪魔』が探しているらしい『アルウィン・リザック』と同じ姓を持つエレナは、間違いなく今回の事件に関係がある。その彼女からどれだけすんなり話を聞き出せるだろうかと、少し心配していたからだ。


「あなたが亡くなった頃のことについて少しだけ話をうかがいたいのですが、よろしいでしょうか?」

「……はい」


 エレナの表情が曇る。今まで見てきた自害した霊たちと同様の翳りが、彼女にはあった。


「他の方に聞かれたくないようでしたら、場所を変えますが?」

「いいえ、ここで大丈夫です。神父様は、立ち話は辛くありませんか?」

「ありがとうございます。私のことはお気になさらず」


 死んでなお他人をおもんばかるエレナは、なぜ自殺という道を選んだのか。ウィッテンは気になったものの、今彼女に訊くべきはそれではなかった。


「当時、あなたと親しかったエドワードという男性がいたそうですね。一緒に死のうとしたのですか?」


 エレナがふるふると首を横に振る。綺麗に編まれた長いおさげ髪が、彼女の動きに合わせて揺れた。


「私はひとりで死にました。……霊になってから、エドワードが行方不明だと知ったんです。彼は見つかりましたか?」

「いいえ、残念ながら」

「そうですか……」


 寂しげなエレナの様子からするに、エレナとエドワードが恋人同士というのは間違いなさそうだ。恋人が行方不明とあっては、エレナも心残りでとても旅立てないもかもしれない。

 傷心のエレナには申し訳ないが、ウィッテンは更に質問を続けた。訊けるうちに訊いておかないと、エレナがどこかへ行ってしまいそうな気がしたのだ。


「もうひとつ聞かせていただいたいのですが」

「なんでしょう?」

「『アルウィン・リザック』という男性についてなにか知りませんか?」


 エレナが一瞬苦い表情を浮かべる。しかしそれは、すぐに悲しそうな顔へと変わった。


「それは……私の兄です。私たち兄妹は別々の孤児院に引き取られて、兄だけ養子縁組があったんです。でも、このノルンのどこかに引き取られたという話以外のことはなにも知りません。私も生きている頃に探してみましたが、足取りさえ掴めませんでした」


 そこまで話して、エレナがはっとした。


「まさか、兄が見つかったんですか!」


 ウィッテンは残念な気持ちで首を横に振った。案の定、エレナの顔に落胆の色が浮かぶ。


 恋人も、兄も、大切な存在の足取りがなにも掴めていない。ウィッテンがしたことは、エレナの心の傷をえぐっただけである。仕方ないとはいえ、胸中にはエレナを憐れむ気持ちが生まれた。


「あの、神父様」


 エレナが遠慮がちに口を開く。


「もし兄が見つかったら、教えていただけないでしょうか。生きていても、死んでいても」

「約束しましょう」

「ありがとうございます」


 ようやくエレナに微笑みが戻る。その素朴な笑顔は、ウィッテンを和ませた。


「兄がこの町で幸せになれたのか。それが私の気がかりなんです」

「エドワードについては?」

「エドワードは……正直、もう諦めてしまいました」


 エレナが目を伏せる。


「私、彼に捨てられたんです。はっきり言われたわけじゃないんですけど、そう思ってます。それに、もう四年も行方不明なんですよ? こんな小さな町で四年も見つからないなんて、おかしいです」


 もう一度ウィッテンに視線を向けたエレナ。その微笑みは先ほど見た素朴なものではなく、疲れが滲んでいた。


「エドワードも兄もどこに行っちゃったのか全然分からなくて、私、少し疲れてしまいました。だからせめて、兄が幸せかどうかだけでも知りたいんです」


 これ以上話を聞き出すのはただエレナを傷つけるだけの行為に思えて、ウィッテンは質問を避けた。

 実際、彼女から聞ける話は聞いた気がする。


 少し出かけたいというエレナと別れて、ウィッテンは客室に戻った。今度こそ休もうと、髪をまとめていたリボンをほどく。宵闇色の長い髪がさらりと広がった。


 『霧の悪魔』が探し続けているのにいまだに見つかっていないとなれば、『アルウィン・リザック』は既にノルンにいないかもしれない。それに生前から彼を探していたというエレナが足取りすら掴めなかったというからには、違う名を名乗っていた可能性もある。


 そしてエレナの恋人だったという『エドワード・エリクセン』も、なんらかの形で今回の事件に関わっているはずだ。彼が失踪した四年前から、この事件は続いている。彼についても調べる必要がありそうだった。


 少し休んでから、エリオと教会に行こう。ロンベルク神父の手紙には、エドワードとは教会で会う約束だったと書かれていた。ならばこの町の神父がエドワードを知っている可能性は高い。

 エレナから聞いた話も、エリオには起きてから伝えればいい。


 僧衣を脱ぎ捨てると、ウィッテンはベッドへと転がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
え、お友達のメイドさん、、、あの「エレナさん」と同一人物……? 裏切られた直後からだと、随分と変わって、落ち着いていらっしゃる。心穏やかに過ごせてるみたいで良かった……幽霊ですが; 登場人物、誰もが何…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ