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転生先は灰かぶり  作者: 紗吽猫
イベント~夏休み・帰省~
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第十夜 ②ー5



その日の夜、イベントが起きた。本来三日目の夜に起きるはずだったイベント。


夕食を終えて客室に戻ったところでイドラに呼び出されたのだ。

呼び出され連れていかれた先は三日目の夜に起こるイベントの舞台。王宮内には庭園があり噴水も設置されている場所。ここが砂の王国だとは思えないくらいだ。

原作のイベントではこの庭園で星を眺めながら話す流れになる。本来この時点で好感度がそこそこ高いので日中の国民の反応やベルムードやイムラが「婚約者に!」と騒ぐシーンからイドラは改めて主人公リチアを意識し始める。実際ゲームのリチアは思慮深く優しい性格の非の打ち所がない女性だ。まさに聖女に相応しく、第二王子という立場から身内には兄である第一王子と比べられることが多かったために今のような気難しい性格になったというエピソードがあるイドラの傷付いた心を癒していく。

そんな彼女とだからイドラは彼女に惹かれていくのであってエラみたいに敵視される相手に惹かれていくことはない。なのに…。


…何故…今日、ここに?まだ二日目だし私じゃ起きるはずのないイベントなんじゃ…。


首を傾げながらエラはイドラについてきてここにやって来た。今のところ殺されるような兆候はない。


「えっと、ハンニバル様?何かご用がおありでしたか?」


原作のイベントと同じ満天の星空の下。男女が二人だけ庭園に立っている。心地よい夜風が吹き抜けていく。


「……単刀直入に聞く」


ザァ…と風が吹き二人の髪を舞い上がらせる。


「お前は…。お前は、何者だ?」


その質問にエラの心臓はドクンと跳ね上がる。


やって来てしまったこの瞬間。エラは服の裾を握って口をパクパクとさせた。

春に出会った時に聞いた台詞だ。その台詞と共に彼はエラを敵視してきた。それなのに今回、急に実家に連れてくるなんておかしいと思っていた。

つまりはこれが目的だったわけだ。と言うことは。

…これが最終警告ってことかしらね。


エラは対面して立つイドラを見つめる。

ここでの返答次第で私の未来が変わるってこと。ただ、じっと返答を待つイドラは何を考えているんだろうか。


エラが覚悟を決めて口を開こうとした瞬間、


「それ、ボクも聞きたいなぁ」


という声が聞こえた。


空から降ってくる声。


二人はハッとしたように空を見上げる。

そこは満天の星空をバックに満月に照らされたドラゴンに跨がる青年の姿があった。月明かりに照らされた青年がふわりとエラの前に舞い降りてくる。妖艶な笑みで微笑んでくるのは英雄と謳われた絶世の美男子。


「い、イオニコフ様!?何故ここに!?」


イオニコフがイドラの帰省イベントに乱入してくるなんて聞いたことがない。だが、彼の顔を見た瞬間、エラは確かに安心していた。彼は相変わらず笑顔を見せてくれているから。

イドラにこの国に連れてこられてから何度元の世界に帰りたいと思ったか。居心地が悪くて殺されるかもしれなくて、何の目的で連れてきたのかも判らなくてエラの精神は削られっぱなしだった。だからかイオニコフが来てくれたことが嬉しくてその足は彼に向かって歩き出していた。



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