第十夜 ③ー4
☆
ドサッと体をベッドの上に放り投げたエラはまだどこか夢を見ているような気分だった。
「こんなことってあるのかしら…」
部屋に引き上げた後、イドラは自分の部屋へ。イオニコフとギーウィは用意された客室へ。
奇跡のようなことが起きたが、それでもまだ疑問は残っている。
魔女についてあれほど詳しかったイオニコフが何故原作ではリチアと共に魔女エラを殺すことに躊躇いがなかったのか。それとそもそも何故イドラが帰省イベントを起こしその相手が自分だったのか。アイザックがどうにも絡んでいそうだったが…。
それと、庭園でイオニコフが現れたときといい、雷を落としたときといい何故衛兵などは出てこなかったのか。
…まぁそこはゲームだからと言えばそれでおしまいなのかも知れないけど…。
そう言えばイオニコフを降ろした後ギーウィは何処にいたんだろう。すごく大人しかったような気がするが…。
色んなことがあってうとうとし始めたエラはそのまま深い眠りの中に落ちていった。
☆
その夜、エラの枕元に真っ黒なドレスを身に纏った女が現れた。
恨めしそうな声で眠るエラを睨みながら呟く。
『何故、恨まないの。恨みなさい人間を。あなたを捨てた人間を…!!!』
邪悪な魔力をエラに注ぎ込む。彼女の体にその魔力が少しずつ取り込まれていく。エラが苦しみ始めたその瞬間、女はニヤリと笑ったが風と共に現れたイオニコフとギーウィの風の魔法によって存在を掻き消された。
「…キミの出る幕じゃないんだよ」
グルルル…と威嚇するギーウィと闇夜にキラリと光るイオニコフの瞳。
苦しんでいたエラが安定して呼吸をし始めた姿を確認したイオニコフは暫くの間、ベッドに腰掛けて彼女の頭を撫でた。
そうして夜が明けるまでの時間を過ごし、日が昇る頃に彼女の部屋を出ていった。
☆
後日。帰省イベントが終わり寮へと帰宅したエラはアイザックと連絡を取っていた。
待ち合わせたのは城下街にある小さな喫茶店。エラが行くよりも先にアイザックが席についていた。
「お待たせ、アイザック。悪いわね、呼び出して」
「いや、構わねーよ、別に。それで?どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃないわよ!もう!大変だったんだから!」
「あーそういやハンニバルとの帰省イベントかなんかがあったんだっけか?どうだ?上手くいったか?」
「…その言い方…もしかして、貴方が仕込んだのね!?まさか、イオニコフにも!?」
「おー、わかっちゃったか」
「わ、わかっちゃったか!じゃないわよもう!!!お陰で神経すり減らしまくったんだから!!!」
喫茶店の雑踏に消えるくらいの音量だが顔はしっかり怒っている。
「どうどう。なんか不味かったか?」
「不味かったか?じゃないわよぉ…。まぁ、いいわ。説明するわね」
かくかくじかじか、イドラの帰省イベントで起きた内容を話した。
珈琲を飲みながら話を聞いていたアイザックはほとんど表情が変わらなかった。
一通り話し終えたエラは紅茶をクイッと飲み干す。
「と、まぁ、こんな感じだったのよ」
「なるほどなぁ。まさかそんな事になってたとはなぁ」
色々てんこ盛りだったはずだがアイザックの反応は驚いているもののその声は淡々としている。
彼のそんな様子にエラは不満が募る。
「ちょっと!何よその反応は?こっちがどれだけ神経すり減らしたと思ってるのよ??正体バレそうになった時の絶望感、わかる??」
「んなこと言ってもよ、こっちだってそんな展開になるとは汁ほども思ってなかったし。…いやな、最終イベントを迎える前にハンニバルの協力は必要になると思ったんでちょっと突っついたんだよな。あいつも俺とお前が親しいの知ってっからな、気にはなってたらしいぞ。怪しいはずの女と何故つるんでんのかってな」
「あの堅物が?そんな事気にしてたの?」
「みたいだぞ。ああ、あと英雄もお前が居ないつって俺のとこに来たからハンニバルの実家にいるだろうと言っておいた」
「はぁ…。そのせいで色んな大変なことになったじゃないのよ…」




