第十一夜 ①ー6
…どうして!?先輩の身に何があったの!?
「……何か、用でも?」
エラは驚愕を浮かべるエミーユに話し掛ける。一体、何しに来たと言うのか。エミーユは声を掛けられてハッとした。
…そうだ、このままじゃいけない!このままじゃ、先輩は…ッ!!
どうにかしなくちゃ。
「先輩!」
エミーユはベッドの上に座ったままのエラの腕を掴んで引っ張る。
「海!行きましょうよ!!」
じゃれつくようにエミーユはエラを海に連れ出す。
二階を降りて別荘を出てプライベートビーチへ戻ってくる。
…またここに…。
虚ろなエラの瞳にビーチバレーを楽しむリチア達が映った。リチアとイオニコフ、キースとギザイアのチームに分かれてゲームをしている真っ最中だったようだ。
リチアの隣にイオニコフがいる。それだけでもエラを襲う不安は大きかった。思わず視線を反らす。
「先輩!!」
バシャン!と足に海の水が跳ねる。水飛沫を目で追うとその先にこちらに微笑みかけてくるエミーユの姿があった。無邪気な笑顔だ。
エラはそこで初めて自分がエミーユと手を繋いでいること、二人して海に入っている状況を認識した。なんだかまるで恋人のようなシチュエーションだ。
「え、みーゆ…」
「先輩、僕達も遊びましょう!せっかく海に来たんですから!ね?」
エラの手を引いて水の高さが腰くらいになる所まで入る。
「先輩は泳げますか?僕はあまり得意じゃないんですけど…」
水が冷たくて気持ちいい。それにエミーユが側で笑って話し掛けてくる。そのお陰かエラは少し気分が晴れてきた。主人公がいるこのイベントでどうしてエミーユが話し掛けてきたのかわからないが、それでも救われたのは確かだ。
「ね、先輩。水が冷たくて気持ちいいですよね、先輩は海は好きですか?僕は結構好きなんですよ」
そう隣で笑うがエラの反応が無いのがエミーユの不安を掻き立てる。
…だめだ、先輩、だめなのに、このままじゃ…。
エラの魔力は黒ずんだままだ。それでもほんの少しだけ色が戻っているのに気が付く。
「ね、ねぇ、先輩…!」
エラに詰め寄るようにエミーユが声を掛ける。視界にエミーユの美しい顔が迫ったのでエラは驚いてバランスを崩してバシャンと水飛沫を立ててその場で尻餅をついた。
「せ、先輩!?大丈夫ですか!?」
咄嗟に手を差し出す。
「い、たたたた…。だ、大丈夫よ、大丈夫…」
エラは差し出された手を握って立ち直す。立ち上がったエラは全身がずぶ濡れだ。水着を着ていたから濡れてもなんてことはないのだが…。
立ち上がって体勢を立て直したエラは頬を赤らめてこちらをじーっと見てくるエミーユの視線に気が付いた。
「…?エミーユ?…な、何か?」
「え?あ、いや…!!」
なんだかもじもじしている。
「そ、その…」
エミーユは相変わらず顔が赤いが…。どちらかと言うと恥ずかしそうだが…。
「エミーユ?あの、何か?」
「えっと、その…。先輩、き、綺麗だなって」
「…は?」
エミーユがポツリといった台詞の意味をエラは一瞬判断しかねた。彼は何を言っているの?
「えっと、私が、綺麗ですか?リチア様に言うべき台詞じゃなくて?」
「え?リチア先輩ですか?そ、そりゃリチア先輩は可愛いですけど、エラ先輩の方が綺麗ですよ。その、水が滴ってるっていうか…」
エミーユは頬を赤らめて恥ずかしそうに告げる。エラは彼の反応を見て少し驚いた。
…さっきは総スカン食らったのに…。というか、このエミーユ、可愛すぎない?
ゴクリ…と唾を飲む。頬を赤らめてるしなんかもじもじしているしとにかく可愛い。色々掻き立てていた不安も吹っ飛ぶレベルで可愛い。綺麗って言ってくれるけどあなたの方が断然可愛いくて綺麗ですよ。
エラはエミーユの手を握り直して微笑んだ。




