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転生先は灰かぶり  作者: 紗吽猫
イベント~夏休み・帰省~
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第十夜 ③ー3

それなのに今目の前で抱き締めてくれている英雄イオニコフ・メルエム=オーデルセンは原作で知らされなかった設定を知っている。そして「魔女かもしれない」と話しながらもこうして抱き締めてくれている。


…ここは、本当に時ノクの世界なの?


けれども起きているイベントはどれもゲームで見たことのあるものばかりだ。


「…では、英雄として“魔女かもしれない”そのエラ・エーデルワイスを殺さない、と言うのだな?」


「…そう言ってるつもりなんだけどな。そもそも、魔女は脅威ゆえに処刑するって言うのがキミらの持論なんだろう?けど、処刑しなくても光の世界を守れて娘の命だって守ることが出来る。そんな最善策があるならそれを選ぶのが筋じゃないかい?」


「それは…」


「大体、魔女が生まれたのだって人間が命を捨てたりするからじゃないか。まだ何もしていないエラを可能性があるというだけの段階で処刑しようだなんて、それこそ命を粗末にしすぎじゃないかい?そんな様を見たら原初の魔女は再び光の世界を闇で喰らおうとするはずだよ。それじゃ、永久に魔女の脅威は消えやしないんじゃないかい?」


…イオニコフが至極真っ当なこと言ってる…。

これにはイドラもぐうの音も出なかったらしい。不貞腐れたように黙ってしまった。だが、この状況、紗夜エラにとっては好都合だった。真・ENDで最も警戒すべきイオニコフが完全に魔女側についてくれたのだ。最悪の結末を回避できるかもしれない。

まだ完全にエラが魔女である、という結論に至ったわけではないが概ねそうだと言っているようなものだ。

彼の腕の中で感じる温もりに初めて安心することが出来た。今のイオニコフからは一切の敵意を感じない。それにイドラからも感じる警戒心が柔いだのを感じた。


目下最大の脅威であったイドラが警戒心を解きつつある。


「もし、エラが今期の魔女なんだとすれば怖がらせることこそ悪手だ。それはキミもわかるね?」


改めて釘を指すようにイオニコフが言う。それに対してイドラはピクリと眉を動かす。


「……ああ。判っている。…今日の昼間、あれは原初の魔女が内側から顔を出した瞬間だったということだ。そしてあの時、周りの国民がエーデルワイスに対して不愉快な言葉を投げていた。あれが、引き金だったんだろう」


ぶっきらぼうだが優しい口調だった。エラはイドラがそんな風に話す日が来るとは思ってなかったので心底驚く。


正直、ここまで変わるとは思っていなかった。イオニコフが「魔女かもしれない」なんて爆弾発言をした瞬間、終わったと思っていた。それがまさかこんな展開になるなんて。

イオニコフの手がエラの頬に触れる。その手に促されるようにして彼の顔を見つめるとフニャッとした笑顔で微笑みかけられドキッとした。思わず目を反らすが、今までと心境が違うからか耳まで赤くなったのを感じる。

…な、なんか笑顔の破壊力が跳ね上がってる気がするんだけど…?!


ドキドキと心臓の音がうるさい。けれどそれは嫌な煩さではない。ドキドキとしてきて恥ずかしくもなってきたのだが、不思議とイオニコフの腕の中から逃れたいとは思わなかった。出来るなら、こうしていたい。


「…つまり、光の世界を守りたければ、そいつを守れ、ということなんだな?」


「正解。…あーでも良かったぁ!」


イオニコフが急にテンションが上がったように抱き締めているエラの頭の上の顎を乗せて寛ぎ始めた。まるででっかい猫に甘えられている気分だ。


「え!?あの…イオニコフ様…?」


「…何が良かったんだ?」


「んー?だってずっと気になってたからさ。エラを取り巻く不穏な魔力のこと。でもキミは何も話してくれないし何かを隠して避けているような気もしていたし…その正体がわかって良かったってことさ」


そう話しながらエラに微笑みかける。満面の笑みを向けられたエラは更に顔を赤くした。そんな初な反応が嬉しくてイオニコフはもっと色んな反応が見たくて堪らなくなってくる。が、


「…おい。いちゃつくのは他所でやってくれ。…それにもう夜も更けた。今日はもう寝るぞ」


と、イドラが突っ込みを入れた。ハッとしたエラは慌ててイオニコフから離れた。


「いっ…イチャついて…!?違いますわ!!そんなんじゃありませんわ!!!からかうのはやめてください!」


どう見ても動揺した様子で頬も赤く染まったままだ。その必死な様子にイドラは思わず噴き出した。


「ふっふふ…」


…わ、笑った!?あのイドラが!!??


原作でもエラに対して笑顔なんて見せたことのないイドラが、リチアとのシーンですらそれほど笑顔なんて見せたことないあのイドラが笑っている。明日槍でも降ってくるんじゃないかとさえ思う衝撃的な出来事だ。


「へぇーキミも笑えるんじゃないか、イドラ」


「ふん」


「キミは、本当に素直じゃないねぇ」


この奇跡のような夜、満天の星空下でエラは目を丸くしてそんなやりとりを眺めていた。


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