第十夜 ②ー9
こうなってしまってはお手上げだ。これはもうどうにも出来ないし軌道修正出来る気もしない。今、アイザックに電話したいくらいだ。助けてほしい。
「英雄ともあろう人間が何を言っている?魔女は狩るべき存在だ。でなければ大変なことになる。そうだろう?」
イドラは剣を構え、じりじりとにじり寄ってくる。そんなイドラを牽制するようにイオニコフが彼の前に落雷を落とした。
「…ッ!!!」
ズガーンと落ちてきた雷をイドラは回避した。こんな砂漠の街の中でも雷を落とせるのはイオニコフくらいだろう。
「だから、キミは気が早いって言ってるだろ。大体、何なんだい?その魔女は狩るべき存在だっていうのは。キミ達は魔女をなんだと思っているのさ」
イオニコフのこの台詞に驚き首を傾げたのはイドラだけではなくエラもだ。
…何を言っているの?貴方だって灰かぶりのエラを殺したじゃない。
「あんたこそ何を言ってる。魔女は俺達の敵だ。魔王に寝返ったろくでなしだ」
そう話すイドラにイオニコフは大きな溜め息を返した。
「…はぁ…。今の子達は皆そんな事を言ってるのかい?一体、どんな教育受けているんだか…」
「え、えっと、どういう事ですの?魔女は…危険な存在、なんじゃないんですの?」
イオニコフの様子に興味が湧いた。ゲームのイオニコフは容赦なく魔女であるエラを殺したがこの今目に前にいるイオニコフはそうではないらしい。
「そうだなぁ…。キミ達は“原初の魔女”については知っているかい?」
“原初の魔女”それは初めて聞いた言葉だった。原作にも出てこないもの。
…そう言えば前にアイザックが「エラの設定に伏線を感じる」とかなんとか言ってた気がする。もしかして…これがその伏線!?
「原初の魔女?確かいくつもに街を襲い滅ぼした最初の魔女だったはずだが?」
「あー…なるほどねぇ。そこだけしか知らないのか」
「え?え?ち、違うんですの?」
イオニコフは右腕の中に抱き止めたままのエラがこちらを見上げながら好奇心旺盛なキラキラな目をしているのを見て思わず笑みがこぼれていた。
…ふふ…。やっぱりエラは可愛いなぁ。
当のエラは急に視線が合ってしかも微笑みかけてくるイオニコフに動揺してちょっと頬が赤く染まっていた。ちょっとしたプチパニック。
「どうやらボクが眠っている間に随分話が変わってしまったようだね」
「どういう意味だ?魔女は狩るべき存在でない、とでも言う気か?」
「うん。そのまさかだよ」
「!?」
その言葉にイドラもエラも目を見開いて驚いた。信じられない、という目だ。イオニコフは抱き締めていた腕の力を抜く。身を預けるようにして彼にもたれていたエラは隣に自分の足で立ち直す。
「それじゃ、本当の“原初の魔女”についてから話そうか」
原作ゲームでも語られなかった魔女について、満天の星空の下で英雄イオニコフが語り始めた。




