第十一夜 ①ー2
☆
程なくしてキースの実家であるプライベートビーチと隣接している別荘へと到着した。
まだちょっと顔が赤い女二人と男性陣は一旦荷物を別荘へと運び込んだ。
別荘は二階建てで木造の建物。二階に個室が三つあり、真ん中の部屋は少し広めなので女二人で使うことに。男性陣は一階の大部屋でまとまって使うことになった。
荷物を置いた一行は水着に着替えて浜辺に集合する流れだ。
「じゃ、私たちも準備しましょうか」
女子部屋で荷物を整理していたリチアがそう言った。
そういえば、出来る限り避けていたからか久しぶりに彼女と行動を共にすることになったのか。エラは荷物を整理しながらそんな事を考えた。
今まで彼女の居ないところでイオニコフ達と接触していたから、同じイベントを彼女とこなすのは初めてだ。つまり、「物語の主人公」がもたらす影響が読めていないままなのだ。
…このイベント…どうなるかわからないわ…。彼女がいることで修正入る…なんてこと、無いわよね?
どくん、と強く脈を打つ。それと背筋を抜ける悪寒。
…あり得る。
あくまでもこの世界の主人公は彼女だ。
仮に続編が存在していてその主人公がエラだったとしてもこの共通イベントにおける主人公はリチア・マーガレットなのだ。
たとえ英雄や王子がエラが魔女である可能性を受け入れた状態で接してくれていても今回のイベントでどう転ぶかが全く予想出来ない。
怖い。
再び訪れた先の見えない不安。ここにアイザックはいない。絶対味方だと言える相手がいない。それにイオニコフの様子もおかしい。受け入れてくれたはずなのに、距離が遠い。
エラは考えれば考えるほど足元がぐらつく感覚に襲われる。
隣で準備をしていたリチアはエラの様子がおかしいことに気が付いた。荷物を見つめたまま止まっている。それに顔が青ざめている。普通じゃない様子だ。
「エラ?どうしたの?大丈夫?顔が真っ青よ?」
駆け寄って覗き込むようにしてリチアはエラの容態を確認する。急にリチアの姿が視界に入ってきたことでエラはハッとした。
「え?あ、リチアさま…?」
「顔が真っ青よ?今日は休んだ方がいいんじゃない?」
「え、あ、だ、大丈夫ですわ。すぐに用意します」
エラはリチアから視線を反らし荷物の整理する。と、いっても特にすることがない。と言うのも朝起きたら車の中にいたのだ。荷物も最低限の貴重品をそこにあった鞄に詰めて持ってきた、レベルのものでそれもどうやらリチアが用意したらしい。
というか、水着なんて持ってきてないしよく見たら着替えもない。
「あ、あの!!私、水着も着替えもないのですけど…!!」
「え?ああ、大丈夫よ。用意してきてるわ。はい!この中で好きなのを着てちょうだいね!」
じゃーん!という効果音でもつきそうな笑顔と共にベッドの上に広げられたのはリチアがチョイスしただろうピンクやオレンジなどの明るい色合いのフリルワンピースや紺色のドレススカートなどなど。主に黒系の色合いの服しか持っていないエラからすると眩しすぎるチョイス。しかも花柄でフリルがたくさんあしらわれているものが多い。
その上…、
「み、水着って…これを着るんですの!?」
「大丈夫よ!エラなら似合うわ!」
エラは渡された水着をまじまじと眺めながら覚悟を決めたのだった。




